ガード下で焼き肉
半年前の家人の転勤で、
それまで週に1度会えるかどうかという家族の生活リズムは、
盆暮れ正月レベルにまで落ちている。
まあ、お金に糸目を付けずにという贅沢が出来れば、
そんなことを考えずに済むのだろうが、
単なるサラリーマン世帯としては、無理な話。
渋谷駅がもうすぐ変わってしまうので、眺めに行く駅。
てっちゃんのとーちゃんの思い入れには届かないけれど、
中華街の文字盤を見て、ちょっと可笑しくなってしまう。
私の転勤(異動)は内々定したものの、関西から動くことはない。
休日消化と転勤のプレッシャー解消を兼ねてやって来た関東、
家人と過ごす最後の夜は、某国鉄駅のガード下で焼き肉、
それも、店の外のカウンターだと割引価格、
膝掛けをしながら、七輪の上で肉を焼く。
ホッピーと電気ブラン、チェイサー、
二人でしみじみとつつくつまみの数々。
いつの間にか満員だった店内は、貸し切りになって、
結婚式の帰りの2次会なのか、それにしては年齢層が高い、
おじさんお兄さんの集団がテーブルを囲んでいる。
時折聞こえる電車の音、店を出る頃には近所の古本屋も店じまい、
ほろ酔いで歩く夜の街。
梅の香り、ほの暗い部屋で見た幽艶な雛人形、
炭火の赤さ、もうもうの煙。
寒風の中。二人で肩寄せ合い、ちょっと不道徳なれど、
娘も連れてきたいね、一緒に食べたいねと思う夜。
それがとーちゃんとかーちゃんの雛祭りの夜だった、
一昨日の余韻がまだ残る、3月5日。
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