初めての夜行バスで

娘が出発して行った。生まれて初めての夜行バス、
スキーキャンプに立山へ。小学生初級中級コースだから安心。
でも、初スキーが夜行バスでなんてちょっと心配、
自分自身もそうだったけれど、当時大学生だったし。
小学校2年生、娘のキャンプ歴３回、大丈夫と思っても…。
やはり、どうしても心配になってしまう。
でも、ここは、明るく送り出さなくてはと思っていたのに。

それは夕べのこと。とーちゃんと共に入浴した娘は、
いつに無くしょんぼりと風呂から上がってきた。
何があったのかしら？　いつも元気に飛び出してくるのに。
「お母さん、夜行バス心配になってきた。」
「何で？　みんなと一緒に一眠りしている間に向こうに着くよ。」
「だって、お父さんがあんなにしんどい旅行は無い。
　スキーはただでさえ疲れるのに、夜行で行くなんて危ないって。
　私、本当に1人で参加しても大丈夫かな、不安だよ。」

普通、子どもが不安がっている時には、
大丈夫だよと「プラスのイメージ」を植えつけるように
振舞うのが親じゃないの？
「こうすれば大丈夫だよ」「こうしたら平気だよ」と
改善策や物の見方を変える方法を提示するのが親じゃないの？
余計な不安を、旅立つ前夜から煽ってどうする？

家人はスキー場で骨折、入院、手術の経験を持つ。
足のボルトが抜けないうちに、転勤命令で飛ばされ、
苦い経験を持つだけに、スキーには良い思い出が少ないのかも。
でも、おどかすなよ、いたいけな娘を。
橇滑りも入れれば、厳密には3回目のスキー場だけれど、
スキー板を履くのは初めてなのに。

…ええ、ええ、こういう時ですとも。
妻が夫に対して、母親として父親である家人に失望するのは。
ぐっさり刺してやりたくなります…。
意識して親離れ子離れの機会を、長期休暇に設けて
苦心惨憺している人の気も知らず。
よりによって私も娘も、
出発前日一番ナーバスになっている時に。

実は午前中、新年早々病院に行きたかった。
抗生物質さえ手に入れば、悪化しなくても済む。
わかっていても、素人判断と診察無しではどうしようもない。
なのに、家族は起きない。朝食を作り、食べさせ、
冬休み気分の抜けない面々に言い聞かせ、
希望した病院は駅の反対側だと押し切られ、
市民病院に送られて来てみれば、・・・年明けの超混雑。

1日からの痛みを我慢して来たが、これは・・・。
初診手続きをして受付を通って、内科窓口まで来て、
内科診察予約時間を取得するまで1時間弱、
トイレに行って戻ってきたら、家人が診察予約が取れたよと。
用紙を見ると、16：30診察予定とある。5時間待ち。

憩室炎だろうな、この感じこの痛み。絶食だ。
新年早々、ダイエットしろということだよ。
されど、家人の実家に里帰り、真綿にくるんだ
針の筵で食事。冷え冷えとした暖房の無い家。
こたえました・・・。もっとも、義弟のお嫁さんも、
「寒くて寒くて」とこぼして物凄い完全武装だったので
勇気付けられたのですが、風邪も貰って来たようで。

帰宅したら翌日からどっと疲れて、絶食。
さすがに完全に実行は不可能でも、2日間水分と
流動食だと心なしか、痛みもまし。
37度を越えないので、（普段35度台の人）良しとした。
何しろ、娘をスキーに送らなければならない。
集合は19時過ぎ。夜行バスは夜20時出発。
18時には食事・身支度も済ませて出なければ。

診察予約時刻から逆算して、血液検査をして、仮に点滴、
それが無くても院外処方箋貰って調剤薬局で投薬、
会計を済ませてそんなに早く帰宅できるか？
荷造りはとっくに終わっているけれど、
早めの夕食や身支度、それより、
出発を控えてやや落ち込んでいる娘を
どうにか盛り上げてやらなくては。
病院側、年明け忙しいお医者様には申し訳ないけれど、
5時間待ちの診察はキャンセルさせて頂いた。

火事場の馬鹿力じゃないけれど、痛いけれどまだ動ける。
（入院時はこれを続けたから、倒れたんだが）
匂いがわからないけれど、晩御飯は美味しくできた。
娘の大好物トマト風味のポトフに、鶏肉の炒め煮。
玉葱と林檎のソテーにバジル風味の副菜。
美味しいもの食べさせて、楽しい話題で送り出す。

幸い家人が車で送ってくれることに。
痛いお腹で荷物は持てない。助かった。
娘は夏のキャンプで顔見知りになった年上の子がいて、
おしゃべりし始める。良かった良かった。
あ、かーちゃんの言いつけどおり、バスの中では
お口を開けて寝ると喉が痛くなるからマスクしてねの
約束を守っている。（矯正器具もはめているしね）
良かった良かった、元気に行ってらっしゃい。

行っちゃった。涙が出た。7日20時まで会えない。
家人宅に戻る。二人きりになったら、映画や食事を
夢見ていたのに、絶食中で飲みにも行けない。
何だか切ない、ちょいと腹が立っていたけれど、
申し訳ない気分。せっかく2人っきりになったのにね。
ああ、寂しい。切ない。
今頃ぐっすり眠っているかしら。トイレ休憩大丈夫かな。
子離れできていないのは、親の方。

お腹の痛みなんか気にならないほど、動けるならば、
受診を焦らなくても大丈夫。そう、そのはず。
土曜休診の市民病院より、明日から開き始める
近所の個人病院で、「大丈夫」の安心を貰おう。
私の仕事始めは7日。
娘のスキーのため、今日は予め休みを取ったから。
ああ、私もスキーに連れてって。
今頃、きっと娘は夢の中。大丈夫、大丈夫。
一緒に行けなくても、大丈夫、大丈夫。