Festina Lente2

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人違いで済む?

せっかく歯内治療が終わったと思ったのに、補綴咬合の治療が進まない。
右親知らずの下の奥歯の詰め物が取れたのが、約2週間前。
抜髄、つまり神経を取っているので虫歯の進行がわからなかった。
痛まないから詰め物が取れるまで、ぎりぎりまでわからなかったわけ。
おまけに神経のない歯はミイラ同然乾いていて脆い。
歯の治療で神経を取るという事は、歯に栄養を送っている血管も失う。
体の中で神経を取っても正常に機能しているのが歯だと言うが、
それは見せかけのこと。歯は確実に劣化していく。


脆くなった歯は詰め物が取れた途端、自然に崩壊、
歯は元の形を失って、再び歯内治療の後、被せる予定になった。
その際にいつものようにレントゲン写真を見ながら説明があったが、
どうも何だかおかしい。歯の大きさも違和感。
割れた歯の1本奥にも歯があるはずなのに写っていない。
淡々と説明を続ける主治医に思い切って質問。
すると慌てて別室へ。しばらくして別のレントゲン写真を持って来た。


単純なミスかもしれない。2年間近く診て貰って来たけれど、
まさか説明している歯と別の写真を取り違えられるとは。
「すみません。似ている歯の状況なので別の人のと間違えました。
 状況は同じなので治療の仕方の説明内容は変わりません」
・・・それはそうかも知れないけれど、一体どうしたのだろう。
まるでいつもの先生と違う。何だかなあ・・・。


・・・気を取り直して、歯内治療のが終わった親知らずの仮歯は、
しばらく様子見に。ああ、やっと終わると思った途端に、
次々に歯が壊れていく今の状況が情けなくて落ち込んで行く。
よく家電が一つ壊れると次々に壊れると言うが、
耐用年数か疲労骨折か、歯も同じように駄目に。
治療する先生の側もうんざりして来ているのだろうなあ。
治療されている側も、疲れてきているのだもの。
そうやって、写真を取り違えられたショックを抑えた。
でも今日は、それだけでは済まなかった。

虫歯はクスリで治る!―最新歯科治療3Mix-MP法

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歯科衛生士のための歯科用語小辞典―臨床編 (quintessence books)

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仮歯を入れて1時間以上経って、もう大丈夫だろうとランチに。
?! !? 何? 何が起こったのか?
パンを一口噛んだ途端に激痛が走った。
頭の右側が割れたのかと思ったくらい・・・。
一瞬この痛みは錯覚かと思いたかったくらい。
もう一口噛んでみた。顎と首が緊張し痙攣したような痛み。
間違いない、強烈な咀嚼痛。


明らかに噛み合わせがおかしい。きっと高かったのに調整段階でわからなかった。
その結果、顎に衝撃が来ているのに違いない。
それにしても噛まないでいる時は何ともないのに、
ちょっと咀嚼しただけでこれか? あんまりじゃないのか?
経験したことのないような痛みに動揺。
抜歯後のドライソケットの時は常時痛かったのでそれよりはまし?
いや、比較の問題じゃない。これじゃ何も食べられない。


受付に連絡するも主治医は既にいなかった。お願いして急患扱いで、
別の先生に診てもらう。先生方は慣れているのだろう。
「仮歯を入れるまで噛む時に圧力が掛かっていないので、
 入れた後、痛みが出ることがあります。
 少し高いかもしれませんから、診てみましょう」
圧が掛かる云々よりも、痛みが出る可能性があるという説明が
前もって欲しかったな。でも、これほどの咀嚼痛とは・・・?


主治医と異なり、この先生は防護眼鏡もしっかりとしたまま、
接着した仮歯を外すことなく噛み合わせを見て削っていく。
何回にも小分けに慎重に、少しずつ。
削られている本人には沢山削られているように感じるけれど、
口の中の感覚は鋭いので、実際には微々たる厚みを削っているのだろう。
「接着時のセメントの乾き具合もあるかもしれないし、
 神経を取っていても歯茎に圧が掛かる事もあるし」
そういう問題ではないと思う。・・・明らかに。
「痛みが出ているので右奥で噛むのを避けて、
 なるべく柔らかいものを噛むように。徐々に慣らしていって下さい」


全くね、そういう説明も何もないまま、
今日はそそくさと主治医、帰って行った。
あのフィルム間違い、先生も動揺して「しまった」と思って、
なるべく早く処置してその場を離れたかったのか。
噛み合わせの微妙な高さ、削り残し。
口腔内の違和感・体全体の骨が歪んだかのような、
眩暈のするような痛みから解放されたが、
帰宅後咀嚼痛はまだ残っていた。


翌朝も残っていたが、遥かに軽い。
良かった、何とかやって行けそう。
とりあえず、主治医に1週間後見てもらえるよう連絡。
そう、来院する日が限られているのが問題。
でも、余り眼鏡を掛けない、優しい落ち着いた主治医が好きなだけに、
今回の出来事はショック。かなりショック。
フィルムの取り違えと同時にかなりショック。
ずっと見て貰ってきた安心・信頼感が無ければ、
もっとプッツン来ていたかも、私。


歯の悩みは小学生からずっとだけれど、
更年期の様々な「わずらい」と同時に、老化していく自分を実感させる、
このどうしようもない、「今までの自分」から「これからの自分」への
欠落感だけがのさばる体の状態に、どれほど耐えられるか、
(要は気にせずに受け入れられるか)根比べのような気がする。
綺麗になりたいとか若返りたい以前の問題。
通常に機能すること。機能する体を所有していること。


自分の健康は人とは違うけれど、食べたり噛んだり齧ったり、
息をするのと同じように当たり前の日常生活が、
強烈な痛みと共に損なわれると、人生の亀裂同様、
落ち込み感が切実になる。特に嫌な事は、
美味しいもので憂さ晴らしするタイプの人間にとっては、
噛み締められない飲み込めない。これはご法度。


そう、自分の感情も周りの状況も呑み込めないのはご法度。
「きわどいこと」っだったと思えるだけに、
割り切れないまま、苛ついたまま、動揺したまま、
何もかもが通り過ぎていく、流されていく、
何も無かったことにされる。してしまう。
それはご法度。許されない。
そんな思いがぐるぐると渦を巻く、暑い暑い日。

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