Festina Lente2

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されど、われらが日々・・・

おじゃる丸』関連の一連のニュースを、娘にどう伝えたものかと
思案しながら帰宅すると、娘は夕刊を見てもう知ってしまっていた。
複雑な心境。
良くも悪くも字が読めるようになってくれていたのは有り難いが、
今日は素直に喜べなかった。
むろん隠し立てしても仕方が無いことなのだが。
「自殺しちゃったんだって」とあっけらかんという娘に
何と言えばいいのか、私は言葉が見つからない。


娘よ、新聞記事の内容は、直接自分に関係ないかもしれない。
安全な場所にいて、記事の配信を受ける私も君も。
人の死や、それが与える影響も、人が何故死んでしまったのかも、
まだ思いを馳せたり、わが身に置き換えたり、その死を悼んだり、
そういう事がわかる年齢では無いことを知っている。
まだ、ぼんやりとしか感じられないという事も。


かーちゃんは、何と言っていいか落ち込む。
そして、何もこれ以上付け足さなくてもいいだろうと思った。
もっと物心がつけば、自分が理解できる範囲で知ることだから。
そして、親子の会話や楽しい買い物、雑誌の付録、シール、
キャラクター製品の一つ一つに、君と過ごした日々の思い出を
見出さずにいられない、少々感傷的な気持ちになっている
少女趣味な落ち込みを、思いやってくれる時が来るかもしれないと
願っていたりするのだ。




同様に、見たくはない、辛いからと思いながらも、
どうしても同時多発テロ関連の情報から離れられない。
映像に、記事に目が釘付けになってしまう。ニュースキャスターが、
「この日自分が何をしていたか、振り返って自分の物語を作った日」だと、
5年前の今日を位置づけている。


淡々と娘は母親とテレビを見ている。母親が帰宅する前に、
自分で新聞の記事を眺めていたように。当たり前のように、
母とテレビを見ている、宵っ張りの娘よ。
普通の親は、こんなもの見せないだろう。
普通の娘は、こんな時間寝ているだろう。
小さな部屋で、一緒に眠る部屋で、虫の声が聞こえる中を
暗い部屋の中で、思い出を語る人々を、二人で黙って見ている。


「彼の判断は正しかった」
「I'm sorry.I'm gonna die.」
「死ぬまで心の整理は付かない」と語る人を。

アメリカ兵の戦死者。5年前の犠牲者より多い戦死者。
イラクの現状。5年前の犠牲者よりよりずっと多い民間人犠牲者。
それよりも遥かに多い、原爆の投下で一瞬にして失われた人の命。
数の問題では無いけれど、グラウンドゼロの鉄骨を、戦争に使う
船に造り直している国への、やりきれない思い。


安全に、住んでいる、というのは幻想か。
この取り繕われている日々の、地球丸の板子、一枚下。
覗き見るのも恐ろしい、地球号の未来。
娘よ。みんな同じ船に乗っているのに、船に穴を開けている、
そんな未来を渡したくない。
おやすみ、明日のために、ゆっくりと。
この小さな部屋で、私とあなたと。