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ふたつのスピカ

娘のお気に入りの時間は色々あるが、最近は木曜20時のNHKドラマ。
多くの小中学生が塾通いで見られない時間帯、親子で楽しむことが多い。
(本当に見たい人はビデオに撮るだろうけれど)
むろん仕事で間に合わない時は娘は一人でTVを見て、
私は帰宅途中のラジオで粗筋を追っている。
丁度このドラマの位置づけは、私の中では少年ドラマシリーズと同じで、
冒険あり、恋愛あり、SF仕立てもあればコメディもといった感じ。


この時間のTVドラマの対象年齢がどれくらいなものなのか。
私の世代は半ば懐かしさを以て、番組の内容や粗筋を見ているのでは?
かつて自分が通ってきた道、『タイムトラベラー(時をかける少女)』『飛べたら本こ』
悲しみは海の色』『どっちがどっち』『暁はただ銀色』『夕映え作戦』、
数え上げたら切りが無い。感情移入してみていたものだ。
思春期の10代にはぴったりの世界が展開されていたと思う。
ドラマの原作も、筒井康隆光瀬龍眉村卓などの面々がずらり。


それが今、娘が熱中している木曜夜の8時のドラマ、現在は『二つのスピカ』。
七夕やエンディバーの打ち上げに合わせているわけでもないのだろうが、
NHKは宇宙や異世界に向けて、青少年を鼓舞しているとしか思えない番組立て。
この作品といい、アニメの『プラネテス』『エレメントハンター』『グィンサーガ』など、
宇宙や異世界をことさらクローズアップしているのは、
現実逃避しやすいようになのか、未来を先取りして夢を持たせるためなのか、
やや微妙な色合いが無いでもない。
何しろ「はまり方」を一歩間違えば、なかなか離脱できない世界でもあるから。

NHK少年ドラマシリーズのすべて

NHK少年ドラマシリーズのすべて

プラネテス(1) (モーニング KC)

プラネテス(1) (モーニング KC)


娘が作品に熱中し、宇宙へ憧れる主人公達の葛藤に涙している姿を見ると、
おませな9歳が10歳へ向けて、どんどん階段を登っているのがわかる。
私が昔、『謎の円盤UFO』や様々なSFシリーズに熱中し始めた頃と同じ、
世界の民話や物語、保育園や低学年時代の「読み物」から脱却して、
はっきり現実と距離を置いた世界に意識して参加し、感情移入し、
そのギャップを行き来しながら、自分の夢を追い求めていく時期。


夢の翼が大きいほど、羽ばたく力が強いとは限らない。
夢の大きさに煽られて気ままに吹き飛ばされていくものの、
あてどない行く先知らぬわからぬでは、ままならない時期。
心の成長と憧れの度合いと実力とが釣り合ってくれるのならば、苦労は無いが、
バランスをとるのが大変だから、相乗効果で伸びるとは限らない、
自分自身の可能性に不安を抱きつつ、悶々とする。


『二つのスピカ』に見られるようなライバルとの関係、挫折と失敗。
親子、友人関係のもたらす切なさ、一言で言い表せない複雑さ。
失われたもの、亡くなった者へのどうしようもない気持ち。
未来を夢見て心の翼を鍛える時期に、報われない恋、誤解され疎外される自分。
過去と現在、現在と未来が交錯する狭間で、佇み、また歩き出す学生達。
大人の世界に向かって、自分を創り直して行く過程を、
そのドラマの世界を、真剣に食い入るように見つめながら、
涙目になっている娘がいる。


君もそんなふうに感情移入して、ドラマの世界に入っていく年齢になったんだね。
『二つのスピカ』君にとっては、忘れられない作品になるのかもしれないね。
私達の世代のアニメ『宇宙戦艦ヤマト』や、マンガ『11人いる』のように、
宇宙で生きていく、戦う、その前に「宇宙に出て行くために、学ぶ」姿勢を、
試されている時代を、鍛えられる時間を、疑似体験して涙する、
そんな年齢になったんだね。


君にとってのスピカ、君とつりあう双子星、君を支えるもう一つの星、
それはどんな存在なのだろう。
かーちゃんはそんな思いで、君と一緒にTVの前に座って、
番組だけではなく、君の姿を見つめているよ。
感情移入して、様々な世界に飛び込んでいくようになった君を。

ふたつのスピカ DVD-BOX

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11人いる! (小学館文庫)

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