Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ガイドのいない旅

整骨院の先生のお陰で首は曲がるようになり、背中も幾分軽い。
すぐに口腔外科で麻酔かけて「抜歯の恐怖」からしばし解き放たれ、
週末まで治療は保留。不安は残ったまま午後の時間帯に。
とりあえずランチ。安心すると空腹を感じる。
先生の触診では左右差が無く疲れている顎やほほ。
歯科のスーパーボンドで応急処置されていても、硬いものは噛めない。
倦怠感はどうしようもないが、とにかく何か食べなくては。


硬いものは食べられそうにないが、とりあえず「ほっと」したい。
静かな所で、しばらく座っていられる場所を。少々お高いが、
北浜陶然庭で初めてのランチ。海鮮粥と中国茶で気持ちを落ち着けた。
一歩入ると小さな店の中は上品な異国。お茶の香り得も言えぬ空間。
何度もお湯を注ぎながら、ぼんやり。『麻酔科医』読了。
乗り継ぎ駅まで来て、気分転換。(正直、動くのがしんどい)


駅ビルで『幸せの1ページ』を観る。
目的はジョディ・フォスターだったのだけれど、意外と美味しいおまけ。
ジョディの演じる作家の作中人物と副主人公の女の子の父、
一人二役をこなす男優が、ジェラルド・バトラー
あの『オペラ座の怪人』でファントム役を演じて朗々と歌い、
『300(スリーハンドレッド)』では魅力的なレオニダス王を演じた彼。
あ、『タイムライン』にも出ていたのか。結構観ていたね。
映画によって役どころが変わり、印象が変わる。それも楽しい。


ジョディ・フォスターはいつもシリアスな映画、強くてタフで、
悲壮感漂う役柄が多かったので、今回のコメディタッチな作品は新鮮だった。
そう、こんな風に軽妙に生活したいのよねと、映画を観ながら思う。
原題、” Nim's Island” は、子供向けの童話の世界。
ファンタジー。だから、登場人物に悪人はいないし、動物たちも人間的。
こんなふうに世界が広がっているわけではないけれど、
引きこもりの人間が「ガイドのいない旅」を続けているうちに、
夢のような島での夢のような出会いの中で、今までの自分を脱ぎ捨てる、
その過程がコミカルで、ほのぼのとしているのがいい。

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そもそもジョディ・フォスターの作品は、社会派・硬派の部類。
問題提起型の作品で、観る側も鑑賞する知力・体力を要求される。
結構骨太な、スリリングな、胸をえぐられるような、そういう作品が多い。
私が一番好きなのは、かなり前の作品だが『コンタクト』だ。
ユング心理学的に見ても興味深い心の世界、色々考えさせる作品だった。


それから、『パニック・ルーム』『フライトプラン』『ブレイブワン』と
ハードな作品が続いていて、うーん・・・と思っていた矢先。
思わず年の近い人間としては、うん、こういう作品もいいよね、
たまにはこういう作品で息抜きしてよを言いたくなってしまう。
どんどん小柄で細く痩せていく彼女を見るのは痛々しい、
そんな気持ちだったから。


今回の作品で雨の中、完全装備で出かけていったのに、
次々を服を失い、コートも上着も失くして、行動的になっていくにつれ、
心の殻を脱ぎ捨てるように薄着になり、身軽になって、
海辺でのスリップドレス1枚姿のかわいいこと。
早々に仕事を引退してこういう田舎、楽園、海辺で生活したいと、
思わず夢想してしまった。


生まれたばかりの娘と、まだ健康だと信じて溌剌としていた、
とーちゃんかーちゃんの人生の楽園時代だった、徳島阿南の海岸。
思い出は砂浜に打ち寄せる波のように、繰返し繰り返し私を揺さぶる。
ほんの3年あるかなしかの幸福な子育て、家族の時代。
少しばかりその頃を思い出させる映画。『幸福の1ページ』


人生はガイドなんていないのが当たり前で、怪我も病気も突発事項、
「あらまほしきものは先達(せんだつ)」とはいえ、なかなか見付からない。
きっと出会いがあったとしても気付かずに通り過ぎたりしている。
アドバイスを貰っていても、無碍にしてしまっていることも多い。
同僚である同い年の戦友に「残り時間を気にしすぎる」と言われたが、
同世代が子育てを中心とした親としての勤めを終わろうとしている今自分、
思春期を迎える子育て真っ只中に突入している私の、
気力体力は、とてもじゃないが青息吐息虫の息。


何かを頑張った後、しばらく倒れて病み疲れて休養。
若い頃のように無理・無駄・冒険が出来なくなってしまっている。
自分を縛るもの、心身の状態に加えて、
思うに任せない立場や仕事に振り回されていると感じている今、
「飛び出そう」ではなく、「飛び出さなくては」を無理に発破を掛ける感じ。
「引きこもりたいプレッシャー」「何もせずじっとしたい願望」と
「「やって出来て一人前・当たり前」の責任感の間を行ったり来たり。


こんなファンタジーでくつろぎ、ひと時の夢を見て、
痛む体を引きずりながら、1週間。仕事とはいえ、
役割をこなすことさえ徒労感がいや増しに増す日々。
「我が身一つの秋にはあらねど」・・・月の満ち欠けよりも早く
気分・体調が上下変転することにも自己嫌悪。


ガイドのない旅。ガイドのいない毎日。どこに漂流していくのやら、
寄る辺無き椰子の実の心境。
無心に波任せ風任せで生活できれば。
ねえ。

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