Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

筍のお裾分け

筍のお裾分けと言うと、何だかほっこりした気分になるが、
配って歩いているこちらとしては、もっと殺伐としたものがある。
実家は何しろ田舎の都会、都会の田舎。ここに住んでいると、
家のメンテナンスも大変だ。というのは、隣家が家を建てず、
畑をほったらかしにしてうん十年、畑はとうとうその奥の、
よりにもよって竹林に侵食されてしまった。


田舎で跡継ぎがいないのはいずこも同じの後継者問題だが、
持っている田畑(でんぱた)の手入れどころか、
竹林だって持ち主は何もしないものだから、隣近所にいる人間にとっては、
筍が食べられるね、なんていうほのぼのとした話題ではなく、
それこそ春は侵略戦争との戦い、見つけなければ、
家の庭どころか、縁の下なんかに来たらとんでもないの世界。


見つけては倒し、見つけては倒し、春の訪れと共に
草むらの中に匍匐前進してくる自然の摂理に立ち向かって、
あたら若い命を勿体無いと思いつつ、かわいい筍を倒す。
足で倒し、鍬で掘り起こし、柔らかい穂先を潰さぬよう、
ダンベル代わりになるかと思えるほどの筍をぶら下げ・・・。
この数日朝っぱらから10本余り、袋に詰めて筍宅配ならぬ、
職場でお裾分けの毎日。むけば小さくなる筍ですしね。
食べずに捨てておけばいつかは土に還るのだろうけれど、
自然の恵みを捨て置くのは余りにも罰当たり。


というわけで、老父と共に長靴を履き、鍬を持ち、
今年はいつも以上に雨が多く、「雨後の筍」のお隣をのし歩き、
我が家に押し寄せてくる筍軍団と戦っている。
ついついサボると、庭のコンクリート塀を乗り越えて、
無花果の木を倒さんばかりの勢いで、にょっきり生えて来た。
ああ、侵略されてしまった庭の一角。


そんなこんなで、世間様ではありがたい旬の味、
筍は我が家では毎日食べる春の常備菜
何とも贅沢な朝掘り筍、筍の刺身さえできるというのに、
そういう優雅な朝食を楽しむ暇さえ無いどたばた生活。
春が来れば天を目指す志し高き筍の命を、
バッサリ頂くのは申し訳ないような気がしつつも、
情にほだされると、竹林はどんどん「のしてくる」。


皆様、春の朝は農家でなくても戦争です。
敵と戦うが如く、地面を眺め回し、油断すると30センチ以上も!
大きくなりすぎた筍よりは、朝掘りですもの、柔らかいものをお届けしたい。
筍ご飯、筍の煮物、焼き物、炒め物、カレーもお澄ましも何でもござれ。
糠と鷹の爪で美味しく下茹で。手間はかかるけれど、新鮮でいごくない。
こんな素敵な筍を敵に回したくは無いけれど、専守防衛とはこういうもの。
にわか筍業者は庭と自宅を守るために、荒れ地の筍を倒しています。
竹林と畑の所有者、どうかお手入れして下さい・・・。(苦笑)