Festina Lente2

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ピアノと歯の再石灰化

本日、音楽教室のささやかなサマー・コンサート。
保育園から小学生、ピアノとエレクトーンのコンサート。
講習日が一日減ったと感じるべきか、合同レッスン日の水曜日。
恒例、くじ引キャンディに書いた順番で、演奏順が決まる。
娘はちょうど真ん中ぐらい。演奏に間に合い、ほっとする。


ベートーベンのト長調メヌエット。練習期間が少なかった割りに、
どうにか弾きこなせた。もっとも、暗譜していたにもかかわらず、
お守り代わりに楽譜を置いて弾いていたが。
無理にというか、無謀にも楽譜を見ずに弾いて、
立ち往生して弾けなくなったり、間違って弾いたりしている子を見ると、
(単なる練習不足という場合が多いような気もするけれど)
どちらが大切なのかなと思う、教室の小さなコンサート。


暗譜して弾ける経験を積ませることを一とするのか、
練習した成果をなるべく失敗せずに披露することを一とするのか。
安全策を取らせた親は、過保護で臆病なのか。
むろん、ちゃんと暗譜していても本番はどうなるか、
緊張のあまり間違うのはご愛嬌かもしれないが・・・。
私自身知っている。弾き込んだ曲は目の前に楽譜があっても、
見ずに弾いているのだが、あれば安心というあの感覚。
それに頼らないようにさせるべきなのか。


先週一杯、立山チャレンジキャンプで練習が不十分になってしまった。
親子共々その不安感で、お守り代わりに楽譜を置いて演奏。
確かに楽譜があっても無くても大差なかった出来栄えではあったが、
今回はいつもに比べて、あっさり終わってくれてほっとした。
夏休みの宿題がまだ片付いていない娘にとって、
サマーコンサートの練習は時間的に結構負担だったのだ。

エリーゼのために~子供のためのピアノ名曲集

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ピアノ発表会名曲集ベスト

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お稽古事は目に見えて結果が出ると励みになる。
進級テスト。まあ、それほど落とすことも無いようだが。
コンサート。これが一番緊張する。特に別会場で弾くものは。
水泳の試合や記録会。ピアノも水泳も自分との闘いと見るか、
他人との競争・比較と取るか。ある程度までは、どちらも経験させたい。
何事にも場慣れが必要。人前で弾く経験の少なかった個人レッスンでは、
それほど力が付かなかった経験を自分が持っているだけに、
娘には同じ失敗をさせたくないと思ってしまう、かーちゃん。


人前に立つのが平気になったのは、ハタチも過ぎてから、仕事に付いてから。
人付き合いが苦手で、上がり易く、場の空気を読み損なう人間にとって、
小さい時から色んな所に出ていれば違っていたのでは、という思いは強い。
自分が経験したのは、せいぜい小学校時代の珠算教室の検定試験ぐらい。
クラブの試合で他校に出かけたり、試合に臨んだりという経験が無い。
後は大学入試の模擬試験と本番ぐらい。人なかに出ていく経験に乏しい。
緊張と弛緩を繰り返す体験に乏しい人間だった弱みを、
今もどこかで引きずっているというコンプレックスが強い。


内輪のピアノ・コンサートでも30人近くが演奏する。
上級生の演奏も聞くことが出来る、唯一の機会。
私などは高校生の頃聴いた富田勲か?と思うほどの華麗な演奏、
エレクトーンの重厚で多彩な音の響きやリズムに吃驚するが、
何のことはない、USBやフロッピーのプログラムで制御された演奏。
指一本で弾いても、訳のわからないくらい色んな音が出る。
これが、痩せ我慢の私の嫌悪感の源でもあるのだが、
考えようによっては、一人で素晴らしい演奏が出来るとも言える。


どんなふうに受け止めれば良いのか。
さすが、エレクトーンの上級クラスにもなると、
手足を自由に使いこなすそれ相当の弾き方のテクニックが無いと、
到底弾きこなすことの出来ない難曲には挑戦できない。
ピアノは同じ鍵盤ただ一つ。されど同じ楽器とは思えないくらい、
弾き手によって音色が異なる。この妙味が何ともいえぬ。


娘の演奏を始め他の演奏を聞きながら、ふと思う。
私が子供時代経験しなかったこと、新しい経験は
どんなふうに娘の中に凝縮されていくのだろうかと。
緊張したり、恥ずかしい思いをしたり、弾き終えてほっとしたり、
そういう経験の繰り返し、反復はどんな影響を与えているのだろうと。
目に見える心の形があれば、どんなふうに変化しているのか見てみたい。
そんな思いに駆られる今日。


何故ならば、NHK「試してガッテン」で、虫歯になった歯の再石灰化について
驚くべき映像を見てしまったから。
1度虫歯になって黒ずんだ歯が、10年に渡る経過観察の元で、
再び白く綺麗な歯に戻っていて、削る必要も何も無く輝いていたから。
自分の中の常識を覆す、驚くべき世界が展開していたから。


歯の矯正を経験した子供時代、少しでも黒い所が見つかると削られ、
私の口腔内はアマルガムだらけだ。
はっきり言って矯正などしない、普段は医者に行かない子供は、
自然のはの再石灰化で少々の虫歯など、治っていたのではないかと思う。
なまじしょっちゅう歯医者に通わされたばっかりに、
削る練習台にされたのではないかと思うぐらい削られた。
それほど歯の磨き方が悪かったのかとコンプレックスは強くなり、
医者には「唾液の質が悪いから虫歯になり易い」と言われ、
「歯並びが悪く、歯が弱いのは遺伝だね」とまで言われ、
自分が情け無くなり親を恨んだものだった。


今の世の中の常識があれば、すぐ削るのではなくて、
様子を見ましょう、間食を避けて食後の歯磨きを励行し、
経過観察をしてみましょうと自分の歯を大事に守る事が出来たのに。
治療方が変わってしまった今、昔の治療の弊害を大いに受けたと
僻んでしまう私。再石灰化どころか、心にもかなりの傷。

カリエスコントロール―脱灰と再石灰化のメカニズム

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むし歯・歯周病 もう歯で悩まない (ホーム・メディカ・ビジュアルブック)

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ピアノや水泳、練習でしんどい思いをする。
試合や発表会で様々な思いを抱く。いろんな経験をする。
その時は辛かったり、恥ずかしかったり、期待外れだったり、
思いの外うまく行ったり、揺れ動く思いに揺さぶられる。
でも、通り過ぎてしまえば「こんなこともあったよね」と
「いい経験したよね」と振り返る事が出来る。
しっかりした自分の土台にする事が出来る。
歯で言うところの再石灰化。それが可能なのでは。


唾液の中には見えないけれど、液体カルシウムがあるなんて、
固体だとばっかり思っていたカルシウムが、液体だなんて。
磨いても前歯が虫歯になり易いのは、唾液腺から遠いから。
歯も磨かず、おしゃべりもせず、大人しく過ごすだけでは、
唾液の分泌は悪い。そりゃ、虫歯にもなる。


きっと心の中も歯が酸に晒されるように、
ささくれ立つ経験に苛まれて、黒ずみ穴があき掛ける。
でも、日々の色んな出来事の中でもまれて強くなり、心も再石灰化
楽しいこと悲しいこと、嬉しいこと辛いことのバランスの中で
心は成長して強くなり、かつて黒ずんだ所も戻す事が出来るのだろう。
それを信じて毎日を過ごす。日々のケア、歯のお手入れ同様、
心にも日常の当たり前のストレス、プレッシャー、喜怒哀楽。


傷ついたり落ち込んだり、色んな事があって当たり前。
少しへこたれても、いつの間にか忘れて笑っている。
そんなこともあったと振り返ることも忘れて、前を向いている。
泣いたカラスがもう笑った毎日の繰り返しを支える、
そんな親でなければならないと思う。
サマーコンサートを終えて、まだ宿題に追われている、
そんな娘をやるせなく見つめている心配性の私。
一人っ子の成長を助けるようで阻害してはいないか、
ふと不安になる。


そして、無色透明な液体カルシウムの如き存在、
そんな親になって、口の中で、
娘の心の中で噛み砕かれていたい。
娘の日々の経験、思いの中で噛み砕かれる存在でありたいと思う。
いやいや、経過観察をしましょうと黒ずんだ歯を見守りながら、
太っ腹でドンと構えるかーちゃんにならねばならぬ。
(構えているのは体重ばかりで、なおのこと切ない)


隠れ虫歯ならぬ、隠れ心の傷が広がらぬように、
虫歯も心の傷も「早期発見、長期観察」で、専門家に。
ただ任せる前に、親である自分が日々心掛けないと。
毎日が飛ぶように過ぎていく。
娘が9歳まで、あと1ヶ月の今日。

エリーゼのために~ピアノ名曲集

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