古文の入試問題
昨日は高校入試だったので、新聞に問題が載っている。
老眼になりかけている目には、きつい字の大きさ。
若者は読めるのだろうか、これでも。紙面の節約とはいえ、
あんまりじゃないかと、新聞屋に文句の一つも言いたい。
昔はもう少し、大きく載せていた様な気がするのだが。
入試問題と言えば、清水眞砂子が講演で言っていた。
一生に一度、大勢の人間が巡り合う文章だから、
それなりに読んで良かった、意味がある文章を選びたいと。
同感。全く同感だ。試験勉強する立場からすれば、
駄文ばかり読まされたのではかなわない。
どうせ勉強する・させる・せねばならぬのならば、
良質の、薫り高い、読み応えのある名文がいい。
流行作家の文章でなくて、いいのだ。
教科書的に、世代を越えて残っていく文章がいい。
思春期のこの時期、多感な時期に、たった1度読むもの。
是非、読んでほしいと思える文章が良いに決まっている。
単に入試だからと捻った問題を出そうとしたり、
出題者の好みで選んだりし過ぎないでほしい。
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そういう点で、この国の国語教育は「古典」を
軽視すること甚だしいこと限りない。
今回の出題の内容といい、短さといい、何なんだ?
読売新聞と来たら、「寝ることが好きな僧について書いた
親しみのわく古文から」だと? 親しみのわく?
物は言いようだなあ・・・、全く。
古文の嫌いな生徒を作らない為に、ハードルを低くしたつもりなのか。
そうやって媚びる姿勢を作るから、ますます古典は馬鹿にされる。
易しい文章が親しみをわかせる・・・中学入試でもあるまいに。
何故、ものを考えるきっかけになる文章、
古来名文とされる文章、きちんとした古典の文章を学ぶべきだと
中学校に認識させないのか。だから高校でも生徒は学ぼうとしない。
これが公立高校の入試問題だから? 私が親なら、がっくり来る。
もし、私学の入試問題なら、教育のポリシーを疑う。
こんな出題をする国語の教師のいる高校は嫌だ。
−−人毎に好む事あり。いかに物を好まぬ者も、
あるはいたづらなるを好み、あるは昼寝を好む者あり。
ある僧は、朝の粥を忘れて食はずして、
日闌(た)くるまで起きず。
「いかに粥をば召さぬぞ」と人言へば、「粥よりも
寝たるは、遥かに味(あじはひ)の吉(よ)きなり」
とひいけり。−−
確かにね、好みの問題は人それぞれ。
「蓼食う虫もすきずき」だからね。
「みんなちがってみんないい」だからね。
「春眠暁を覚えず」
「海棠の眠りいまだ足らず」の春だからね。
しかし、どうしてこの文章が入試問題なんだ?
一番、詩の問題。詩を読む楽しさねえ・・・。
ま、出題意図としては認めよう。キーワードに感動と発見。
二番、古文。好みと怠惰を履き違えてないか?
言いたい事はわからんではないが、出題すべきものか?
三番、思春期の少年の心理。内面の変化と気付き、決意と選択。
いいよ、これなら入試向き小説。
四番、作文。お題は「発見」なるほどね、今回の全体のテーマ。
発見をテーマにするなら、もう少しましな古文を。
季節を取り込みたいなら、もう少しきちんとした名文を。
叙情か叙景か、いずれにせよ坊さんと、粥と、朝寝では、
これから高校に進学しようとする人間に、読ませたい古文ではない。
少なくとも、雑談ならともかく、入試問題でね。
出題者が紙面の都合上、短い文を探してきたのか。
・・・いいさ、どっちにしたって、古典の教育を蔑視する
「美しい国」作りのお上、文科省、カリキュラム、
その下にある教育委員会だもの。
格調高い文章や、ポリシーより見せかけの「親しみ」を
教育に持ち込んでいるわけだから、ね。
・・・これは、私の好みの問題?
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