Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

例えて言うならば

・・・、今日の気分は水なす。この地方の名産。
でも、収穫量は少ない。作付面積が余り無いから。
傷みやすくてなかなか長期輸送に耐えないから。
生でも食べられる新鮮さが売り物だから。
だから、今日の気分は水なす。
あっという間に鮮度が落ちる。


例えて言うならば、誰か私を美味しい糠漬けにして。
食欲の出る浅漬けにして。
そう、私は生のままでも食べられる。
そのまま食べてもらっても良いのだけれど、
それでは、何だか物足りない。
だからといって、調味料を使い過ぎないで。
そのままの味を失くさないで。
注文が多いかもしれないけれど、
そんな風に言いたくなる気分、気分。


水なす、あら、お珍しい、もう、そんな季節に。
ちょっと贅沢に、この季節を味わいたい。
この時期、この季節、気の利いた和食の店先に、
ビジネス街のランチにも、たまにお目見え。
旬の味を添える、あら、さすが大阪。
水なす定食って、ええ、あるんですよ。


今日の気分は水なす。
何だかネット販売の特別な品物みたい。
八百屋で当たり前に並ぶのに、何故か買わない。
何故か買えない。自分では買わない。そんな水なす。

手が届きそうな、季節のお惣菜の材料なのに。
贅沢品、いえいえ、季節ものだから。
この時期だけの、季節仕事を象徴する、
時間を切った仕事を連想させる、水なす。

四季の保存食―自然のめぐみを食卓へ (別冊エッセ)

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食べたい物を食べたいように料理する時間が取れない一日。
妙に水なすが食べたくなる。
ああ、昨日の朝食べたあれが、今年の最初で最後に?
いやいや、そんな残念なこと。
・・・季節労働。この時期だけの特別な仕事が入る。


季節を感じる。これが時に苦痛。
季節に追われる。今、摘まねば、採らねば。
仕事にも旬があるので、追われる追われる。
季節に追いたてられる。今、食べねば、食さねば。
今やらねばなら無いことが、溜まって来ている。


寝不足で疲れた私、やむを得ず出張。
優先順位にけちを付ける単発の出張。
日常業務に支障をきたす、スケジュールの変更。
私の心の中の水なすは、あっという間に鮮度が落ちる。


ただ、それだけでは美味しくない水なす。
ちょっとした付け合せだから、季節もので和むのに。
山盛り盛られたら、うんざりしてしまう。
これだけ食べろと言われたら、辟易としてしまう。
美味しいは美味しいはずなのだけれど・・・。


そんな気分。何とも言えない気分。
時間追われ、傘を差すのも面倒で、濡れて歩く気分。
だから、せっかくの七夕飾りも外に出せない。
賞味しきれない、消化しきれない、
積み残しが続き、欲求不満の残るここ最近。


ああ、平日にゆっくり食事を摂りたい。
紫色鮮やかな水なすの漬物を前にして。
体を横にして、ゆっくりと眠りたい。
積み残しの仕事を気にせずに。
美味しいはずのものを美味しく味わいたい。
あっという間に、もう週末。

労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)

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ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)

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