Festina Lente2

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話の種の甲羅干し

人に話をする。仕事で話をする。大勢の前で話をする。
それほど自分の意見を言える訳でも無いので、小道具を使う。
小道具といっても手品のように箱を抱えているわけではない。
ちょっとした話のネタ、振りに使えるもののこと。
今週は、岸田秀の「まだ若いはもう若くない」をネタに、
「これからどうしようか」ということを考えてもらう。
だって、年齢的に若いといっても年寄りだといっても、
物理的な時間はみんな平等、砂時計は無比冷徹。
今日より若い明日は無い。


仕事で話をする。どんな話でもいいんだけれど、
その時、その場、その時のテーマ、ちょっとした事件に絡めて。
殆どの場合、嫁姑・恋愛・親子もしくは、友達関係だと外れない。
背景に、劣等感・優越感、不全感・疎外感、自己嫌悪など
散りばめれば、どんなものにもトランスフォーマー
話題だって、自由自在に変化する。
聞き手の気分によって、語り手の気分によって、
その相乗効果で。


「過去と他人は変えられない」話題に関して、
ナイフをどこから入れてみるか、ケーキじゃないが、
崩れないようにしないと、おいしそうには見えない。
話題の山は、素材は良くても調理法を間違えれば、
とんでもないほど金と暇を掛けた、役立たずになってしまう。

365日のベッドタイム・ストーリー

365日のベッドタイム・ストーリー

心はなぜ苦しむのか (朝日文庫)

心はなぜ苦しむのか (朝日文庫)


漢字・言葉・語句・意味・文章・眠気・行間・記号、
あらすじ、概略、意図、テーマ、問題提起。
これまでにどれほどの文章を読み、書き、調べ、まとめ、
声に出し、話してきたことだろう。
けれど、自分の中の現実と折り合いをつけることなく、
または折り合いをつけるに至ることなく、
未消化のまま、押し流していったものは、
心にも体にも確かな栄養になったとは言い難く。


・・・一つの傾向があるの。私は話す。短い文章を横にして。
まだ若いはもう若くない。過去にしがみついていること。
現実から遊離しているもの、その一例としての年齢。
若さが過大評価される現代の落とし穴。
今、流行のアンチエイジングの虚構。
心の老化ということ。


みんな、私よりも若いから未来が一杯広がっていると思っている。
その逆で、年齢が若いにもかかわらず、口癖のように
「もう駄目」「終わっている」「どうせ私なんか」
そして極めつけの一言、「もし、・・・だったら。」
でもね、何回何千回何万回、過ぎていった過去の話をしても、
全身全霊エネルギーを傾けて、「その時のそのこと」や
「あの時のあのこと」の話をしても、元に戻ることは無い。
タイムマシンに乗ることはできない。


・・・一つの傾向があるの。私は話す。
自分自身に言って聞かせるように。
それよりも、今どうしたいかが問題なの。
これからどうしたいか、どこに行きたいか、何を食べたいか、
何を知りたいか、誰と過ごしたいか、自分をどうしたいか、
今日より若い明日は無いから、今これからどうしたいかが問題なの。
でないと、何もできないまま、本当に年を取っていくから。


・・・一つの傾向があるの。私は話す。怖がらせる気はないけれど。
心に傷を抱える人は、病む人は、過去を忘れることができない。
思い出にするのはいいけれど、思い出だけで生きていくことは難しい。
毎日を素敵な、素晴らしい、少なくとも、良かったと思えるように、
新しい思い出を重ねることができなければ、過去に捕まったまま、
干からびていく。心が老化して、ミイラになる。
自分だけがまだまだ若いという幻想にとらわれたり、
これから何か新しいことが違う自分が待っているかもしれないと、
残りの時間のことも考えずに、実質の無い未来に自分を賭けたりする。
現実を直視せずにね。


一般論だけれど、そういうふうに言われているの。
心当たりがあるかしら、それとも似たような経験があるかしら?
過去の失敗や思い出に浸りすぎて抜けられないまま、
気が付いたら自分の周りには誰もいない。
みんな、自分自身のそれぞれの人生の時間軸を、
人生の数直線をそれなりに描いているというのに、
何も描けないままぐるぐる回っている。
砂時計はどんどん砂を落としているというのに。
自由な時間は空っぽになっていくというのに、
気付かないままで。

子どものころ読んだおとぎ話37選

子どものころ読んだおとぎ話37選

そんなふうに「若さ」を捉えることが余り無かった人に、
若さを浪費している人に、若さが何か知らない人に、
いくらたとえ話をしても無駄かもしれないけれど、
でも、今の世の中は赤頭巾ちゃんを見ても
「気をつけて」とは言ってくれはしない。
みんな狼みたいなものだから。
赤頭巾ちゃんも寄り道をしても、悪いなんて思っていない。
何をしても許されると思い込んでいる、子供のまま。


眠り姫は誰かが迎えに来ると思っているし、
茨は時間が来れば、道を明けてくれると信じている。
眠っていれば時間は止まっているかのように、
自分に都合の良いタイムカプセルを信じている。
でも、今の時代はあっという間に時間が経つの。

昔話の深層 ユング心理学とグリム童話 (講談社+α文庫)

昔話の深層 ユング心理学とグリム童話 (講談社+α文庫)

さあ、自分から起きて窓を開けて空気を入れ替えして。
成熟という時間を大事にするのなら、
機を逸するという言葉をも覚えて。
だって、今の時代の人はねぼすけさん。
寝すぎて頭痛がするという人が多いの。
寝ないで遊んでいる人も多いの。だから、
「まだ若い」なんて大丈夫だからとタカを括らず、
自分のお城は自分で建ててね。
人が作ってくれたものに頼るのではなく、
篭城する時も自分の覚悟で、人頼みに引き篭もらずに。


食べるものも着るものも、自分の力で手に入れる。
誰かがいつでも用意してくれるなんて、
そんな御伽噺の中に住まないように。
物語のお姫様たちはいつも若くて綺麗だけれど、
私たちは毎日年を取っている。
物語のお姫様たちは、死んだりしないけれど、
私たちは今日にでも死ぬかもしれない。


そんなことを考えている。休日出勤の今日。
何を話そうと考えながら、話の種を探している。
どんな芽が出るかわからないから。

おとぎ話のなかの救済―深層心理学的観点から

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おとぎ話と魔女―隠された意味

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アリーテ姫の冒険

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