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「瞬足」を求めて

「お母さん、私の瞬足が壊れてきた」うーん、まあ半年履いたしね。
『瞬足』は去年の運動会の頃に買った運動靴。
普通、「俊足」だろうと思うのだけれど(駿足でもいいけれど、)
メーカーがつけているブランド名で『瞬足』。
こういうことするから子供の漢字力が混乱するというか、
パソコンの漢字変換も面倒くさくなるわけだけれど、
娘の世代というか、子供たちの間では根強い人気があるらしい。
『瞬足』について知りたい方はこちらへ


別に靴にこだわっているわけではない。
特に強いこだわりがあって、買い物をしているわけではない。
たまたま安かったので運動会シーズンに購入したのだが、
それは一つ前のモデルで、女の子用というよりも、
どちらかと言うと男の子用のモデルであったらしい。
赤と黒のラインが入った白地のきりっとした印象が良くて購入したが、
周囲から「男の子みたい」と言われたらしく、気にしていた娘。
うーむ。水色かピンク中心でなくちゃいかんかったのか。


風邪で寝ている訳にも行かない。寝倒すわけにも行かない代休日。
娘を送り出し、布団を干し、洗濯物を干し、昼ご飯・晩御飯を準備して、
銀行・眼鏡屋(10年以上使い回ししてきたレンズを交換)・スーパー。
あ、そうそう、『駿足』が壊れたって言ってたっけ。
子供の靴コーナーに出向くてみても、なかなか見つからない。
新学期のせいか? 置いてある店舗が限られている?
靴は結構高い。ついでに自分の靴も探してみるが、これと言ったものが無い。


いったん帰宅。実家のリフォームの打ち合わせ。娘を水泳に送り迎え。
この時点で既に17時前。なんて一日が過ぎ行くのが速いんだ。
とうとうかーちゃんは風邪でぐずぐずしながらも動き回り、
身体を横にする時間が無かった。時は金なり、光陰矢のごとし。
されど、春宵一刻値千金。疾(と)く過ぎ行くな。
のんびりしたい代休日なのに。


娘を水泳に迎えに行くと、レベル28に進級したとのこと。
これはお祝いにやっぱり新しい運動靴を買ってやらねばなるまい。
しかし・・・。探す時に限って見つからないもの。
品揃えが今一つで店員が声を掛けてこない店の奥に、
なんと旧モデル・旧デザインの駿足が半値以下。
22・5はあるかな!? あったー!
あれ? 右足しかないよ? 左足は?


どうやら、23.0も一つしかない。こんな店頭品ってあり?
先に買って行った人が間違っていたのか?
仕入れの時から間違っていたのかもしれません」は店の弁。
どの駿足もみんな一足ずつしかない。23.5も、24.0もあって、
何故か、22.5と23.0だけが半端ものに。
おかーさん、あっちにも駿足があるー。 
だからその正規価格は、普段履きの運動靴が2足買えるって。


子供の足が大きくなるのは早い。幼児期の頃、
確か歩くときゅっきゅっと音がするかわいいサンダルを買った。
それが7月。9月のお誕生日が過ぎると、何故かもう履けない。
9月生まれの娘は、ひと夏過ぎるとぐんと大きくなる。
冬の間はブーツやその他の運動靴と平行して履いてきたが、
これからの季節はサンダルも・・・。
運動靴、学校用とお洒落用と使い分けているのだが、
周囲の目のかまびすしい、おまけに遊びやすく履き心地のいい
運動靴になかなかお目にかからない。


結局別のメーカーのもので、『瞬足』ニューモデルと特売品の
中間価格で23.0ではあるが、調整用のインソールが
付いているしっかりしたデザインを購入。
実は『瞬足』にこだわらなければ、22.5のまっさらの運動靴、
(いわゆる予備、履き替え用)ちゃんとあるのだけれど。
おまけに、2件の家を言ったり来たりしているから、
そっちにも履き替え用をちゃんと用意しているのだけれど・・・。


でも、子供の靴下と運動靴はあっという間にほころび破け、
成長にふさわしい健闘を刻むかの如くぼろぼろに。
ああ、自分にもこんな風に靴を履き潰した時代があったかな。
遠い遠い昔のことで、運動靴を履き潰すまで遊べた時代、
思い出せないかーちゃんにとっては、娘の成長が嬉しいものの、
靴が大きくなる度に寂しくなる。
買い換えるのをケチっているわけではありませんよ。


『瞬足』だなんて・・・。そんなに早く子供時代を駆け抜けていかないで。
走るのが速い「俊足」は確かに嬉しい。運動が好きなら尚更。
君は走るよりも水泳の方が得意だけれどね、娘よ。
そんなに早く大人にならなくていい、娘よ。かーちゃんは、
気が付けば23・5でずっと過ごして来て、
ちょっと太めになってからは24・0。
自分の母親が22・5だったので、追い抜いた時はショックだった。
そんな小学生高学年の想い出がある。


親に追いつけるのは嬉しい身長も、足の大きさも、
君は追い抜かしてしまうと寂しくなるということを、
もうすぐ経験するだろう。健やかに大きくなった娘よ。
君の身長はもう140。同い年の子よりも大きい方だね。
すくすくと大きくなって、かーちゃんは嬉しい。
そして寂しい。瞬足は嬉しい。『瞬足』を履くのもいい。
足元のお洒落も、お気に入りの靴を履いて過ごすのもいい。


ただ、疾く過ぎ行くなとかーちゃんは願う。
この春のひと時。新しい靴を君と探す時間。
1年に何度も無い、そんな時間。
かーちゃんは履き替え用の靴を買う余裕もなく育った。
毎日履き詰めで洗っては履きで、履き潰した。
だからあれこれ用意したくなる大甘かーちゃん。
買い揃える靴にさえも想い出を見出すかーちゃん。


大きくなっていく足。すらりと伸びていく足。
その一足一足の歩み、ストライド
どんどんかーちゃんは引き離されていく気がする。
手を引きながら立ち止まり立ち止まり、ゆっくり歩いていた。
だんだん速く歩けるようになり、勝手に走って遠くに行き、
そしてまた掛け戻ってくる。そんな毎日が過ぎて、
君はずんずん歩いて行って、もうかーちゃんより速く歩いて、
どんどん遠くに行ったっきりになってしまいそうだ。


疾く過ぎ行くな、時よ。
『瞬足』を、新しい運動靴を何足履こうとも、
娘の毎日の歩みが確かなものであるように、見守っていたい。
疾く過ぎ行くな、時よ。
娘のために再び新しい『瞬足』を探すことがあっても、
一瞬で駆け抜けていく娘の時間を惜しむものが、
傍に居ることを忘れるな、時よ。


そんな風に思いながら日暮れていく今日。

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