Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

before after, after after

朝寝をした今朝は、雨音で目が覚めた。
どうやら皐月つごもりの今日は、田植えにふさわしい雨模様。
田に水を引くにはもってこいの日。そんなしめやかな一日らしい。
雨は柔らかい曇り空の下、早咲きの紫陽花を生き生きとさせる。
駐車場の隅であいまいな色を付けていた一群れの花が、
急に生き生きと存在を主張するような、雨の日。そんな今日。


昨日の疲れが取れず、気分良いすっきりとした目覚めというわけではない。
されど、気持ちの上ではキッザニアの次に訪問した友人宅の記憶で、
頭の中はふんわりくるくる回っている感じ。
3月末に生まれたベビー、生後2ヶ月の女の子。
久しぶりにこの手に抱く小さな命、この子は10年前の娘の姿。
そして、この余りにも軽い幼い生き物が10年経つと・・・。
流行のTV番組ではないが、本当にベビーと娘を見比べて、
before afterを目の当たりにしている感じ。
その余韻が、子どもばかりの町、キッザニアでの疲労とあいまって、
軽い眩暈を感じさせているようだ。


卯の花の匂う垣根に時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて
 忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ

 さみだれの、そそぐ山田に 早乙女(さおとめ)が、
 裳裾(もすそ)ぬらして 玉苗(たまなえ)植うる、夏は来ぬ

 橘(たちばな)の、薫るのきばの 窓近く、蛍飛びかい
 おこたり諌(いさ)むる、夏は来ぬ

 楝(おうち)ちる、川べの宿の 門(かど)遠く、
 水鶏(くいな)声して 夕月すずしき、夏は来ぬ

 五月(さつき)やみ、蛍飛びかい 水鶏(くいな)鳴き、
 卯の花咲きて 早苗(さなえ)植えわたす、夏は来ぬ』


「夏は来ぬ」を習った世代ではないが、今改めてこの歌詞の
雅な世界を覗き見ると、神の斎庭、神聖な水田に水を引き入れて、
正装した早乙女の植える、若き穀霊、稲の苗が一面に広がり、
神と人とが一体になった、お田植え行事の様子が目に浮かんでくる。
そういう世界を間近に見て育ったわけでもないのに、
いつかどこかの、幼い頃の田舎の記憶か何かが呼び覚まされて、
再び季節が巡り来る、生命の循環する神々しさに額づく様な、
そういう気持ちにさせられる。

ベスト・オブ・ベスト/日本の名歌

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鮫島有美子「ディスカヴァー2000」(8) ゆりかごの歌~童謡・唱歌集

鮫島有美子「ディスカヴァー2000」(8) ゆりかごの歌~童謡・唱歌集


生まれて間もない赤ん坊が、子育て1年生、新米ママの日々を思い出させる。
あの、身二つになった後でさえも、子どもと渾然一体化して過ごしたような、
慌しくも静かで実り豊かなゆったりとした時間、
一生に何度そういう経験が出来るのかわからない、満ち足りた時間。
日に日に成長する、毎日毎日顔も表情も変化していく赤子と二人、
ふわふわと漂うような時間が過ぎていった、夢のような時間。
あれから娘は、植えられた苗のように、すっくりまっすぐに伸びて、
10年・・・。長いようで短い10年。9月の末には満10歳。
なんて早いこと、なんて短い10年。


振り返れば、懐かしくいとおしい時間はあっという間に過ぎ去り、
乾いた殺伐とした生活の中で、季節感さえ見失いがち。
本当ならば孫を持ってもおかしくない毎日に、娘の姿がある。
そして、友人の子どもは生まれたばかり。
私は再びその姿から新しいエネルギーを得、追憶の象る思いに浸る。
今までとこれから。これまでとこれから。
before after と after after。そしてその後。


子育てを始めた海辺の町を思い出す。優しい潮風と、初夏の砂浜。
大松宵草の咲く道、民家の庭先から香る花の香り。
波の音。毎日の散歩道。ベビーカーを押して歩く日々。
娘が眠ったそのベビーベッドに眠る姿に、デ・ジャ・ブ。
今日は離乳食用の食器を持って来たよ。娘が着た洋服も。
娘がお古を頂いて、元気に育ったように、
あなたも、着慣れた柔らかい服に包まれて、大きくなって。
急がないで、ゆっくりと大きくなって。


子どもの旬は短い。なのに生活に追われて、いつの間にか忘れてしまう。
お小言と怒声、あたふたと日常生活。押し流されるような毎日。
ゆったりのんびりした時間は、いつの間にかどこへやら。
毎年訪れる植物の成長は日々が死と再生と繰り返すけれど、
人の成長は2度と同じ姿を象ることはあり得ない。
唯一のただ一度だけの出会い。毎日が一期一会の家族の日々。
その余りにも貴重な日々を、何故あっさりと見落としてしまうのか。


柔らかで頼りない赤子の抱き心地に、過ぎ去った時間の
二度と帰らぬ日々への思いが押し寄せてくる。
思わず、抱き取ったまま過去へ戻りたくなるような、
想い出の中に揺らぎ続けることを選んでしまいたくなるような、
そんな衝動に駆られる。幼子の持つ眼差し、くうくう呟く声。
人の子としての命の脆さ、はかなさ、かろいかろい手応え。
なのに、強く強く心に響く。


昨日の喧騒と、その後の友人との再会とベビーとの出会い。
その余韻が抜けきらぬまま、一日が過ぎる。
娘よ、娘よ。君は未来の職業体験をどんな風に感じたのか。
君の記憶に無い、君のものだったベッドで眠る、ベビー。
君のために作ってあげることの出来なかった、きょうだい。
そんなベビーの姿を一瞬でも垣間見た?

とく得BOX 胎教クラシック

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モーツァルト療法 ?音の最先端セラピー ?2.胎児の耳に響くモーツァルト ?聞き耳を立てている胎児の耳へ贈

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皐月つごもり。雨はいつしか止み、薄日が差してきた。
明日からは水無月。はや、今年も半年を過ぎようとしている。


ふるさとの野辺の五月に咲く花の
     白きよりなほなつかしきかな(佐藤春夫
何となく花橘のかをる夜は
     いにしへざまぞ恋しかりける(藤原顕輔


娘の仕事体験を見て昨今の就職事情を憂いつつ将来を思いやる。
まだまだ大人にはって欲しくない。
自分の手の中にいて欲しいと思う親のエゴ、
なれど、時は止まらず休みもせず、
before after, after after。
家族の物語は、まだまだ続いている。
田植えは終わっても、稲を育てる日々。
家族の毎日は、現在進行中。

古今和歌集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

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花橘の乱―在原業平異聞

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