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偉大なる小冊子

1 wordより一太郎   『未来』より

幸か不幸か、読み書きから離れられない生活。
書くより読むようが多い。でも、ブログを書くのは自筆ではない。
当然パソコン。お世話になるのは、wordか一太郎
仕事では殆ど一太郎。それも旧バージョン。
何故ならwordっぽい仕様バージョンは好きではないから。
小さな親切余計なお世話機能が、文字入力の邪魔。
融通の利かないEnter、勝手なインデント、使いにくい罫線が嫌いだから。


でも、圧倒的に周囲はWord派が多い。抱合せ販売の成果?
お上の一方的な通達も、Word文書雛形で返答を迫ってくる。
文書は縦書きではなく横書きを重視、その影響?
Mac派は更に少数で、画像を扱わないので殆ど皆無。
私は一太郎派。・・・時々マイノリティの気分を味わう。


日本生まれの企業を大切にしたい。徳島贔屓? 
せめて国策が日本生まれのソフトを大切にしないなら、
読み書きを生業とする私は一太郎。漢字変換での滑らかさを選ぶ。
横書き、英文仕様雛形が先進的とでも思っている輩はともかく、
私の仕事文書は最終的には縦書きにするが、打ち込むときは横書き。


それでも一太郎は慎ましやかだ。余計な機能は無い。
打ち込んだとおりに表示される。意図しない勝手な行変換などしない。
哀しいかな、仕事柄Wordを触ることもあるが、ご愛嬌程度。
複雑な仕掛けを施して文書を作成する速度は、一太郎に限る。
これも相性のうちかもしれないと思っていたら、
先日手にした小冊子に、同じような思いが綴られていた。


少し古いが未来社の『未来』no.498 2008年3月号。滅多に入手できない雑誌。
(定期購入している訳では無いので、書店で貰う僥倖に恵まれないため)
未来の窓132 入稿原稿の整理(2)−段落処理の問題
(「テキスト実践技法」エディタ篇3)と題された西谷能英氏の文章。


それによると、私が常々鬱陶しいと思っていたオートインデント機能について説明があり、
一太郎にはこういう厄介な機能はデフォルト設定されていないとあった。
インデントは入力者が設定するとある。
別に私は編集者ではないが、Word文書作成時の手間暇の苛々を、
きちんと説明し、解説している文章に出会って、至極癒され納得し、ほっとした。
一太郎が好きな自分がおかしい訳では無いのだ・・・と。

本の本―書評集1994‐2007

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編集者・執筆者のための秀丸エディタ超活用術

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2 無料で濃い内容『scripta』

とにかくシンプルな表紙で水色が眼に涼やかだった。
重い買い物が嫌になり、最近は通販で本を買う事が増え、
本屋の店先であれこれ物色という時間も減った。
リハビリついでに駐車場代を無料にするため、購入予定の本を求める。
(注射料金だけ払う方が実際安上がりな気もするが)
滅多に行く事のない、大書店、紀伊国屋。太っ腹な事に無料で小冊子配布。
初めて手にした『scripta』no.8 summer2008


執筆陣は、私好みで実に嬉しい。
斎藤美奈子 長谷川一 都築響一 小林照幸 森達也 上野千鶴子 岩井俊雄 内堀弘
特に古典を擁護したい私としては、斎藤美奈子の中古典のスゝメ8
橋本治桃尻娘』の巻」は楽しかったし、懐かしかった。
長谷川一の機械と身体の縫合域 最終回 「豚と仮面」などは、わくわくもの。
上野千鶴子の日本のミソジニー7 「女子高文化をミソジニー」は
彼女は今回こういう切り口で来るかという思いで読んだ。
とにかく、笑いながら読める社会学を忌み嫌う人々が多い・・・のは残念。
まして8月当初、講演を聴いた前後だったので、楽しく読めた。


3 本が好き! AUGUST 2008 vol.26

手品師が持った黒い帽子から白い鳩やトランプが舞い上がる。
これも水色を基調とした眼に優しい表紙。光文社の小冊子。
もうこれ一冊でトイレの中は雑学漫遊。そう、私の小冊子置き場は、
本には申し訳ないが、トイレ。一人になった時、ふと手に取る本。
小冊子の文章は短くて短編が多い。小説は少ないので、
「この部屋」で読むには都合がいいのだ。


最近不勉強、文字から逃げているせいで知らない作家、評論家、筆者が増え、
小冊子を読むとちょっとしたウィンドウショッピングのように、
文筆界の動向、流行や顔ぶれ、イベントなどを垣間見る事が出来る。
テーマエッセイ 夏休みこそ「この一冊」なんて見ると、
私もこういうふうに言える一冊があればいいなあと思い、
頭の中が空白なのに愕然とさせられたりするのだが。


石原千秋の「書き出しの美学 川端康成『雪国』」は正統派。
林千草の「男ことばはこう時代を彩った」では、お江戸ブームを振り返り、
ひこ・田中の「子どもの物語はどこへいくのか」は、オタク魂。
そんな風に拾い読みする、ささやかな時間が現在の私の読書生活だ。
読みたい本を読み通すリキ、知力体力視力の衰えを底上げするような、
小冊子の「手招き」が、朦朧とする頭を時にはすっきりさせ、
くすりと笑わせてくれ、ああ、そうだったと思い至らせてくれる。


偶然今日ここで紹介したものは、いずれもミントグリーン、
水色の一服の清涼剤の趣きの小冊子。
我が拙い読書生活のこの夏のカンフルとして、「小部屋」に鎮座ましましている。
大長編小説に挑む余裕の無い私にとって、まだまだ楽しい読みも物があるよ、
ちょっとここらで一休み、閑話休題、それでは一席設けましょう、
本の世界からの手招きを感じるひととき、そういう場でもある。


哀しいかな、子供の頃の様に読んだ内容が、
たった一度で焼きつくように脳裏に張り付くということは無くなった。
それでも、なお、読みに読みたい、作品の、批評の、エッセイ。
思い出を語り、ショートショートに描かれ、真剣に書かれた小論文の、
連載小説の、筆者の眼差し、文章という様々な横顔に触れて、
今また夜更けを楽しむ。
秋の夜長を先取りし、空調の効いた部屋で「書」を楽しむ。
ささやかな幸せを噛み締める。

青年のための読書クラブ

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趣味は読書。 (ちくま文庫)

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