Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

煙草嫌悪の連鎖 

運転しながら、ラジオのニュースで聞いた。
どこぞの大学薬学部では喫煙者は入学できないのだそうだ。
喫煙者は11月の推薦入試の受験お断りだという。
私の個人的な意見としては、結構なことだと思う。
大体にして、受験生は原則未成年、煙草なんぞ吸う必要は無い。
入学前から大人の世界に憧れて、盗みタバコでニコチンまみれ。
今の時代にその手の悪さで憂さ晴らしするやからもウザい。
何よりも目や舌や匂いの感覚が麻痺した状態で、薬品を扱うなぞ、
薬学だの医学だのにかかわって欲しくない。
それぐらいタバコは嫌いだ。


煙草に対する嫌悪。
燻らす紫煙は絵になるが、健康にはよろしくない。
というか、すれ違っただけでも煙草の匂いはわかる。
話すと煙草の息が漂ってくる。
その部屋の空気が汚れているのか、煙草を吸いながら書いたのか、
渡された書類が煙草臭いとぞっとする。思わず投げ捨てたくなるくらい。


しかし、ふと気付く。
父も家人もタバコのみ。もっとも家人には禁煙してもらったが、
老父は今更タバコはやめられないだろう。
昨年緊急入院時には、さすがに禁煙したが、元の木阿弥。
どこ吹く風で、今もタバコと酒はやめられないままの通院。
しかし、老父に関しては忌々しいと思うものの、嫌悪とまでは至らない。
一体いつから、煙草にここまでの嫌悪感を抱くようになったのか。

脳内ドーパミンが決め手「禁煙脳」のつくり方 (青春新書INTELLIGENCE)

脳内ドーパミンが決め手「禁煙脳」のつくり方 (青春新書INTELLIGENCE)



今の職場に転勤してきた時、コンピューターの前で煙草、
機械が灰まみれ、この時代に禁煙分煙の出来ていない職場に驚いた。
当然、転勤一日目から掃除ばかりが続く部屋の中。
機械周りだけでも禁煙、分煙の協力を求めた。
ただでさえ望まぬ転勤と、自分も含め家族の入退院が続く日々、
酸素テントの前で行ったり来たりを眺めてきた日々、
薬剤と病院の匂いに慣れないまま、職場の煙草には辟易とした。
なんて未開地のような道徳観念・衛生観念の無い職場と嫌悪した。
管理職は無駄話はしても、煙草には無関心だった。


当時から、煙草を吸う人間は休憩時間をたむろして、
自分たちだけで情報交換。煙に巻かれてしまうのはこちら。
密談室代わりの煙草部屋。名ばかりの分煙場所。
そこから漏れ聞こえ、飛び交う噂にほとほと疲れた。
堂々と、もしくは隠れ煙草で、空き時間をやたら作って
あちらこちらの物陰で、一服する人間に嫌悪した。
休憩と称して、外まで出て行き吸わなければならない人間、
吸われるのが嫌な人間が居ても、吸う人間の権利を主張する連中に嫌悪した。


仕事中だけでも禁煙したからと、煙草の代わりにガムを噛み、
そのガムを紙に包まずゴミ箱に捨てる。
煙草が吸えることを条件に、宴会の場所を探す。
私たちは煙草を吸うからと、同席の人間に断りも居れず堂々吸う。
吸う権利を主張する人間が余りにも多いこの職場に苛立った。
それまでの職場では、吸う事を主張している人はもはや少なかった。
公共の場で吸えない時代、今や、駅のホームでも喫煙場所が無い時代。
そこで、吸わなければやっていられないと、仕事の合間に席を立ち、
仕事にならないのではないかと思えるくらい、席を外す人間に嫌悪した。


煙草のみは自分の灰皿を始末しても、ゴミ箱の始末はしない。
煙草が捨てられたゴミ箱のごみを、まとめて捨てているのを見たことが無い。
職場のごみも、誰かが捨てるのだろうとどこ吹く風。
ゴミを率先してまとめて捨てる人間を見たことが無い。
煙草を捨てる人間は、ゴミ捨てをしない。
その人間に対する嫌悪がまたしても渦巻く。
嫌悪の連鎖。環境から職場、職場から個人まで、嫌悪は止まず。


嫌悪は、誰に向けるか。
普通は、身近なものに強く感じるはずの、嫌悪の対象。
私の場合、身贔屓の老父をひとまず置いて、職場が嫌悪の対象だ。
一日24時間の大半を過ごす職場。
人生こんな所で終わるのかと落ち込むことの多い職場、
その嫌悪の連鎖が職場環境も煙草にも及ぶ。
極端から極端に及ぶ。
扱うもの、全て。やにに染まっていくような、嫌悪感。
煙草を吸う人、吸わない顔をして隠れ煙草をしている人。
全てに嫌悪感を抱いてしまう。


人を見て病を診ず? 病を診て人を見ず?
煙草憎けりゃ、吸う人まで憎い。
煙草に関するものが何もかも疎ましいと思える時、
煙草を吸う人とずっと仕事をしなければならない時。
その苛立ちはどこから来る?
・・・それは病的だぞ心の何処かで警告音。


月曜の朝早くから、ラジオから聞こえてきた話題。
煙草の話。10月から煙草が値上がりだという。
それでいいと思う。
自動販売機で買えない子供のために、
「家の中で吸うようにしろ」という親のいる時代。
煙草は家計を圧迫。健康も圧迫。認識してもらうしかない。
煙草で入学できない受験できない大学がある。
それもいい。

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

煙草おもしろ意外史 (文春新書)

煙草おもしろ意外史 (文春新書)