Festina Lente2

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50年前の雛人形

娘が生まれたというのに、我が家では正式のお雛様ではなく、
小さなお雛様を飾っていた。
オルゴール付きのガラスケースに入った男雛女雛と三人官女
左大臣右大臣、左近の桜に右近の橘、ボンボンりに明かりが入る、
省略化されたお雛様を飾ってきた。


社宅では飾る所も無いからと、家人の実家からも何も貰わず、
娘のお雛様はそれでやってきたが、実は実家には私のお雛様がある。
50年前、両親が揃えてくれた豪華7段飾りのお雛様だ。
結婚前、とうに飾る習慣も無くなってしまい、
最後に飾ったのは20代だったか30代だったか。
世間の基準からいうと、独身貴族という行き遅れとの冷たい目、
今更お雛様ではあるまいと天袋に仕舞い込んだままだったのだが、
娘も10歳。本当のお雛様を飾って見せてやりたいと、
物置と化している実家の上段、床の間を片付けて、飾りつけ。


昨日から家人にも娘にも手伝って貰い段組を組み立てて、
ワークショップを終えた私を拾ってもらい実家へ、
3人で飾りつけた。少なくとも20年近いブランク。
仕舞い込んだまま、再び包みを紐解き、
「かしら」を本体に据え、冠を飾り、扇を持たせ、
そうやって一つ一つ丁寧に飾り付けていく。


やや色褪せているものの、予想を遥かに上回る豪華な佇まい。
私が幼少時から見慣れていた景色と少しも変わらない。
娘はそれほど感動が無いのか、飾るお道具類の多さに唖然としたのか。
おすべらかしの髪、色白の肌、きらびやかな衣装、
塗りもののお道具類、娘の好きな百人一首の時代から抜け出てきた、
古風で雅な世界。格調高い古(いにしえ)からの息吹。
いつからかたった一人で飾りつけ、たった一人で仕舞い込んでいたお雛様を、
家族3人で、実家の床の間に飾る。


生きていればこんな日も来るもんだ、なんて
ちょっとセンチメンタルになった夜。

もりのひなまつり (こどものとも傑作集)

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りかさん

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