最後の一泊
この家に来たのも7月半ばのことだった。
草加からとーちゃんは引っ越してきた。
引っ越し前、下見をしたこの界隈、この近辺。
駅からも近く坂道は堪えたけれど、文教地区。
静かで・・・というのは、残念土日もクラブの練習の騒音、
まあそれはお愛嬌で許せたけれど、南の家に比べれば、
空気もよく、落ち着いた風情だった。
駅前には何でもあった。下町のスーパー、カフェ、クリーニング、
飲み屋に飯屋、整骨院に整形外科。
一つ駅向こうは学生の街、格安の古本屋、写真屋、コンビニ、
インド料理、イタリアン、たこやきや、洒落たケーキ屋、焼きたてのパン屋、
ここは本当に便利な場所だった。
各駅停車の駅、足が悪くて疲れのたまった日はタクシーに甘えた。
顔馴染みの店、医者、気心の知れた場所、お参りする神社、
ビール工場につまみを買い物に行き、万博公園で花火をした。
ロシア正教会の礼拝の鐘が響き、超高層ビルの中華バイキングも楽しんだ。
家人の体調が回復して、長時間ドライブも楽しい日々。
娘が小学校に入った1学期の終わり、ここは家族の憩いの場、
とーちゃんの侘しい単身赴任の社宅は、家族の寄合場。
休日の別荘、土日のだらけて朝寝坊できる場所、
京阪神、里帰り、出かける起点となった。
ここに泊まるのも今日が最後。今晩が最後。これで最後。
娘の小学校生活、小学生時代、成長を共に見守ることのできた場所、
行ったり来たりの別居結婚の寂しさもなんのその、
今までの生活の中で最も物理的距離が短かった、
私たち親子3人水入らずの家。
ここで、この部屋で親子3人、川の字になって過ごすのも、
今夜が最後なんだねえ。
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