Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

夢から醒めた夢

久しぶりに劇団四季。これでも会員。なかなか観にいけないけれど、
やっと手に入ったチケットで、隣の隣の市まで。
仕事を終えて、娘を拾って乗り付けたのは開演10分前。
やられた・・・、この劇はロビーパフォーマンスも売りだったのだ。
もっと早く来ていっぱい写真撮るんだった。
高足駄のノッポのピエロをバックにかろうじて1枚。
席は音響の前。やれやれ。安いチケットだからね。
もう、舞台では手品顔負けのshowが始まっていて、
見とれているうちに客席に不思議な装いの人物達が。


そう、観客を異世界に引き込むための装置が
計算されている、巧みな演出。
目にも鮮やかな色、色彩の魔術。ブラックライトに輝く紫。
ベネチアのカーニバルと見まごう、奇抜な衣装とメイク。
流れを止める時間、貴族趣味或いはシノワ、サーカスの動き、
開演の知らせる白い鬘に礼装の男のハンドベル


キャッツの時も開演すぐの客席が、舞台と渾然一体化するように、
今回も劇中劇の形、夢の中の旅の形で物語は進行。
ファンタジーへの入り口、夜の遊園地。
夢の配達人は口上を語る。


―人生を生きるには夢が必要だ。
 苦しいとき哀しいときはここへいらっしゃい。
 寂しいとき嬉しいときもぜひ。
 劇場は夢を創り出し、人生を映し出す大きな鏡です。―
 (パンフレット24ページより 抜粋)

夢から醒めた夢

夢から醒めた夢

ユタと不思議な仲間たち

ユタと不思議な仲間たち


娘に劇団四季を観せるのは2度目だ。
1度目は一昨年、「王様の耳はロバの耳」
今日の作品は、長いしちょっと難しいかと思ったけれど、
ぶつぶつ言いながらも頑張って2時間半見ていた。
「王様・・・」の時よりもずっと大人が多い。
映画館のように子供椅子は無いから、ちょっと娘は観にくそう。


前にかぶり付きで観せたアマチュア演劇が、よほど楽しかったのか、
最初はつまらなそうにしていた娘も、主人公の女の子ピコがどうなるか、
次第にお話に引き込まれていって、はらはらドキドキしている。
ちょうどいい時に休憩。幕間となる。


幽霊の女の子、マコと1日だけ体を入れ替える。
あの世とこの世、霊界の天国・地獄行きのパスポート。
ミュージカルだが話の筋は主人公が握り、肝心の所で
人形遣い兼ナレーターのように、夢の案内人が出てくる。


子供の命が失われる世界に向けて、メッセージ。
アジア・アフリカ・パレスチナ、各地で弱い者から切り捨てられる。
テロ、戦争、受験戦争、出世戦争、縄張り争い、
「自分のことばかり考えるな」「みんなのために」
キーワード、わかりやすいメッセージ。


人の死と命と、様々な人生があることを
主人公と共に夢の中を巡り歩くことで経験していく、観客。
ウルウルする場面もあったけれど、劇の原作が
赤川次郎だったことにびっくり。
この人、こういう事もしていたのねって感じ。


彼の父親が満州映画協会で働き、甘粕正彦の側近だったと
パンフレットの浅利慶太との対談コーナーで知った。
血は争えない。多作の流行作家の人生は、
家族の歴史を通じて、色んな人と繋がっている。


「夢から醒めた夢」の紡ぎ手は一方で、
別の世界で紡がれた夢を命脈として、活躍の源にしていた。
そんな気がした。
どんなふうに照明を当てるかで、
浮かび上がる景色が違って見えるように、
舞台もまた、同じ。
人生もまた。

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