Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

猫の手を借りたいピアノ

今、娘がピアノの練習をしている。
サマーコンサートの時に、年上のお姉さんが弾いていた曲、
自分も弾いてみたいと憧れて、練習しています。
有名なベートーベンの曲、女性の名前の付いている曲といえば、
皆さんもうお気づきでしょう。そう、あの曲です。


しかし、小学校2年生にはちと難しい。
1オクターブの指がまだしっかり届かないし、
ペダルも踏まなくてはならないし、
音の強弱をつけるのもかなり難しい。
3連符の分散和音を滑らかにスラーで弾きこなすのも、
曲想そのもの自体も、ちょっとお姉さん向きの曲。
でも、ピアノ初心者なら誰でも憧れる、
ドラマチックな構成を持った曲。そして、・・・
意外と練習そのものは同じフレーズの繰り返しなので、簡単。


暗めのトーンながら、明るい雰囲気へ、刻み易いリズム。
色々練習が必要なのが難点。でも、ありがたいことに、
見た目ハ長調。哀しいメロディとはわかっているけれど。
(だから易しいよと言ってある。まだ実はイ短調と教えてない)
右手のメロディーラインは覚えて弾きこなすのが簡単、
でも、左手の伴奏は右手の装飾和音につられて、
うまくリズムが刻めなかったりするのがお愛嬌。
むろん、テンポは一定の速さが必要なのに、
速かったり遅かったりムラがあるのも、御勘弁。
ただし、思い入れたっぷりに弾くならば、
少々テンポが狂ったとしても、それはそれ、
それなりの雰囲気を醸し出す事ができる。


ただ正確に楽譜どおり弾いただけでは、
ぜんまい仕掛けのオルゴールの演奏と同じになってしまう。
(昔持っていた、生まれて初めてのオルゴールの宝石箱が、
 この曲だったのも懐かしい思い出)
ダイナミック、ドラマチック、ロマンチック、
3拍子揃った繊細な曲でありながら、初心者向けの曲。
それが この曲
あ、このリンク先はクインテットの方です。御紹介まで。(笑)
ピアノ曲の方はこちらからどうぞ。

ピアノピースギャラリー(1)エリーゼのために (ピアノピース・ギャラリー (1))

ピアノピースギャラリー(1)エリーゼのために (ピアノピース・ギャラリー (1))


おませな娘は、「おかあさん、本当はベートーベンが
好きだった女の人の名前は、この名前じゃないんだよね」
なんてのたまう。何処からそんな知識を?
夢見る夢子だった私は、昔の西洋の女性は
騎士道精神溢れる殿方から、武勇ならずとも
このように音楽をプレゼントされるのだなと、
訳もわからず想像していたのだが、
娘の方が一歩も二歩も先んじているようで・・・。


ただ、冗談抜きで曲想を摑んでイメージを膨らませ、
弾きこなすのは難しい。親の欲目、いや、
欲耳で聞いたとしても、まだまだ下手以外の何物でもない。
ただ、曲の形になって来ているのだけが、救い。
半分以上暗譜もできている。
ただ、元気な一本調子の如何にも子どもの曲。
これでは、コンサートにはなりえない。


娘はだんだん気付いてくる。ピアノやメゾピアノ
ピアニッシモの違いを出すのが難しい。
ペダルを踏むと音はふんわり広がるけれど、
どこかでそれを止めなくてはならない。
右手・左手・足、同時に動かすのは大変。


そして小さな小さな音を弾くためには、
弱くキーを叩くだけでは駄目。
最後まで丁寧に力を入れてそっと抜く、
そのタイミングを外すと綺麗な音が出ない。
小さな音は決して弱い音ではないことを。


指先に力を込めて集中しないと、綺麗な音は出ない。
装飾音符の細やかで速い音が出ない。
和音を一度に弾けない。
音がバラバラにならないよう、重ねるのは大変。
基本の指使いをマスターしないと、音が続かない。

      

実は娘はまだ「猫の手」でピアノを弾けない。
基本の形でピアノが弾けない。
どうしても、突っ張って指を伸ばしてしまう。
手首をキーより下に持ってきてしまう。
だから、根本的に音を出すには不利な形で弾いている。


指先の力を抜いて自然にふんわり両手を揃える形。
卵一つを手の平に包むような形。にゃんこの手。
「猫の手」は包丁を持つにも、タイピングにも、
鉛筆を持つにも基本となる手の形なのだけれど、
自分の娘が出来ていないことに、少々苛立ちと溜息。


自分の音を作る前に、基本の音を作らなくてはならない。
基本の音を作るためには、基本の形を守らなくてはならない。
基本の形ができていれば、無駄な力を使わずに、
別の世界への応用も利くのにと、
焦ってしまうかーちゃんは、実は箸の持ち方が下手だ。
鉛筆は持てるのに、箸は今ひとつ。
だから大丈夫、「待つ」ことにしよう、今はね。
ああ、それにしても「猫の手」を借りたい気分。


クリスマスコンサートへ向けて背伸び、でも、
色んな音が出るようになってきた楽しさ。
毎日弾くたびに小さな発見。
「ピアノの指の練習のお陰で、ピアニカのテストなんて楽々」と
自慢気にニコニコ語る娘よ。
柔らかく力強い音を出すために、日々成長している娘よ。


君は誰のためでも無い、
その曲は自分のために弾いているのだと
エリーゼのためには」この2007年を締めくくる
自分の成長への曲なのだと気が付いているだろうか。

エリーゼのために~子供のためのピアノ名曲集

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