Festina Lente2

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地震ニュースへの反応

殆ど眠れぬまま、ニュースを見つめて夜を明かし、朝を迎えた。
次々に映像で明らかになる被害。
関東でも安全確保の交通機関のストップどころか、
建物の損傷で亡くなられた方が。
関東の親戚や知り合いは大丈夫だと言っていられなくなった。
依然、東北に散らばっている親族との連絡は取れない。
生き死に、怪我、状況。ニュースの内容以上は分からない。


家族それぞれ、この事態をどのように受け止めていいものやら。
職場でも周囲でも関東や東北に知り合い親戚のいるものは少ない。
関西という土地柄それは仕方がない。
自分がどうしていいか分からない呆然となりそうな中、
相手のある事なので、仕事を放り出すわけには行かず、
やることをやって帰宅して金曜日、
連絡を出来るだけあちこちと取る土曜日。


来週17日に法事で宮城に里帰りする予定だった老父は、
亡くなった自分の兄の法事どころか、自分の実家と連絡がつかない。
実家どころか親戚縁者誰とも連絡がつかない。
宮城は以前停電・交通網が遮断されたままだ。
本来なら津波に押し流されるはずも無い地域のはずだが、
どこで何が起こっていても不思議ではない。
昼間どこに誰が出掛けているか、どこで何に遭遇しているか。


老父は現実認識が出来ていないらしく、
法事の日に様子が聞けるかもしれないなどと口走る。
仙台空港が水浸し泥まみれになっている画像が繰り返されるTVの前で、
新幹線が不通であるという表示が繰り返されても、
自分は親戚の元に行けるような気持ちになっている。
現実を受け入れられないのだろうか。
私が焦っても何にもならないが、とにかく話をした。
何度か話して出かけていくことが、出向きたくても、
80の老齢で出向く術が無いことを納得してもらった。


デパートから電話。何? どうやら老父は法事に備えて、
色々送っていたらしいが、搬送できないとのこと。
当然だろう。出来るはずもない。キャンセル了承。
飛行機のチケットの予約の解約、払い戻し。
所沢、板橋との親戚から電話。無事だった。
しかし、相も変わらず老父の親族との連絡は取れない。
地震の被害が明らかになっていくにつれ、感覚が麻痺していくような感じ。


関東にいる弟から電話が掛かってきたというのに、
母はわかっているのやらいないのやら。
まあ、まだらの記憶の中では何もかもが曖昧で、
聞きたくないことや嫌なことは排除されて、
感情の渦だけが積み重なっていくから、
自分の生まれ育った土地の惨状を眺めて、
泣くでもなく「大変ねえ」と言ってみたかと思うと、
いつもと同じ作業や動作を繰り返すばかり。
取り繕いと無感情・無表情、ぼんやりとした日常。
聞きただすと「どうしてお前にそんなことを言われなければならないと」、
プライドを傷つけられたい仮の感情しか露にならない。
「現在の母の日常」が繰り返されるばかり。


青春時代を過ごした思い出は全て過去の中に封印しているのか。
新しい記憶を積み重ねていくことが出来ないように、
新しい出来事、哀しい現状を受け入れることは無理なのか。
そのほうが幸せなのか。
神様が母から正常であるべき反応を早くから奪っておいたのか。
人は死が近づいても怖がらないようにボケるのだと聞いたことがあるが、
自分の母は自分のことも人のことも哀しまずに、
悲しんだことさえも忘れて、残りの毎日を過ごしていくのだろうか。

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用事があって午後から外出する。
大阪での日常は、予定を変更するほどではない。
時間や曜日の決まったキャンセルできないことはこなし、
キャンセル可能なことはキャンセルして動く。
当たり前の日常にほぼ近い取り繕われた感じ。


祖父母の反応と私の反応を見比べながら、三世代の一番下、
最も若い娘が困惑した顔で言う。
今何が起こっているか、それがどれだけ大惨事で大変なことか、
頭の中ではわかっているけれど、ショックでもないし、
ぴんと来ないから、本当はどうしたらいいか分からない。
正直な言葉だと思う。人の死も大事件もまだ分からない年齢。
赤ん坊ではないけれど、物語の世界や映画やテレビの内容以上に、
過酷な現実を直接知らないまま育って来ているのは、君のせいじゃない。


私自身も、自分が優先順位がばらばらになって、
今しなくてもいいはずの連絡をメールしたり、行動を起こしたり。
取るものも取り合えず、という言葉があるけれど、
現実、仕事を休んで出かけることが出来ない、
被災地ではない場所での勤務、その亡羊とした曖昧な安全な場に
自分が存在していることの不思議さ、居心地の悪さ、
これをどうしていいものか・・・。


そして、自分の直接の親戚ではないので、
何も心配せず心配しても無駄というスタンスの家人。
人間の精神というものは、何と自分自身の世界を直接的に守る、
小さなガード中で平安を保てるようになっているのだろう。
老父が一番動揺し、老母は殻の中にとどまり、
娘は周囲の世界と対人関係の距離感がはかれず、
私は上下左右を見回して、何も出来ないでいる。


夜、目を放した隙に深酒した老父の嘆きをよそに、
淡々と同じ動作作業を繰り返している老母。
自分の苛立ちを誰も分かってくれずに荒れる老父。
呼び出され、当たられても困ると困惑する娘。
三世代の真ん中で自分には何ができるんだろうと、
電気もガスもなく、連絡も取れず、
食べ物は? 暖は? 一体誰が何処でどうしている?
そればかりが気がかりなまま、TVを見ているだけしか出来ない。


何時分かる? 連絡が取れる?
何も送れず、何もわからず、関西にいる私たち。

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