Festina Lente2

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雨降り続く夜

各地に大雨警報が出ている中、眠れないほどの雨の音。
そして、雷。雷雨という感じではない。
思い出したような雷の音。


梅雨明けにはまだ程遠い。
かなり毎日がジケジケと湿気じみてきた。
本日は懇談。今までの先生とは異なり、成績表を見せてはくれない。
終業式の日に、新鮮な気持ちで成績表を見て
親子であれこれ語って欲しいとのこと。
若いのにしっかりした先生である。
そんなことを初めて言われたので、5年生の懇談はなかなかに新鮮だ。


雨、小雨、大雨、雨、一日中降ったりやんだり。
雨の中を懇談に行き帰って来る。
家の中も、小雨が降ったかのような気配。
家の中がしけってしけってしょうがない。
体の中にもカビが生えてしまうのではないかと。
嗅覚が戻ってきた毎日は、いい匂いも香りも嗅ぎ分けるが、
同時に嫌な匂いも、顔をしかめたくなるような臭いも嗅ぎ分ける。

匂いの人類学 鼻は知っている

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脳のなかの匂い地図 (PHPサイエンス・ワールド新書)

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雨の中に咲くくちなしの香り、四季咲きのバラ、熟れた梅の実、
到来物のさくらんぼ、蛙のイラストが付ドイツ製のエコ洗剤と柔軟剤。
今まで忘れていた運動後の汗の臭い。
色んな臭いが家の中にこもっているはずなのに、
しばらくすると何もわからなくなってしまう。
いつもの家の中に何もかも溶け込んで、何もわからなくなる。


何が正しい匂いで、何が気持ちのいい香りなのか、
洗剤、柔軟材、食材までもが、生活を演出する香りによって、
作り変えられ、季節感を演出し、それが生活を守ることなのか、
感覚を狂わせることなのか、判断の付かないまま溢れ返る匂い。
雨の音は、そんな人工的な感覚を洗い流そうと選ばかりに、
強く強く叩きつけて降ってくる。


梅雨の雨というものは、もっと穏やかに降ると思っていたのに、
まるで夕立か熱帯のスコールのように、夜を徹して降り続く雨。
これが日本の梅雨だったのかと、また感覚がずれていく。
地球温暖化の中で、まるで自分が熱帯に過ごすかのように、
自分の内部をどこかを洗い流されていくような、
清められているのか侵食されているのか、
わからないほどの雨の音を聞きながら。


匂いも音も全ての感覚が、自分を通り過ぎて、
自分の記憶に無いものを植え付けた、
人工的な生活を、押し流していく。
そして生活の中で、気に染まぬ香りに彩られ、
意識せずとも良いように自分を誤魔化しながら、
生活の臭いを忘れて、押し殺して、匂いをまとって、
香りと思って、生活していく、そんな日々。
雨に流され、雨に打たれ、忘れたいような毎日。


雨の音に目覚め、眠れぬ夜。
雨の音に心惹かれつつも、苛立つ夜。

雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

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雨の名前

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