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林檎アザミの日

今日は何の日、林檎アザミの日。何だそれ?
大体林檎アザミって、別々のものが二つくっついている。
アップルミントがあるように、葉っぱが林檎の香りなのだろう。
まさか、林檎の実ほどもある、
でかい薊(アザミ)の花が咲くわけではないだろう。
林檎アザミの語感に引かれ、1年の花の辞典なるものを見ると、
もっと不思議な名前が書かれていた。


10月28日の花。紫ルーシャンの日。紫と付くからには、
別の色の花もあるということか。
それにしてもルーシャンって何?
少し調べて見てもルーシャンの意味はわからない。
紫とわざわざ銘打った意味がわからない。
葉っぱだけではなく、花にも林檎の香りがあるというが・・・。


薊の花に似ていないでもない。確かに似ている。
しかし、棘は無いそう。
・・・棘の無い薊なんて、薊とはいえないなあ・・・。
そんな風に感じてしまう。
秋から冬にかけて咲く花。寒さに向かって、
自然に咲く花が減りつつあるこの季節、ある意味貴重ではある。


それにしても、何だ、この小難しい名前は。
キク科・ケントラタルム属。別名、菊薊。
林檎だと名乗っていたら、今度は菊。花びらの形のせいか。
専門用語、分類名というのは、まこといかめしい。
ケントラタルム属、そりゃいったいどういうお仲間のこと?
学名、学術名はラテン語だろうから、私の全く及ばぬ世界。
菊だの薊だのはまずまず身近な花といっても差し支えないのに、
紫ルーシャンというこまっしゃくれた花の名の向こうに、
訳のわからない世界が広がっているらしい。


林檎の香りのする棘の無い薊。
あちらこちらの写真を見てみると、確かに薊だと思うものもあれば、
菊の品種の一つかと思うものもあり、
全く別の見知らぬ花としか思えないものも。
そして、この時期に咲くのに寒さには弱い亜熱帯の花だという。


林檎は決して暖かい地方の植物ではないのだが。
林檎の名を抱いていても、それはそれなのだな。
こまっしゃくれた初対面の花に、それどころか、
きっとどこかで見ているだろうけれど、今初めて意識した名に、
どんな風に対応したらいいのかわからず、途方に暮れてしまう。
たまたま知っただけの今日の花だったのに。

秋を楽しむ花ごよみ (コロナ・ブックス)

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冬を楽しむ花ごよみ (コロナ・ブックス)

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そう、こんな風にたまたま出合っただけ。
特に深い意味は無くても、目に付いただけ。
今日はご縁があっただけ。ただそれだけなのに、
そのまま見過ごすこともできず、気になってしまい、
だからといって、傍にいても何もすることができず、
傍観者になるだけしかできないのに、
おせっかいなほどに、傍にまとわり付くように、
その日、その時、その場にいる。
そういう存在に出会ったことは無いか?


さらりと「袖触れ合うも他生の縁」と、すれ違うことができず、
妙に後追いする幼児の様に、時にはストーカーめいた執念深さのように、
興味本位といえばそれまで、気になって仕方がないツボに嵌まった、
脳内メロディのように、繰り返ししつこく頭の片隅にある、
そんな存在を持て余したことは無いか。


相手はそれ以上でもなく、それ以下でもないのに、
何か偶然、特別の存在として際立ったことが嬉しいのか、何なのか。
その一瞬のひらめき、煌めき、残響、そういうものにこだわって、
既にそれは形を成さない曖昧模糊としたもの、
ドップラー効果の最たるもの、サイレンのように、
近付いてきた時にはきになって仕方がない存在だけれど、
一瞬にしてすれ違うと、違和感を持つ何ものでもない遠ざかる存在。
離れていくだけの存在なのに、しつこいほどにその場にあろうとする、
そういう、なんだかねっとり持ったりとした情念に似た、
感情? 感覚? 存在に、少々疲れたりする、
そういう目にあったことはないか?


物珍しさ、どこかで見たような懐かしさ、デ・ジャ・ブ。
その頼りないものにすがりつくように振り払っても振り払っても、
いつの間にか擦り寄ってくる。
そういうものに出合って、似て非なるもの、
自分が求めているもの、知っているものと似て非なるもの、
その違和感、その場違いさに愕然とすることは無いか?


紫ルーシャンに出会い、林檎薊の別名に驚き、
菊薊ともう言うと知らされ、どう受け止めていいのか、
わからないまま、突然やって来た「知り合い」の振りをするような、
そんな存在に戸惑った今日。
10月28日の花。花暦では「紫ルーシャンの日」なのだそう。
花言葉は「満足」。
一体誰の満足なのか。何の満足なのか。


1人身勝手な見知らぬ偏執者に突き止められ、
居心地が悪くなってしまったような、そんな気持ちになってしまった。
「満足」には程遠い、私の気持ち。この感覚。
何となく、苦手な「思い込み」の垣根の向こうに非難したい。
少し距離を置いていたい。そういうものに出会ってしまった。
そんな気持ちにさせられた、今日の花。紫ルーシャン。

大江戸仙花暦 (講談社文庫)

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イラスト全集 花ごよみ

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