Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

4人部屋の片隅から

朝、ベッドで定時巡回の看護師さんと話していると
スーツ姿のイケメンにーちゃんがやってきた。? ・・・誰だっけ?
「退院後1回目の診察に、仕事抜けて来たんや。調子どうですか?」
胸から携帯をぶら下げ、ガタイのいい、爽やか度抜群のにーちゃん。
こんなハンサムな知り合いが、いたっけか?(仕事関係ではあり得ない)


「今日はビーフシチューだ、いいだろー」と、絶食中、点滴を引きずっていた
私に話しかけた、隣の男部屋のにーちゃんでした。
私より1週間先に救急車で運ばれ入院し、盲腸を散らしていた彼は、
先週半ば退院して、結局会えずじまいで、さよなら。
ちょっと寂しいなとは思っていたけれど、まさか病棟まで上がって、
顔を見に来てくれるとは、思わなかった。
気にかけてくれて、ありがとう。いやあ、退院に向けて幸先いいね。
単純にハイになる私。遠いヨン様より近くのにーちゃんである。
「血液検査の結果次第で、今日にも退院のお許しが出るんだ」と、私。
「ほんまですか、良かったですね。」急性腹症の患者同士の会話となった。
ほんの少しのご縁だったけれど、病室までお見舞いに来てくれて、
本当に、ありがとう。


雑談はしておくもんだ。雑談は大切。
朝、談話室兼食堂で小耳に挟む、出勤してきたPTの先生同士の会話。
医療事務の人とお掃除のおばちゃんの会話。互いの息子の結婚話。
部屋にお掃除に来る、おばちゃんとおねえちゃんの会話。
仕事の事より、年齢差から人生指南。モップかけながら、話は深刻。
介助のおばちゃん同士の会話。お給料と有給休暇について、喧々諤々。
看護師さんは、同僚ナースのおめでたを噂する。
患者同士は主治医の品定めをし、ナースの品評会となり、
いつしかベッドを挟んで、お互いの身内について相談し、
悩みを語り、小さなカウンセリングの場の様相を呈する。


雑談は大切、しかし、雑談は恐ろしい。
知識や知恵の伝授、気晴らし憂さ晴らし、暴露・裏話、情報提供、
小さな自己開示、信頼と感謝のやり取り、慇懃無礼な挨拶とお世辞、
世間話はとめどなく広がり、「不穏の種」ともなりかねない勢い。


4人部屋の片隅から、半径10メートルの廊下を、ゆっくりとゆっくりと
行ったり来たりするだけの、この毎日。それでも、面白い。
人間のいる場所。会話。やり取り。言葉に出るもの、出ないもの。
表情、一挙手一投足から、感じられるもの。
仕事の仕方、その人の個性、そこから見えてくるもの。
聴いて観ているだけで、面白い。
生きているという事は、哀しくも面白い。

(この画像は次のサイトからコピーさせて頂きました)
http://taxi.exblog.jp/