Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

雨の大阪倶楽部

滅多に入ることのできない大阪倶楽部
雨ではあるが、前回よりも詳しくこの建物の話を聞き、
橋の話と同時に、戦前の大阪財界人の心意気、男気、
新もの好きの話を聞かせて頂いた。
倶楽部会員募集とのことだが、やんぬるかな、会員は男性陣。
それはそれで、前回と違って誰が管理しているのか、
飾ってある絵もそれぞれ夏の装いになっていた。
せっかくだから少しばかりご紹介を。


手塚治虫の話が中心だった、久坂部羊氏の講演時もこの部屋だった。
そのときの記事はこちら→
講座の会場となった部屋の天井。なかなかよろしいでしょ。
材料もデザインも凝っていて、今もなお健在。
ちなみに空襲時は鉄のシャッターを下ろしていたので、
窓ガラスが破損することもなく、熱風が吹き込んで、
部屋の内部を損傷することも無く、今に至る貴重な建築物、
大阪倶楽部のビルは貴重な歴史の証人なのだ。


書もあれば、絵も写真もある。
毎日の心の鍛錬に刻む書か、心の安らぎに眺める絵か。
倶楽部員の腕を競った写真が廊下に展示されていて、
まるで学校か何かの発表展示会場のような趣。


涼しげな景色の向こうには、この倶楽部を守ってきた人々の、
モガやモボで青春を過ごした人の、あるいは戦後から大阪万博にかけて、
関西の復興をひっぱて来た財界人の夢や希望がうっすらと漂う、
そんな風情を感じさせる静かな部屋、佇まい。
100歳を超えてかくしゃくとしてキューをさばく方もいらっしゃるそう。
60代はここでは洟垂れ小僧なのだと、解説者はおっしゃった。


シンプルですっきりしたデザインの明かり、
もの思わせぶりな光が天井に揺れる。
白い壁、ちょっとした細工、欧風の洒落たスタイル、
小粋な物言わぬ薀蓄があちらこちらに垣間見える。



ちょっとした調度品、布の柄、あちらこちらに置かれた品々、
バーの雰囲気、玉突き場、囲碁将棋、庶民には一寸手が出ない、
結構いいお値段のランチのお品書き。
図書室揃えられた贅沢な雑誌の類。


名残は惜しいが雨の夜、空腹も抑えがたい。
帰ってやらねばならぬ仕事も待っている。
あちらこちらを眺めつつ、今日の日はさようなら。
こういう建物で気の利いたお話を聞くのは、楽しい。
こういう気分転換が、ほっとできるのは年のせい、それとも・・・?


今風モダンな建物よりも、柔らかい明かり、木の床、
小ぶりでありながら天井の高い空間、またいつか会いに来るよ。
ここに来て、私の知らない時間を懐かしみにやってくるよ。