Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

四国物産展

徳島を離れて6年になる。仕事で鳴門に2年いる間に家人と出会い、
行ったり来たりの生活をしながら、この地に足掛け6年過ごした。
過ごした時間と同じだけ距離が開いてしまった。
大阪から徳島は近い。しかし、実際は近いようで遠い。
車ですぐ行けるじゃないか、鳴門大橋・明石大橋ですぐだと思うでしょ?
すぐに行けなかった頃の思い出の方が強く私達の心を占める。
今は無くなってしまった高速船、便数が減ってしまったフェリー。
スピードとは相反する交通機関しかなかった頃、
娘が生まれる前も生まれてからも、行ったり来たりの生活は続いた。


四国徳島は私達の出会いの場所だ。学び、仕事に打ち込み、
子育てをスタートし、近所付き合いをし、家族ができた場所。
阿南。子育て支援保健婦さん、保育士さん、
同じ年頃の子供を持つママ友達。色んな人々の顔を思い出す。
遊んだ海岸・公園・保育園・幼稚園、その遊具の一つ一つ、
散歩した道、咲いていた花、田んぼの上に影を映しながら過ぎ行く雲、
買い物をした店、並んでいた商品、道の駅、図書館。


思い出は一度蘇ってくるとそれこそ芋づる式にどんどん広がる。
そもそも家人が、四国物産展の話題を持ってきた時に、
本日金曜夜の研修にかこつけ、梅田まで出て来てしまった。
是非に買わねばならぬというものがある訳ではない。
けれども、物産展で味見をしながら何だかんだと買い込んでしまう、
それを無駄遣いというか、気分転換と取るか、さあお慰み。


徳島から埼玉に引っ越した後は、大阪埼玉の行ったりきたりで過ごしたが、
埼玉を含む関東には、東北の物産が当たり前のように流通していたように、
関西では四国四県のものが毎日市場に出回っている。
特に青物、野菜に関しては徳島からのものは多い。
この時期であれば、高い京都の筍よりも徳島新野(あらたの)の筍。
人参、薩摩芋、蓮根、椎茸、すだち、どれもこれも徳島から。

タイムスリップ・マップ四国四都―高知 松山 高松 徳島

タイムスリップ・マップ四国四都―高知 松山 高松 徳島


インターネットで特産品をお取り寄せできる時代でも、
味見をしながら四方山話ならぬなあなあのやり取りをしつつ、
買おうか買うまいか品定めをするのが楽しい。
特に、想い出を掻き立てるような味、品物を見るとどうしても。
たとえば、このお菓子は良く食べたなあ、新しいお菓子を出品?
あ、坊ちゃん団子だ。2歳の娘と松山に行った夏、
坊ちゃん列車に道後温泉、楽しかったなあ・・・。


小豆島のうどん、細うどん。製麺所の見学を思い出す。
橙の入ったオリーブドレッシングで食べると、
上品な酸味がとても美味しい。生醤油やや出汁とは異なる
新鮮な風味が何とも言えない。絶品! これはお買い上げ。
小豆島の岩海苔丸大豆、きくらげもお買い上げ。
結婚1年目、小豆島ふるさと村に泊まった時を思い出す。
寒霞渓(かんかけい)の紅葉を見に行ったっけ。


少々無愛想な売り子さんだけれど、かつて住んでいた鳴門の若布、
海草サラダを売っている。懐かしいなあ、鳴門、渡船。
あの頃はまだ灰干し若布が可能だったけれど、今では塩蔵のみ。
どうしているかなあ、どうなっているかなあ・・・。
海岸に並べて干した若布の景色、春の風物詩、渦潮、観潮船。
閉館した南海鳴門ホテルのプールで泳いだこともあった。
ヤマモモの木がゲートまでずっと植わっていて。


家人はカレー風味のハムかつ(徳島・小松島)を買い、
私は香川の醤油豆やひじきを味見する。
時間の関係で高知の物産まで味見・買い物できずに残念。
夕食代わりに香川のぶっ掛けうどんを急いで食べて研修へ。
噛み切れないほどシコシコ歯ごたえのあるうどん。
香川をうどんツアーした頃が懐かしい。
レオマワールドに1歳になるかならないかの娘を連れて、
親の自己満足の遊園地へのドライブ旅行。


想い出は尽きない。想い出は時間を忘れさせてくれる。
想い出を共有する人間と、二人で過ぎ去った10年余りを思う。
センチメンタルだと笑うなかれ。
共棲みをしないで過ごしてきた夫婦には、
旅行した場所、食べたもの、見た映画、出来事の欠片が重要なのだ。
共通の拠り所が必要なのだ。


四国は海外を気晴らしに遊んで旅した独身時代、
ある意味都会から隔離された観のあった、学びの場所だった。
徳島は新鮮で、車で動けば山も川も海もあった。
ニュータウンの四角い建物や、地元の祭りのない乾いた町と違い、
高齢化と若者の減少を嘆きながらも、細々と伝えられてきたもの、
賑やかに行われる阿波踊り鄙びた土地の祭り。
食べ物に不自由しない太っ腹な田舎のよさが、
大阪の田舎の都会から来た私には新鮮だった。


そのエネルギーに満ちた新鮮さを、物産展で思い出す。
買い物がてら、想い出をかきたてながら懐かしさに浸りながら、
その先の道を歩いてきてしまった私、私たち。
戻りたいねえと話しながらも、今よりも10年分若い日々は帰らない。
それがわかっているから、ほんの少し郷愁に浸るように物産展。
人ごみの中にそを聞きに行く、その訛りの懐かしさを。
味を、想い出に繋がるものを、店を。


四国霊場を巡り歩くほど高尚ではないが、
デパート内に設えられた特産物、工芸品等の小さな店舗を
立ち止まりつつあちこち巡回する私たち。
確たる目的があるわけでなく、さ迷い歩く1時間足らず。
週末、一仕事を終えた後も、明日の休日出勤が続く夕方。
これからまだ、もう一つ夜の研修を控えて、疲れは肩に重い。
そんな時、想い出の味は甘い。甘くほろ苦い。

中国・四国「道の駅」オールガイド

中国・四国「道の駅」オールガイド

四国八十八ヶ所はじめての遍路

四国八十八ヶ所はじめての遍路

四国はどこまで入れ換え可能か (新潮文庫)

四国はどこまで入れ換え可能か (新潮文庫)