Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

娘のラストステージ

昨夜の大風は、蒸し暑ささえ感じる生ぬるい空気をかき回し、
春としか言いようの無いぽかぽか陽気を嵐に変え、
春雷を伴う大雨となり、「一夜明けました」の様相を呈した。
さすが、今日を限りの音楽教室のコンサートの日の幕開け。
教室のレッスン自体は4月もあるが、
こういう大舞台でのコンサートは、これが最後。


音楽教室でコンサート。
自分自身にそういう経験が無いだけに、
大々的に催される「これ」が娘以上に苦手だった。
クラブや習い事の発表会などとは、無縁に育った私。
晴れやかで賑やかな場が、先天的に苦手な私。
お稽古事というものは披露できる場を持って、
人の目を通して、人の鑑賞に堪え得るものを身に付けて、なんぼ。
そういうことは頭ではわかっていても、体が拒否、感覚が拒否、
人見知りの世間知らずの臆病者の血が、
・・・不慣れで経験不足の自分が、娘の足を引っ張った。


あれこれと衣装や小道具に凝って、化粧まで施し舞台に上がる、
そんな小さな子どもたちを見て、ぞっとしてしまう。
名前を呼ばれても返事が出来ない、お辞儀も出来ない、
なのに、曲を引くために舞台に上がり、一列に並び、
スポットライトを浴びている。
そんな光景が幼児組から延々と続く。
幼いからと笑って済まして見ていられない自分がいる。


そんなちぐはぐな、無論、緊張のせい?
もあるのかもしれないけれど、お祭り騒ぎの舞台。
学習発表会も然り、○○大会や○○会も苦手。
人の大勢いる所が苦手なまま人の顔を見ないで育った自分、
過去の自分のトラウマが最も顔を出してくる。
親になっても変わらない、そんな自分の幼さに愕然としながらも、
舞台を前に、諦め気分で座っている。
周囲の熱狂、この日しか見られない我が子の姿。
様々なグループの演奏。
先生方にとっても、晴れの舞台なのだろうから。



お母さん方は、1年の締めくくりにも当たるこのコンサートに、
いつも文句を言っていた。どうしてせっかくの春の連休中に、
それも2日目にコンサート? 旅行にも行けやしない。
(それぞれの教室によっては初日だったり最終日だったりするのだが、
 結局、最終調整で練習が詰め詰めになってしまい、親も疲れる)
確かに、同感。親の職業によっては、
土日が休めないものも珍しくは無いから、尚更。


ステージで育ち、ステージママになるのが普通の人は、
この緊張感や練習が好きな人もいるらしい。
これこそ締めくくりの舞台よと、やる気一杯気合一杯。
逆に、年々気持ちの上からひるんでいる母親と、
それに影響されている娘。(娘よ、申し訳ない)
このマイナーな自分をどうにかしたいと思って来たけれど、
この発表会の雰囲気にはとうとう馴染めないまま、
4年間。娘が小学生になってからの4年間。
振り返ってみればあっという間。


音楽を楽しく学ぶ事が出来ればいいと思っていたけれど、
保育園を卒園し、小学校2年ぐらいまで習うと、
上手な才能のある子どもは、引き抜かれて別のクラスになる。
その他大勢は、カリキュラムに従って進級していくだけ。
親が教室に付き切りでなければ、実際先生は目を掛けてくれない。
親の目を意識した言葉の掛け方の有るか無いか。
仕事で付き添えない私のせいで、娘はたった一人、
みんなとレッスンを受けてきた。
個人レッスンになると、親も付き添えない。


どんな言葉がけをしているのか、だんだん不信感が募る。
(他のお母さん方から色々聞かされていただけに)
どんな練習風景なのか、ちっともわからない。
昨秋、泣いて辞めたいと言われた時よりも前から、
いずれにせよこの春で、ここから去るつもりだった。
別の先生について、個人レッスンをやり直すこと。
昔、自分が学んだようにクラシックを中心に、
ピアノを中心に学ぶこと。


昔、ピアノを習っていた頃、色んな曲を聴いて世界が広がった頃、
4年生ぐらいから、自分の楽想が練れるようになっていた。
娘ももう、幼い子どもだからと頭ごなしにぽんぽん言われて、
集団でレッスンを受ける、そういう場から一旦離れて、
全く違う環境で学んでみるのもいいかと思う。
習い事を、もう少し続けさせたい。
こと、音楽に関しては、今からが伸びる時期なのだから。
小学校時代から中学に掛けて、吸収できる時なのだから。


そんな事を思いながら、ほかのグループの演奏を聴く。
気のせいか、例年よりも低迷しているような気がする。
選曲も練習状態も、初めてこのコンサートに参加した時よりも。
4回目だから耳が肥えた? 最初の驚き、新鮮さが無い?
何だか、これでコンサートと言えるのかなあ、
カリキュラムのまとめに踊らされているような、
でも、色んな演奏の形、編曲、演出、見て聞いて学ぶことは、
重要だとわかっていながら・・・。


再確認する。エレクトーンの演奏が嫌いな事を。
右手でメロディを弾いただけで、パソコンに組み込まれた伴奏が出る、
その派手な編曲と演出が、あたかも上手に引いているような、
曲を盛り上げている違和感が嫌いな事を。
自分の指で弾いているというよりも、機械が音を出している。
それさえも、弾き間違えれば何もなら無いが・・・。
ピアノソロとは明らかに異なるこのコンサートの仕掛け、
いかにも上手く合奏できているという事を演出しても、
合奏について学べるかもしれないけれど、
自分の手で作り上げた音の世界ではないということに、
ひどく違和感を抱いている自分に。


ロックも好きだ、プログレロックが特に好きだ。
でも、最終的には自分で出す1人1楽器の音がどれだけ素晴らしいか、
ソロで音が出せるかどうかに掛かって来る。
音楽教室の総仕上げのアンサンブルが、エレクトーンの素晴らしさ、
機械の性能の素晴らしさ、一本指でも片手でもこれだけの音を出せる、
そんな宣伝にしか聞こえてこない私には、
娘以上に違和感が強かったのかもしれない。
古い耳を持っている私には、とうとう馴染めなかった春のコンサート。
やっと今日終わった。


さようなら、スプリングコンサート。
さようなら、電子オルガン、エレクトーン。
お疲れ様、ラストステージ。
しばらく、のんびりしようね。
娘も、私も。

音楽は自由にする

音楽は自由にする

3時間でわかる「クラシック音楽」入門 (青春新書INTELLIGENCE)

3時間でわかる「クラシック音楽」入門 (青春新書INTELLIGENCE)