Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

I AM LEGEND

このプロジェクトのメンバーとは来年1度限りだから、
雰囲気作りも兼ねて顔出しする忘年会。
場を盛り上げる配慮をする人、手品を披露する人、
内輪で集まってしか話さない人、注ぐ人注がれる人、様々。
誰がどんなふうに輪の中に居るのか、見ているのは面白い。


車を駅に停めた私は、ウーロン茶とグレープフルーツジュース
交替で食べているので、今ひとつ。
見た目は華やかな和風の小洒落た宴会料理、
せっかくの炭火で朴葉焼きが出ても、知らない人は多い。
年配の人が手配した店も、ゆず胡椒や葱味噌、
工夫を凝らした薬味をを知らない人ばかり集まって
飲み食いしているのでは、選んだ甲斐がないというもの。


マンウオッチングを兼ねた宴席が跳ねたからには、
ただで市内からは戻らない。本日の映画は「I AM LEGEND」。
何だか、いつもたった一人で孤軍奮闘する役柄がすっかり身についた、
ウィル・スミスの最新作。別に彼のファンではないけれど、見たかった映画。
世界を破滅させる正体不明の病原菌と戦うテーマを、
かつて子ども時代に見た「アンドロメダ」の世界と重ね合わせて、
映画館のシートに深々と身を沈める、21時過ぎ。

アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV)

アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV)

アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))

アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))

スカイスクレーパーのマンハッタン、ビッグアップルのニューヨークが
悪者に狙われるのは映画の世界のお約束。但し、今回使われていた言葉、
ground zero グラウンド・ゼロ」は否が応でも9・11を連想させる。
「ここが発生源(震源地・爆心地)なんだ」との繰り返し。
単語の中に複数のイメージが重ねられ、増幅する。


痛みを伴って苦しげに語られる、
「cure キュア」という言葉の響きも印象的だった。
会話が少ない映画の中で、たった一人生き残っている設定の主人公が
自分自身に語りかける言葉、記録の中に残そうとする言葉、
マネキンに切なく訴えている言葉、一つ一つの台詞が
3年間近く孤独な戦いを続けている状況を際立たせる。


人のいない世界、人の気配が感じられない世界での音楽。
TV画像から流れる人の姿、声。夢の中に切れ切れに見える過去。
たった一人で暮らした事のある人なら誰でも経験がある、
静寂な空間に変化を与えるためのTVやBGMの音。
そこから自分へのメッセージを読み取ろう聞き取ろうとする
孤独な作業、日常。


たった一人の友人、家族の忘れ形見である犬も失い、
自暴自棄になる主人公。犬を抱きしめながら絶望するシーンで、
「サム」と呼ばれていた犬が実はメスで「サマンサ」だと知って、
悲しみと孤独は、更に深まった。サムは家族であり、伴侶だった。
家族を含めて人類、愛犬という仲間を失った孤独の深遠が、
荒れ果てた幽鬼漂う夜の街に投影される。


科学者としての意識よりも、復讐・怒りに満ちた
自暴自棄な自殺まがいの行為に突っ走る主人公に、
映画のお約束、救いの手、奇跡のような生存者の出現。
ひとときの人間らしい生活や感情の交流、その代償として
隠れ家を突き止められてしまい、敵の襲撃に晒される羽目に。


そのぎりぎりで、血清が発見され生存者親子に託して
主人公は体を張って、敵からその親子を守る。
これまたお約束の、ヒーローの自己犠牲によって世界が救われる構図。
こんなに都合よく血清が見つかることも、親子が逃れる隠れ里のような
汚染されていない安全な場所があるなんていうのは、
物語だからこその設定なんだけれど、こんなラストシーンがなければ、
主人公は救われないし、人類も救われない。
映画の落ちがないという世界。


人類を死滅させた病原菌に対する免疫を持っていたがために、
孤独に研究を続けるウィルス学者が、ライフルを背負い犬を連れて
廃墟となった大都会をさ迷い歩く風情は、日本人には似合わない、
そんなことできる日本人あんまりいない、(猟友会ならいいだろうって?)
そんな思いでぼんやり眺めているうちに、
なかなかシリアスな雰囲気で終わって・・・。
雰囲気だけシリアスです。突っ込みどころが沢山ありすぎて、
巨額な駄作だなんて言ってしまったらかわいそう。


話の骨子の伝え方が拙かったのか、(いや、上手く言ったせいか)
家人にはあっさりと言われてしまった。
何だ、「バイオハザード」のパクリじゃないかと。
ゾンビみたいなのと戦うのが女か男かの違いで、
そんな風に言われたら、ミもフタもありゃせんがな。
確かに、白人女性の救世主か黒人男性の救世主か、
クローン増殖型世界貢献か、自己犠牲型敵を一掃世界貢献か。
二者択一みたいな見方ができないではないですが。


まあ、始まったばかりなのであんまりネタバレしては申し訳ない。
どうぞ、作り手の側が好きな伝説の作り方(幻想)とでもいうべき、
大掛かりな作品世界をご覧下さい。
またまた家人曰く、ウイル・スミスの出演料が高いから、
他の人を出さない分、セットにお金が掛けられたんだろう、
だなんて。当たらずとも遠からずだったりして。
さてさて、どんな「伝説」を打ち立てる興行になりますか。
立てられるのか? ドンだけぇー?

I Am Legend

I Am Legend

アンドロメダ… [DVD]

アンドロメダ… [DVD]