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『ちはやふる』最新刊

娘が百人一首を意識する季節がやって来た。
しかし、かつてのように無欲に物事に取り組むのではなく、
あれこれと邪念が入って、成長するということは、
あれもこれもやりたいことに苛まれつつ、
自分の優先順位を決めてやきもき苛立ち、消耗し、
気がつけば本意ではない所に流されて、茫然自失はよくあること。


親子で漫画ではあるまいにと、老親からすれば許せぬものらしい。
漫画で育った私は、通勤や通院の車内でもマンガを開けるが、
そのような年甲斐も無い恥ずかしい行為は許せないという世代も。
まあ、開き直っているというか、
時間が優先で、軽く読めるものから読むということか。


しかし、軽く読めるからといって感動しないわけではないし、
その作品のよさを軽く見ているわけではない。
自分が10代の頃、ただの物語読書よりもマンガの影響力は大きかった。
今の子供にとってもそうだろう。自分の知らない世界であれば尚更。
という訳で、本日『ちはやふる 11巻』早速買ってきた。
競技カルタの世界を描いた作品。
ノリもいい、友情・恋愛・親子・師弟関係、色んな人間関係を、
様々な角度から描いてなかなか読み応えがある。


文字で表現するにせよ、漫画で表すにせよ、
主人公がどのように成長していくかということが、
物語の核心であることは重要だが、かつてのように濃い家族、
密接で多様な人間関係の葛藤が苦手な若者社会において、
仲間と共に成長する、自分も他人も巻き込んでみんな一緒に、
それぞれの思いを抱いて、みんなが夢を目標に置き換えて、
具体的に生身の人間として生きていく。
そういう設定、ストーリー展開は貴重だ。

ちはやふる(11) (BE LOVE KC)

ちはやふる(11) (BE LOVE KC)

ちはやふる(10) (BE LOVE KC)

ちはやふる(10) (BE LOVE KC)



超能力を使うわけでもない。
何か奇跡が起こって主人公たちを救うわけではない。
試合だから駆け引きもある、勝ち負けがある。
意気込みの裏には単に「負けたくない」の意地ばかりではない、
自分の後ろに続くものを消してはならない責任、
同じ轍を踏んで失敗することがないよう練習を繰り返し、
夏の暑さも冬の寒さも乗り越えて、年を重ねる。


友が横にいる幸せ、戦う相手はある張り合い、
自分を支えてくれる師の存在、親の有り難さ、
そういうものをひっくるめて描いてくれる漫画、作品を、
娘に読ませたい、私も読みたい。
娘にはこう在って欲しい、こんな仲間を得てほしい、
成長して欲しいという願いを込めて。
自分には、・・・若さから来るエネルギー、
青春再体験のような感覚で。


カルタ競技というものかるた部という存在、
一見マイナーな古典文学の薀蓄と素養を背景に、
これがクラブ活動か、という世界が体験できるのが楽しい。
待ちに待った最新刊がこの年末に出て、・・・
これって来年の名人戦・クイーン戦の前に出版しておきたかった、
そういうことなんだろうなと思いながら。
娘との話の接ぎ穂読書が、自分を思いのほか支えている。
自分自身のツボに見事は待っている。
そんな作品『ちはやふる』。


以下は覚書を兼ねて書いたミニ書評。(頭の訓練かな)
「青春群像となった表紙、色んなキャラが支えるストーリー、
 現実の世界も漫画の部活も、
 こういう熱い思いが溢れているはずなのにと、
 ふと自分を振り返ってしまう(実年齢がこわい)。
 真のプライドの高さが謙虚さに通じるあたり、深く感動。
 この作品は、随所に「決め」の部分があって、心に響く。
 母の締めた帯と恩師の襷に感謝する、
 運命戦を見守り読手として全うしようとする、
 それぞれの立ち位置、角度からの描き方が相変わらず上手い。」

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

ちはやふる (2) (Be・Loveコミックス)

ちはやふる (2) (Be・Loveコミックス)