Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ハプスブルグ展

更新が滞っていますが、記事はたんとためてあります。
そのうち、どっと更新するかもしれません。
3月末までは諦めないつもりです。
せっかく1600余りの記事を書いてきましたから。
毎日書くことが目標でしたが、とりあえずしばらくは、
文章記録として追記して書く予定。

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何故か写真を貼り付けると上手くいかないのですが・・・。


小春日和ならいざしらず、
小雨降る寒い中80分待ちの看板。
泣きたいような気持ちになったけれど、ここまで来たら帰れない。
この日入場者は20万人目を記録した。幸運なその人は、
京都国立博物館から、ディエゴ・ベラスケス
「白衣の王女マルガリータテレサ」の額絵と図録頂いたそう。
羨ましい。雨の中、立ちん坊した私たちとしては。

ベラスケスの十字の謎

ベラスケスの十字の謎


来よう来ようと思っていながら、
なかなか京都まで来る元気がなく過ごしたツケは大きかった。
おまけに、朝一番で行って見てからランチにしようと言っても、
動かない家族。独身時代は朝一で出かけて行って、
美術館や博物館を二つ掛け持ちで観るのは珍しくなかった。
大阪市内や奈良・京都に時間を掛けて出かけていくとなれば、
そうしないと勿体無い気持ちが大きかった)
家族連れともなるとそうも行かない。

それにしても、今日の寒い寒い雨の1時間半は消耗した。
実質待ち時間はもう少し短かったとは思うけれど、
来てしまったからには戻れない。
来週の日曜日はもう閉幕。金曜日は8時までやっていると言われても、
仕事が終わって見られる人は、近場にいる人だけだ。
入場制限のかかった長蛇の列を耐えて入れば、館内は結構空き空き。
雨なんだからもう少し詰めて入れてよねと、腹立たしかった。


ウィーンは3度? いや、4度。ブダペストも2度訪れている。
中欧は新婚旅行の思い出の土地。歴史大好きの人間にとって、
ハプスブルグ家の壮大な物語は魅力的で、わくわくすることこの上ない。
何しろ思春期を有名な漫画『ベルサイユのバラ』で育った世代。
長じてからは『エリザベート』も読んでいる。
高校時代、世界史の先生は話術が巧みで第1次世界大戦のきっかけ、
長生きをした最後の皇帝を待ち受けていた過酷な試練、
フランツ・ヨーゼフのロマンチックな物語と、
残酷な現実、歴史の側面を話してくれた。

エリザベート 愛と死の輪舞 (角川文庫)

エリザベート 愛と死の輪舞 (角川文庫)


原因と結果が複雑に絡み合う歴史の授業。それは、自分の国の、
また、見知らぬ国の壮大なロマン。物語の世界。
もしかしたら・・・という別の真実が隠されていたかも知れない、
事実は真実は一体なんだったのだろうと虚しくなるような、
金銀宝石、宝の山の玉座の中に抜け殻が存在している、
領土・版図拡大の野望の末は血族結婚で滅びていく青い血の人々。
求婚され后妃の座に着くも自由を失い、逃げ回っていた美しい人。
決して幸福だけが約束された訳ではなかった、名家の血を引くという人生。


ハプスブルグ・イエローの欧州各地の建築物を見たり、
旅行の合間合間に思い出す世界史裏話を紐解いたり、
遺伝や、「怖い絵」で読み解く、様々な楽しみ方が出来る
絵画美術の世界に「萌えー」の気持ちを抱いているかーちゃんだったが、
やや嬉しがりとも言える知的好奇心をもってしても、
歴史を学んでいない娘の「こんなの面白くなーい」と拗ねるのを、
上手くなだめることが出来ない。最初に京都までやって来て
次にランチで宥めておいて、本命、絵画鑑賞となったわけだが、
裏目に出て寒い小雨の中80分待ち。THEハプスブルグまでの道のりは遠い。

探究この世界 2010年2-3月 (NHK知る楽/月)

探究この世界 2010年2-3月 (NHK知る楽/月)


それでも、エリザベートことシシィの姿は麗しかった。
目が笑っていない怖い絵と言われながらも、
やはり、孤独なまでに美しい姿に心惹かれるものがあった。


そして、お見合い写真の代わりに描かれた肖像画
マルガリータテレサは愛らしかった。
ベラスケスは宮廷画家の仕事に忙殺され、本当に命を落としてしまったが、
マルガリータも長生きは出来なかった。結婚生活は幸せらしかったが。
偉大なるマリア・テレジアは予想外のかわいらしさと聡明さで光り輝いていた。
世界史のテストに出た、オーストリア継承戦争が生み出した名君の絵姿に、
ほほえましい気持ちに慣れるのは、自分の年齢のせい?
11歳の若さと気品は21世紀も衰えることが無い。

ウィーン美術史美術館は、何度見ても素晴らしい場所だ。
素晴らしすぎて、絵が多すぎて・・・そう、ヨーロッパの美術館の絵は、
天井から床までと言っていいくらい点数が多すぎて、
頭の中が走馬灯のようにくるくるとめまぐるしく回る。
それに比べると、今回の美術展は思っていたよりも点数は少なかった。
同僚は、何故あんなに沢山展示しているんだとぼやいていたけれど。


デューラークラナッハは、見るたびに気持ちが引き締まる。
やや硬い描線に抑制の効いた緻密で静かな情熱。
嫣然と微笑むその手にはヨハネの首。
事が為された後のドラマの静かな余韻。
女の子の格好をさせられて成長を期待された皇太子。
沢山の魔よけ、鈴、白いドレス。青年になる事のなかった世継ぎ。

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

飾って眺めるだけのものなのか、実用品なのか、様々な工芸品。
その膨大な宝物のほんの一部だけが展示されている。
その虚無にすとんと落ちていくような錯覚、
実は鑑賞中は期待したような盛り上がりもなく、
鑑賞エネルギーを雨の中の立ちん棒に取られ、
頭の中で練り上げた夢想にも似た感動の名残、
外に出てみれば、雨の夕暮れ。

ランチのスペイン料理のバイキングは、
胃の腑から跡形もなく消え、何処へ消えてしまったのか。
ハプスブルク展からの帰り道、京阪の駅に歩くまでに、
みたらし団子と玉露で体と胃袋を暖めた。
寒い寒い雨の京都、THE ハプスブルグ。
どの人もどの人も、みんな我慢強く並んで観た展覧会。

ハプスブルグ 歴史物語 (NHKブックス)

ハプスブルグ 歴史物語 (NHKブックス)

ハプスブルク家 (図解雑学)

ハプスブルク家 (図解雑学)