Festina Lente2

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ピアノの夕べ

音楽教室の帰りに娘のお友達親子と軽く打ち上げ。
先日のヤングピアニストコンサートの。
ついでに夏休みの終わりにお泊りができなかった埋め合わせ。
お友達は、肺炎で8月末から2週間ほど入院したのだ。
でも、今はもうすっかり元気。
お父さんは出張中ということで、夫の居ない一人っ子と妻同士、
近所のレストランへ。


ここは平日は空いているが、土日は予約しないとなかなか来られない。
以前に比べて食事の内容は? ではあるが、焼きたてパン食べ放題。
おかずよりもパンを食べに来るというのが正しい。
それに、短い時間ではあるが、ピアノの生演奏がある。
何と偶然に、今日のピアニストはお友達の幼児クラス時の先生だった。

トラスティベル~ショパンの夢~オリジナルスコア

トラスティベル~ショパンの夢~オリジナルスコア


母親にとって、特に一人っ子の母親にとっては、「初めての〜」は忘れ難い。
初めてのオムツ、初めてのベビーカー、初めての三輪車、初めての。
習い事だってそう。初めて娘に手ほどきをしてくれた先生に対する、
思い出は、子供が思っている以上に強いものがある。


音楽教室の先生、本日のピアニストの先生はその当時
就職したての若い先生だったそうだ。だから、生徒のことをよく覚えていた。
お互い出会って懐かしそう。私にとっては知らない方だけれど、
このレストランに決めて良かったなあと、にっこりしちゃう。


今年結婚され、退職。来年3月が予定日でとおっしゃるが、
黒いふわりとしたドレスのせいでわからない。
お友達と娘は、「お腹に赤ちゃんがいるの?」と傍若無人
先生のお腹をなでなでしている。


・・・胸が痛んだ。
2人とも一人っ子。きょうだいはいない。下の子が生まれて、
お母さんが大きなお腹でという姿を見ずに成長するのだ。
お母さんのお腹に手を当てて、赤ちゃんを感じるなんてこと知らずに。
自分がお母さんになることがなければ、その経験だってない。


・・・胸が痛んだ。
小学校に入るまで、ずっと妹が欲しいと言われ続けた。
もう、そういうことは言わなくなっていたけれど、
「赤ちゃん」に対する関心が無くなっている訳ではないのだ。
純粋に、新しい命に対する憧れや夢、希望を、
ずっとずっと持ち続けて欲しい。大人になるまで。


「先生のお腹の中の赤ちゃんは幸せですね。
 毎日お母さんのお腹の中で、お母さんのピアノを聞きながら育つんですから」
思わず口に出してしまっていた。
8ヶ月まで、大きなお腹で働いていた時、お腹をぽんぽん叩きながら、
胎児に声を掛けて仕事していた頃を思い出したからだ。
音楽とは程遠い様々な音や言葉を聞いていただろうけれど、娘は。


先生は「そんなこと言われたのは初めてなので嬉しいです」と
おっしゃってくださった。私も嬉しくなった。


身二つになるまでの、何とも言えず幸せな時間。
しんどさや不安よりも、子供と共にあることの無条件の幸せ。
胎教を通じてというよりも、妊娠中から共に生活することで、
親子・同士とも言うべき一体感を感じながら、
その日を迎えるのを心待ちにしていたあの頃。


一人っ子の娘たち、お友達と娘は先生のピアノに聴き入っている。
ショパンを、トトロのメドレーを、ムーンリバーを。
優しい白い指先から紡がれる、柔らかな音の響き、
普段間近に聴くことのないグランドピアノの音色。
子供たちは見入っている。先生の指の動きを。
ピアノで満たされる空間を。
そして、私はそんな娘を見ている。
私が子供の頃、経験したことのない世界にいる娘。
レストランでピアノの生演奏を聴くことができる娘の姿を。


何か、言い知れぬ思い。
骨がうずくような切なさを感じる。
自分の体の一部分がキーとなって、
柔らかく音の雨に打たれているような。
そんな秋の夜。

スピリチュアル・ケア アダージョ「ブラック・ジャック」クラシック・セレクション

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