Festina Lente2

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通り魔って何?

娘に訊かれる。答えたくないニュースがや話題が続く。
「通り魔って何?」「池田の事件ってどんな事件?」
「無差別殺人ってどういうこと?」


今まで起こった色んな悲惨なニュースが頭の中をよぎる。
幼い命が犠牲になった、少女がかどわかされ、行方不明。
商店街に車が突っ込み・・・、いきなり足元の砂に飲み込まれ・・・、
電車がマンションに突っ込んで脱線・・・。
どんなニュースも日常生活を一瞬にして奪い去る不条理。


しかし、新聞に「育てた時間」よりも「失った時間」の方が
長くなったと書かれていた「池田の事件」関連記事に
流した涙が乾く間もなく、今回の通り魔事件。
呆然とする被害者の父親に「犯人に何と言いたいですか」と
マイクを突きつけるマスコミにも気分が悪くなった。

脳と犯罪/性犯罪/通り魔・無動機犯罪 (心の病の現在)

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護身の科学

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何がそんなに不満なのだろう。
誰かを殺してしまいたいくらい、鬱屈した気持ち。
苛々や腹立ち、日常の中で沸々と泡立つ抑え難い思い。
そういうものは誰でも抱えて生きているものなのに、
わざわざ携帯サイトに予告めいたものを立ち上げて、
その上犯行を決行し、誰でも良かったとほざいて17人殺傷。


今回の直接の被害者の方々、関係者の方へ
心からお悔やみ申し上げる。


おそらく今まで悲惨な事件に巻き込まれた人は、
今回直接被害にあわなかったとしても、
様々な場面で克復したはずの心の傷、
克服してきたと思い込んできたはずの
そう思って頑張って生活してきたはずのつっかえ棒が外れ、
深い心の傷をこじ開けられ、愕然とさせられ、
再び悩み苦しむ事になるだろうかと思うと、胸が痛い。
そういうフラッシュバック、何度も追いかけてくる恐怖、
眠れない日々というものを、少しでも知っているから・・・。

トラウマを乗りこえるためのセルフヘルプ・ガイド

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心に傷をうけた人の心のケア―PTSD(心的外傷後ストレス症候群)を起こさないために

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娘よ、当たり前の日常の中で、
心から安心したり信頼したりして生活している中で、
今日も明日も同じ日々が続いているのだと思っている中で、
自分には何の落ち度も無いと胸を張っていきていた毎日が、
どこの誰ともわからない、神の御技と言うには余りに酷い、
受け入れることの出来ない現実が襲い掛かってきて、
自分自身の存在も、愛する人の存在も
粉々にしてしまう。
そんな事件の説明を、上手にするのは難しい。


説明し切れるものでは無いから、冷静に、と思うかもしれない。
ただ、「戦争を知らない子供たち」の世代のかーちゃんが、
とてつもなく恐れるものの一つに、この不条理な、
余りにも悲惨で受け入れ難い不条理な世界の出来事が、
恐ろしい。自分に降りかかって欲しくない。
余りにも恐ろしい。


「池田」の事件の時、かーちゃんはもう母親になっていた。
犠牲者のお母さんの「制服をクリーニングに出せない。
娘の香りが残っている服を手放したくない」という発言を読んで泣いた。
あの記事のお母さんの気持ちを、今でもずっと忘れる事が出来ない。


家族のぬくもり。それぞれの匂い、香り。
優しい言葉。暖かい眼差し。何気ない毎日のやり取り。
それが、あっという間に、理不尽に奪われる。
その衝撃の大きさから、自分自身を、愛する家族と同時に、
自分自身を見失ってしまう。
その、無残な非日常がもたらす悲しさ・恐ろしさ・痛ましさを、
かーちゃんは、ある意味ある程度まで知っているから、
上手に君に説明できない。詳しく君に説明できない。


じーちゃんが、君を送り迎えしようとするのも、
ばーちゃんが、「行ってらっしゃい」と言わず
「はようお帰り」と毎日言うのも、
出掛けにキスしてぎゅーして、抱っこするのも、
姿が見えなくなるまで手を振るのも、
かけがえの無い日常を確かめる、ささやかな手段。


保育園の時からせっせと送られてくる不審者情報。
未だに見つからない、行方不明の女の子のポスター。
突然突っ込んでくる車。いきなり目の前で「切れる」人。
そういうものから、どうやって君を守ればいいのだろう。
どんなふうに、心を守って行けばいいのだろう。
どうすれば、理不尽なReaperの刃から逃れる事が出来るだろう。


心を明るく強くする話なら沢山したい。
楽しい知識、面白い出来事、思いやりを育てる話、
大切な忘れたくない話をいっぱいしておきたい。
でも、今日の様な出来事の話は、あんまりしたくない。
たとえ、生きていくためにはこういうことも世間ではあるのだと、
知っておくべきことかもしれなくても、今の君にはしたくない。
今の年齢の君には。


子供に先立たれた、それも若い、まだこれからの子供に先立たれた、
親の気持ちを思うと、家族を無くした残された人の気持ちを思うと、
こういう事件のニュースを聞くと、聞かされると・・・。
単なる世間のニュースと同じように、説明するのは難しい、
かーちゃんには。


ただただ、悲しくて、心の中で祈りを捧げる。
ただただ、痛ましくて、心の中で祈りを捧げる。
亡くなった人が安らかに天国に行けますように。
残された人がいつの日か、少しでも立ち直る事ができますように。
少しでも、ほんの少しでも癒される時が来ますように。

安全はこうして守る―現場で本当に役立つ防犯の話

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