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金星の日面通過

あと100年以上見られないという金星の日面通過
(こういう天文学上の単語、初めて知った)
是が非でも見ておかなければ、金環日食よりも珍しい。
ということで、前回の金環日食時に用意していた
チャチな眼鏡を通して太陽を見たものの、全く駄目。
さっぱりもわからなくてがっくり。
TVのニュースを見てから出勤した。


    

  


何でもこういう天文上の一大イベントの時、
地球上の見られる場所まで出かけていって観測、
というのはこの業界では当たり前のことらしく、
金星の日面通過の対は1874年12月と1882年12月のものであったらしい。
その当時の写真などが紹介されていたが、詳しく頭に入れる暇もなく。



ところが金環日食よりも地味であるとされるこの天文現象、
さすがに職場にはマニアがいて、屋上に望遠鏡を出していた。
うーむ、本格的。どこからこんな装置を?
家にあるのとは異なるもっと性能のいい眼鏡を貸してもらうと、
見える見える、小さな黒子のようなものがかすかに。
巨大な太陽の上を子虫が這っているような、金星の影が。


    


望遠鏡の下に反転して映し出された画像は、
太陽の黒点も一緒に映っている紛れもない金星の日面通過
仕事の手の空いた昼休みのこととて、太陽のど真ん中を通っている
金星の姿を見ることは叶わなかったが、それでもああ、
こんな風に星が移動しているんだなあと黒い点を見て、
少しばかり感動。(日食の時ほど大きな感動は無かったけれど)


  


そう、自然はこんな風に動いているけれど、人間は気づかない。
大昔から星は太陽の周りを巡ってきたけれど、たいていの人間は気づかない。
太古の昔、星と月と太陽を観測して、カレンダーを作り、
農業矢漁業に必要な知識を得るために、
季節の推移・潮の満ち引きとの関連を学問として確立させてきた。
それを観測して体系付けて考えた先人の観察力に敬服。


望遠鏡も無かった時代、いくら空気が澄んでいたからといって、
吸い込まれそうな虚無の宇宙の星の煌きから、規則的な動きや、
物語と絡めた星座の数々を創り出した、その想像力の逞しさに、
現実と非現実を共に紡いでいった心のしなやかさに感動。


    


仕事では辛いことの多い、
嫌な出来事の噴出したこの2・3日だったけれど、
帽子をかぶるのも忘れ、ビルの屋上で太陽を仰ぎ見た昼休み、
この大きな星と小さな星の見せてくれた一瞬を思えば、
気を取り直して、今日も一日、明日も一日、地道に毎日、
一歩一歩、ちっぽけな平凡な人間としては、
それがまじめな精一杯だと思えた、そんな今日。


  


金星が離脱して、真っ白になった画面。
太陽だけが君臨している、観測画面。
さよなら、金星。
後は夜空で会える時だけ、ね。

金星を追いかけて

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惑星気象学入門――金星に吹く風の謎 (岩波科学ライブラリー)

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