Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ハープ・コンサート

先週の土曜日はクリスマスなので万博公園イルミナイトの記事を中心に載せた。
しかし、この日の外出の目的はハープのコンサート。
滅多にハープ単独のコンサートなどは聴けないので、
早くから親子3人分で申し込んでいたのだが、娘には娘の予定。
家人と2人で大阪音楽大学の音楽博物館へ出向くことに。
本日のコンサートはこれ。


  

というわけで、2011年12月17日のミュージアム・コンサートの話題を。
「ハープ この麗しき楽器たち」と題して、お話と演奏は摩寿意英子氏。
全てご自分の楽器、それも希少価値のある素晴らしい楽器を、
惜しげもなく披露、演奏、そしてみんなに触らせて下さった。


    
   


本日の一番の目玉。やや小振りのシングルアクションハープ。
それは、かのヴェルサイユ宮殿のサロンで王侯貴族が奏でたであろう逸品。
パリ 1760年オリジナル ナデルマン製の豪華なハープ。
貴婦人でも持ち運びの出来る軽さが特徴とか。
その音色は金属的な、まるでハープシコードを聞いているような、
まさしく室内楽にふさわしい語るような調べ。
間近で見ると、シノワズリの装飾、ロココ調の流行が見て取れる。


    
  
  


1曲目はメイエールのソナタ。ファンタジー・ラルゲットと変奏曲。
ピアノを習った人間にとって、主題とその変奏を味わうのは楽しいものだ。
ソナタ形式は初期に叩き込まれるクラシックの基礎であり、
はノンやツェルニーといった指の練習中心の曲よりもソナチネソナタを練習する、
その時間は音が広がるような心持ちになり、ハープで聞くのも同様、
展開される主題は心の機微を反映するような気さえして・・・。

  
    
  
 


2曲目、クルムホルツのアリアと変奏曲は哀しい陰鬱な響きだった。
何でも20歳以上年の離れた奥方のために作曲し続けたのに、
別の音楽家と恋仲になった彼女に逃げられ、悲痛の余り自殺したのだとか。
スキャンダラスな背景とは裏腹に、重々しく響く音色は漆で塗られた黒いハープに
ぴったりなような気さえしてきた。
そして、3曲目、その奥方が走った相手の妻。ソフィア・ドゥセクのソナタ
何とも因縁のある曲の組み合わせで供された、クラシックハープの曲だった。


    
  


次に披露されたのは、フランスの華やかな宮廷から一足飛び。
アジアの東の端、シルクロードの終焉の地に伝えられた
奈良時代の品々を収める正倉院に残る箜篌(角型ハープ)を復元したもの。
まず、その斬新なデザインにびっくり。
曲はいにしえの雅楽はかくもと思わせる番假崇(ばんかそう)、
天平琵琶譜(8世紀ごろ)によるものだという。
なかなか難しい曲で、戸惑いながらも、
よくまあこうもいろんなハープを弾きこなせるものだとびっくり。


  


そして、アジアのハープとして紹介されたのは、小説と映画で知られた
ビルマの竪琴』である竪琴。これは博物館の展示品のサウン・ガウ。
見せて頂くだけ。若い人はこのストーリーを知らないだろうな。
ビルマという国名さえも、馴染みのないものになってしまっているのだろうから。

クルムフォルツ:ハープの為の6 つのソナタ 

クルムフォルツ:ハープの為の6 つのソナタ 

  • アーティスト: 摩寿意英子
  • 出版社/メーカー: ワオンレコ?ド             
  • 発売日: 2005/04/15
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月の光に魅せられて~名曲集~

月の光に魅せられて~名曲集~


次なる演奏はアイリッシュ・ハープによるもの。
19世紀初頭の小ぶりの黒いハープは博物館所蔵のもの。
アイルランド民謡の「夏の最後のバラ」は、聞き覚えがある。
このぐらいの大きさのハープならば、普通の家でも置けそう。
家なき子』が手にして旅をしていたのはこの手のハープだったような。


      


しかし、最後のダブルアクションハープ。これは大きい。
ある意味、コンサート会場で見慣れたグランド・ハープ。
サロンではなく広い会場で大勢の聴衆の前で演奏されるための、
豪華で大きな音が出るハープ。その黄金の柱とも見まごう支柱、存在感。
20世紀初頭アメリカ製のハープによる演奏は、3曲。
サルツェードの「夜の歌」、改めてハープの響きを実感。
アッセルマンの「泉」。いかにもハープという楽器の特徴を生かしたもの。
ピエルネの「即興的奇想曲」。そしてアンコール曲…。
メロディは知っているのに、曲名が出てこない・・・。


    
   


小さなハープとは奏法も異なり、様々な奏法が生み出され演奏されたことを、
今回生まれて初めてハープの演奏を目の当たりにして初めて知った。
ヴァイオリンのようにピチカートに当たるもの、
弦を流れるような音で演奏するイメージが強かったのに、
弦以外の部分を叩いたりする演奏は、民族舞踊を思わせる迫力。


    
   


ちなみに、1日に様々なハープを演奏する奏者はいない。
というよりも、弾き方が異なるので勘が狂うからできないそうだ。
というわけで、4種類ものハープの演奏を一度に鑑賞することができ、
1週間後にクリスマスを控え、まことに贅沢な時間を過ごした午後。
 
   
    


名残惜しく、音楽博物館の他のハープも鑑賞。
優雅な時間に別れを告げた。

  


華麗なるハープ名演集

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ロマンティック・ハープ

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