宿泊人間ドック1日目

実は1泊の人間ドックは生まれて初めて。なのに最初で最期。
だって、新年度からは職場からの補助がなくなるから。
財政難ということで、多くの福利厚生事業が無くなる。
私は今の職場に転勤してくるまで、検診事業とは無縁。
市役所に勤める友人は毎年利用していて、息抜きを兼ねて
街中のホテルを渡り歩いていた。今思えば年に一度、
働く人間にそういう一日は貴重だったはず。
職場人間は体を壊したり、家族に何かが起きないと利用しない。
予防医学の意味が無いじゃないかと思うかもしれないけれど、
職場を休むということは、たとえ職免が取れたとしても肩身が狭い。
当然の権利だなんて言えない。ずっとそう思ってきた。
だから、今のひどい職場に着てから自分を守るために、
意識して休みを取らないと駄目だと言い聞かせている。

なのに、人間ドック初日の今日。やっぱり出勤して午前中勤務。
私って貧乏性。ぎりぎり1時まで仕事をして、車を飛ばして行った。
むろん昼食抜き、はぁ・・・。高速を使わず地道を走る。
去年と同じクリニック。今年で3度目。
検診事業で成り立っている場所は、それなりに行き届いていている。
一般の病院での検診は、やはり慌しく、気が引ける。
本来治療を受けるはずの人を邪魔しているような気がして。

日帰りと違って、宿泊者は貸し出しパジャマの色もロッカーも違う。
ちょっと豪華なロッカールームには、置いてある飲み物まで違う。
日帰り検診用ロッカーの飲み物はお茶と豆乳。
宿泊検診用には冷蔵庫に蜜柑ジュースかピーチジュース。
この差は？　（糖分が高いじゃんって、いや、それだけか）

宿泊ドックには日帰りと異なり、喀痰検査、糖負荷、
CT（頭部・頸部・胸部のうち一つ選択）が付いてくる。
まあ、糖負荷が入ってくると、日帰りでは時間的に難しいかも。
（空いていれば可能だと思うが）
私の場合、胃はレントゲンではなく毎年精検だから胃カメラ。
今の職場に来てから不摂生が祟って脂肪肝になり、
コレステロール、中性脂肪は増え、体重はそれほど変化が無いのに
体内環境は著しく宜しくない。今年は何を言われるか・・・。

人間ドックの愉しみ方

検査でわかること―健康診断ガイドブック (別冊NHKきょうの健康)

1日目。体重・身長・視力・聴力・胸部X線・胸部腹部エコー・
眼底・眼圧・採血・肺活量と、何だったっけ？
思いの外空いていて、2時間余りで終わった。
残りの検査は翌日へ持ち越し。
午前中勤務の後だから、何だかめまぐるしく疲れた。

初めてこのホテルへチェックイン。世間的には有名だがどうか。
内装外装はきれいだが、問題は丸1日食べていない今日の夕食。
荷物といっても大して持っていないのだが、運んで貰う。
49階までおしゃべりすると、ボーイはどうやら中国訛り。
あれ？　と意外に思ったが、ここはアウトレットが近くにあって、
韓国・中国、アジアからのお客も多い。
きっと彼は有能なボーイとして働いているのだろう。

残念ながら山側で海が余り見えない。でも、角部屋はラッキー。
ドック宿泊じゃ贅沢は言えない。でも近くの行楽地の観覧車や
血管のように走る高速道路はよく見える。
きっと山から海に掛けての町の夜景はきれいだろう。
本当は関空が見える場所がよかったのだけれど。
何故かツインではなくてダブルベッド。
ゆとりの室内。あ、パソコン繋げるんだ。
ノーと持って来れば良かった。おいおい、休息にならん。
静かな部屋でたった一人、心の中で呟き続ける。

レストランがディナータイムになるまで時間があった。
散歩がてらアウトレットへ出かける。
かなり広いのでゆっくりウインドーショッピングしていると、
２時間近く散歩したのと同じ計算になった。
結局、転勤する先輩と同い年のあと２人への記念の品、
（買物でも職場が離れないとは）
日増しに大きくなる娘の春夏用の服、数点買い込んだ。
気が付くと、自分の物など何も買っていない。

4月は自分の誕生月。少し早いけれどと、
1万円と少しで真珠のアクセサリーを買った。
若い人向きのデザインかしらと思いつつ、
10年もしないうちに娘に譲ることを想定している自分。
やれやれと思いながらホテルに歩いて戻る。

楽しみにしていた食事。明日の胃カメラのこともあり、
8時までにお食べください。脂っこい洋食は避け、ここは和食。
なのに・・・、窓際の席、殆ど喫煙席。なんてこったい！
おまけに外国人女性を連れた日本人男性、ずっとケータイで商談中。
店の責任者は注意しないわけ？　2回の電話時間は10分を越えた。

―明日、安城まで行くから。安城だよ、安城。
　何でオレが大阪と愛知を行ったり来たりしないといけない訳？
　何でお前のためにさー。オレって本当にいいヤツだよね。
　だからさ、きっちり人を集めてちゃんとしておけよ。
　何でオレがさ、こういうことしなくちゃいけない訳？―

こんな感じで延々喋る長髪の彼。
70年代の装い、黒いジーンズの上下。
やや趣のある日本料理店の中で、浮きまくっている。
若い人かと思えば、けっこうおじさん。恥ずかしい奴。
関西人の苦手な「…でさー」イントネーション、
大声でこれ見よがし商談？ケータイ。
3度目の電話が掛かってきたら、クレームを付けようとムカムカ。
ケータイが無くてもこれ見よがしに声高の会話。

周囲の席は私より遥かに年配。よく耐えておいででした。
店も変われず食べざるを得ず、お味の方はさっぱり。
着物姿も美しい仲居さんにサーブされ、優雅に和食を楽しむ。
一人でゆっくり落ち着いて夜景を楽しみながら食事という、
ホテルで過ごすひと時の夢はあっさりと崩れ去り。

夜景の特等席 (ぴあMOOK)

だれかのことを強く思ってみたかった

夜景は美しかった。間近にある観覧車を見下ろし、
車が行き来する高速道路は交通の大動脈。
山手から海へと延びて来て、また小さな道へと分かれていく。
少しささくれ立った気持ちが和む。あ、デジカメ忘れた。
ちょっとがっかり。職場に置いてきちゃった。
ああ、それにしても飛び立つ飛行機、見たかった。
せめて、飛んでいく様子を見たかった。

BSで相も変わらず「石の森章太郎特集」『佐武と市捕物控』を見る。
で、うたたね。気が付けば真夜中。夜中3時から書類を出してきて、
新年度のローテーション表を組んでいる私って・・・。
宿泊中でも仕事かい・・・。我ながら・・・。

佐武と市捕物控 (1) (小学館文庫)

YAKEI MODE~夜景モード