Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

真昼の同窓会

昼の明るいうちから街中を歩くのに少々の抵抗がある。
大体私が街中をうろうろするのは、通院の行き帰りが殆ど。
後は出張があればこそ・・・。(何だか情け無い)。
それが、こともあろうに13時からランチを兼ねてミニ同窓会。
昼日中に街中に出かけるのは、結構時間の浪費だ。
何故なら昼前から家を空けることになる。この年末に・・・。


みんな仕事があるから仕方が無い、主婦もいるから・・・というが。
実際主婦一人は欠席したが、この年末の忙しい時に
出かける価値があるかどうかと問われたら、私も休むかもしれない。
28日まで出勤で家の中は何も片付いていない。それはみな同じ条件と割り切り、
集まろうという気持ちになった時に腰を上げないと、
何時また会えるかどうかわからない、というのが実際の心持ちだ。

日経ホームマガジン おとなのマナー完璧講座

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私達の会は「いぬめり会」という。百人一首の中にある藤原基俊の和歌、
「契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり」から取った。
「今年も何も無く秋が終わってしまった」というメンバーの集まりだ。
要は地味過ぎたのか要領が悪かったのかはともかくとして、
時流から乗り遅れがちな、主流派ではない、よく言えばアウトロー
悪く言えば箸にも棒にも引っかからない「女の子」だったメンバー。
恋に邁進する勇気もアバンチュールに飛び込む度胸も何も無い、
浮世離れした夢と憧れと霞を食っていたかのような文学部の学生。
世間的に見て晩生だったので、自嘲的に名付けて「いぬめり会」。


そのメンバーも半世紀を生きて、知り合った時よりも倍以上年を取った。
集まるのは冠婚葬祭、それも最近では「葬」ばかりで。
そういう年齢になってしまって、いざ、真昼の明るい時に集まるとなると、
通夜でも葬式でもなくドレスコードも定まらない集まりは、
ファッションに疎い自分にとっては何とも気詰まりな、
どこをどう装っていいのかわからない、そういう昼下がりの外出は御免被りたい、
そんな気持ちにさせられる気後れを含んだ集まりではある。


友達には会いたい。だが自分も含めてお互いの変化を読み取りながら、
微妙に会話の間を保つのに自信が無い、そんなところだろうか。
自分にとっての引け目、それは引け目というものではなく、
ある意味恵まれた部分でもあるので、いっそう気にしてしまう。
呆けたといえどもふた親が存命であったり、別居結婚でも子供も儲け・・・という、
共通の話題をどこに定めたらいいのか、割り切っていればいいのか、
そういう微妙な部分での気後れである。
人生が全てに通っていないのは当たり前と分かっている年齢になっても、
この有様なのだから、我ながら情け無い。


実は参加する前からこのような心持ちであった所に、
店が取れたというぎりぎりの連絡を貰った場所に行ってみれば、当のレストランが見当たらない。
ケータイに連絡をしてみれば、店の名前は合っているものの、
所在ビル名を間違って連絡したとのこと。
もとより土地勘の無いまま遅刻、更に遅刻を重ねて到着。
店の内装も生けられた花も、食事よりも所場代にお金が掛けられている感。


中華と聞いて楽しい雰囲気を期待していたのだが、どうみても、ここは・・・。
魔界への入り口にも等しい、ドレスコードを要求するようなガラスの回廊。
別世界を演出というよりも、何故こんな雰囲気で中華?
御高い場所と洒落た雰囲気に慣れていない庶民の卑しさ。
昼間のランチで大枚を投じるには割に合わない質と量。
確かにフカひれも前菜も丁寧な説明付きでサーブされるけれど、
何だか私が期待する同窓会の雰囲気とは違う・・・。


お腹一杯になるよりも、目で見て食べるフランス料理のような体裁の、
これが中華料理?ともなると、その上品さは物足りなく苛立たしい。
何故、円卓を囲んで賑やかに話をするのでは駄目なのか、
貴族のテーブルのようなお互いに距離を置いた形での座席に、
半ばやけになってワインを取り寄せてしまう。
窓の外の景色ばかりがうららかな春を思わせる青空。

こういうことは前にもあった。あれは卒業旅行の折。
1泊目は安い学生の宿、2泊目は豪奢で洒落た内装のリゾートホテル、
そのギャップもさることながら、せっかくの卒業旅行だから張り込んでという、
その気合と贅沢さ加減に付いていけなかった青二才の私。
その後の海外旅行では必ずドレスアップできるものを携え、
いざという時の装いも考えるようにしてきたのだが・・・。
今回は、連絡をそのまま信じて店も場所も確認せずに、
仕事を終えた翌日、取るものもとりあえず来てしまったのが失敗だった。


さすがにこの食事内容ではみんな物足りなかったのか、
2次会では大きなケーキとポットティーでお腹を満たしていた。
最初からこんな雰囲気であれば・・・と思う私は、我儘?
膝寄せ合って話し込めるような雰囲気ではなく、
まさかどんな話が出るかわからないからこんな奥まった個室に?
心の距離をテーブル席の遠さで実感してしまった後は、
悪酔いしそうで(というほど飲むこともできない昼の席)、
ここまで高級でなくてもいい、リーズナブルでアットホームな所で寛ぎたかったよ。


それは年齢が許さないとでも? たまに会うならこういう非日常的な場所?
いちいちドアを開けてサーブする人間が一人一人の席に配膳する、
そのたびに会話が途切れる、続けて話をすることが出来ない、
こんな場所での同窓会は、今度から絶対やめようよ。
そう言いたかったけれど、言えなかった。
結局、相も変わらず大人気ないんだなあと思われたくなくて。


一人一人の話をじっくり聞けるような、お互いに話題を回せるような、
それとも、私だけが気後れしているのか。
場所にも食事にも雰囲気にも、離れていた距離にも。
そんな思いだけが頭の中を巡って、頭痛ガンガンで帰宅。
寝込むように寝付いてしまった暮れも押し迫った29日の夜。