さよなら、カイエ

寒さが厳しい折、外出はしたくないが勉強会。
義理も責任もあることはあるのだが、最近はよく分からなくなってきた。
係わることが自分にとってどれだけの意味があるのか、必要があるのか。
営利目的ではないボランティアの向こうに、自分は何を求めているのか、
どうにもこうにも訳が分からなくなってきている。
隣の人は「真面目に考えすぎているんじゃないの」と笑うけれど、
人の生き死に、人生に係わることだけに、遊び半分ではなるまいて。

勉強会の帰り道、O型の血液が不足ですの貼り紙。
思わず、春以来の献血。歩くのに足が痛くても、
献血に障りがあるわけでなし。
渡英の縛りが緩くなった今、やっと献血再開叶って･･･。
その、400mlの向こうに透けて見える命を顧みる。

この年明け、明るいニュースばかりで始まっているのではない。
尊敬するブログ仲間のご家族が病気で入院、手術の年明け。
ご回復、快癒をただただ祈るだけしか出来ない。
他人事ではないと、一昨年の老父の緊急入院を思い出す。
輸血で命を取り留めたあの日のことを鮮やかに。

そして、たった一度もコメントすることならず、romだけで、
いつかブログ上で語り合えるまでになりたいものだと思いつつも、
急に更新がなくなり１年ほど経ち、嫌な予感がしていたサイトが、
予感的中、運営者が亡くなっておられたのを知リ･･･。
「会うは別れの始めなり」というけれど、実質、知って間もなくの別れとなった。

どんな風に身罷られたかは知る由も無い。
ただ、学識･感性豊かな世界、余りある才能溢れた世界、
その世界が更新されぬまま凍結されてある、
消去されぬまま残されていることに感謝こそすれ、
ただただ、1年間不安に苛まれつつ更新を待ち続けた日々は、
儚い哀しい結果に終わってしまった。

だが、遺された世界は膨大で奥深く、その人となりを偲びながら、
時間のある時に折々訪ねる隠れ家の如く存在する世界として、
お気に入りの中に留めて置きたい世界だ。
現実の世界では知り合うことも出来ない人とも、
覗き込むことが出来ない心の片鱗にも触れることが出来る、
電脳玉手箱の中の蜘蛛の巣の向こうにある、様々な世界。

その世界の中でも糸を伝わってくる熱い思いや、
興味関心の重なる趣味の世界、映像、色彩、言葉、文学美術。
直接相見（まみ）えることが難しいからこそ、
自分の知りえぬことが余りにも多いからこそ、
身近にあるバーチャルなな世界の利点に与って、有り難き日々。
その豊かな世界に触れて、自分の卑小な思いや浅学非才の日々を、
少しでも変えて行きたいと憧れていたのだが、
そのサイトの過去を、アーカイブを行きつ戻りつすることとなった。

自分でできる夢分析

フランス女流ピアニストによるフォーレ歴史的録音集　〜孤独な作曲者の夢想〜

かつてネットの世界を恐る恐る覗いていた頃、
ハリポタの2次サイトの華やかな面白さにあっけに取られた頃、
家族の病気によって医療サイト入り浸りになった頃、
転勤や引っ越しが相次ぎ、自分自身の一里塚を築くために、
自分も文章を書いてみようかと、始めたFestina　Lente。
でも、ここにどんな人が来るのか殆ど知ることは出来ない。

毎日訪れてくれている2、300人の人の向こうに、
果たしてどんな世界が広がっているのか。
（知ったからとて、どうなるものでも無いのだが）
検索サイトで、何かの言葉で繋がっているだけなのか、
何か私の書き紡ぐ言葉の向こうに、等しく繋がる思いがあるのか、
似通った、それとも相反発する、かりそめの通りすがりの、
どんなバーチャルな人間関係が織り込まれているのか分からぬまま、
書き散らしてきたことに、何の意味があるのか、
勉強会同様、仕事やボランティアの境目に解けぬ縺れが生じてきて、
心身ともに気だるくなりつつある今、
バーチャルなお付き合いの有り難さと儚さに、心が痛い。

サイトのお休み、休憩、中止ではなく、
志半ばで、望む形でも何でもなく、
コールドスリープに入ったように、美しく凍結されて、
アーカイブで存在する、その世界に、
私はこれから何度訪れることだろうか。
その夢のように豊かな世界に。
いまだ別れを告げることが出来ず、別れることも出来ず、
忘れることも出来ず、ただただ残念に思うばかり。
ひたすら惜しまれるばかり。

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ベックリーン“死の島”―自己の英雄視と西洋文化の最後の調べ (作品とコンテクスト)

サイレンス、ナイト&ドリームス