会話の断片から
バレンタインから2週間。去年は好きな男の子の為に、
手作りチョコを贈ったのに、クラスが分かれて会う事も無い彼に、
今年は渡そうとはしない・・・のだと思っていたら、
同じクラスのA君が好きなんだそうな。
でもって、一緒に給食当番なので嬉しいのですと。
あれまあ、あれまあ、そうだったんですか。
保育園時代から好きだった彼ではなくて、
新しい男性に目を開いたわけですね?
興味津々、野次馬根性で尋ねるかーちゃん。
「で、どんな男の子なの」「人気があるからライバルが多い」
「そう、で、どんな男の子が好みなの」
娘の好みの男の子が、去年のタイプと違うのかどうか。
「あのね、人を傷つけないように自分の意見をいうことができる子。
で、乗りのいい子」・・・そうですか。
2学期から、いたずらっ子のいじめに悩んでいる娘。
君の望むタイプは人を傷つけない子なんだね。うーむ。
それにしても、私が小学校3年生だったらこんなふうに話せたかな。
乗りのいい子。これは父親に似てお笑い番組が好きなだけある。
私も嫌いじゃないが、君達親子ほどじゃない。
TV発信のお笑い番組は上っ面の盛り上がり芸が多いので、
かーちゃんはあんまり好きじゃないんだ。
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そんなこんな会話をしながら、今日はかーちゃん宴会。
退職する先輩を見送りがてら、かつてのチームメイトも集まって。
彼女が言う。「私最近そうなんですに染まっているの」
「は?」「そうなんですって、本当にそうなんですって思えるのよ」
話がよく見えない。飲み放題で話が見えなくなってきたのか?
彼女が言うには『躁なんです』の話。
最近殆どの事が当てはます、みんな『躁なんです』で納得、
出来るのですと・・・。でも、それって喜んでいいのかどうか。
彼女はよく気の利く仕事の出来る女性だ。
彼女が転勤でいなくなってこの1年、チームは更に混迷を深めた。
どんなふうに新天地で頑張っているかと思うと、
更に気遣いながら、色々思うところ多すぎて難儀していることだろう。
『躁なんです』を読むとあっちもこっちも躁なんですって納得する。
そんな風に話す彼女の胸のうちを思うと・・・。
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向かいの男性と何故か向田邦子の話になった。
最近はまっているのだと言う。思いがけず、彼の母親が、
危くひめゆり部隊になるところだったこと、
向田邦子に憧れていたこと、そんな話から、
失われた昭和の良さにまで話が及んだ。
私自身も10代から30代まで憧れていた向田邦子。
私はクロワッサン世代にはならなかったものの、
彼女の生き方に憧れた女性は多い。
私はと言えば・・・、出張がてら向田邦子の妹が切り盛りする、
「ままや」に飲みに行った位だったが。
向田家のメニューが載ったお料理の本にも熱中したなあ。
エッセイは勿論、自分に合った手袋が見つからないのなら、
手袋無しで寒い中を歩くのだと、自分自身も固く思ったころが懐かしい。
心の中を当時の自分が去来する。
『阿修羅の如く』『あ・うん』のドラマに熱中した頃。
社会人になる前の自分自身まで思い出して懐かしんだ。
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隣の男性と話す。「僕は家では余り子供は叱らないんだ」
「父親として、こういう時だけは叱ろうとか決めてないの?」
「父は10歳の時に亡くなったから、父親像というものがあんまり無い。
それよりも、亡くなった父親の年を越えて生きようというのが目標だった。
それは達成したから、次の目標は出来るだけ長生きすることなんだ」
・・・思いもがけないお言葉を聞くことに。
かなり長い間一緒に仕事をして来た仲なんだけれど。
帰宅して、迎えに来た家人から何度起こされたことか。
「炬燵で寝たら風邪ひくよ。ちゃんとお風呂に入って、
お布団に入って寝なよ。体に悪いよ」
「はいはい、早く寝てね。はいはい、わかったわかった」
言うまでもなく、炬燵猫になっているのは私。
如月最後の週末はこんな風に更けていった。
そんな私の家人と娘へのお土産は、回転焼とドーナツ。
結局甘くて太るものばかり。
そして何故か太るのは私ばかり・・・。
時々、こだまする。会話の断片がふわふわ漂う。
眠たい眠たい、炬燵から出られない夜。
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