手術当日

病院に来て見ると、とっくに手術室に入ったという。
あれれ？　機能までは手術時間は未定だった。
おそらく最後になるだろうと、
担当医は早くても17時ぐらいに呼ばれるだろうとも。
ただでさえ大きな病院では立て込んでいる手術の予定。
何時入れられるか分からないと。
それはそうだろう、こちらから口を出せることではない。

手術室の準備、それでなくても整形外科の手術、
工場のようなクリーンな環境、異物混入など無いように、
感染症の危険に晒されないよう、
（家人の場合最もこれを警戒したのだが）
手術は行われなくてはならない。
人の配置、機材の準備、手術一つに係わる
私たちの目に触れることの無い準備のことを想像すると、
医療の現場の大変さには。

職場で休みを貰い、早めに引き上げて病院に来て見れば、
15時から手術室に入っているという？　
いつの間にそんなことに？　如何して何の連絡も無しに？
既に手術が始まって1時間ほど経っていることになる。
術前の検査で何か見つかって早めに行ったほうが良くなったのか、
どんな理由があったのか、単純に手術室の都合が付いたのか、
まったく何も分からない。何も知らされてはいない。

取るものもとりあえず、手術室前の家族待合室に急ぐ。
既に何組もの家族がそこに待機している。
そう、大病院では複数の手術が同時進行で行われている。
軽い小さな物もあれば、大掛かりなものも。
看護師と共に自分で歩いて手術室に行く人もあれば、
車椅子で行く人、ストレッチャーに乗せられてライン確保で、
点滴台と共に入っていく人、様々だ。

家人も傍に誰もいないまま、看護師と共に手術室へ入っていったのかと思うと、
少し切ない。腰椎麻酔のため手術は意識があるはずだ･･･。
いざとなると怖がりの家人のことが心配だ。
決して寛げる雰囲気ではない家族待合室、壁の絵画も慰めにはならない。
廊下一つ挟んだガラスのドア向こうの動向が、ひたすら気になる。
出入りする人の動きが気になる。

医師、研修医、ピンクの服は産科の看護師、何故か背広上下の人。
一般人立ち入り禁止の向こうには、どんな世界が待っているのか。
名前が呼ばれ、待っていた家族が次々に出て行くのだが、
こちらは何時呼ばれることになるんだろうか。
救急病院の先生は、γ−ネイル法だからまあ1時間半ぐらいかなと。
すると後小一時間もすれば終わるのだろうか。
気ばかり揉んでも何もなら無いのだが、心配でならない。
何故そんなに手術が早くなったんだろう。
どんな理由があったんだろう。

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まるでドラマの世界のよう、
待っても待っても手術室のドアが開かない。
最初から2時間ですよ、3時間ですよといわれていればともかく、
何の情報もなく待たされている私は、不安でいっぱい。
もしかして、トイレに行っている間に病室に運ばれたかもと
見に行ってみたり、自販機で暖かいものを飲んで気を取り直し、
用意した本を開いてみるものの、なかなか頭に入らない。
とうとう、私ともう一人の男性のみが家族待合室に取り残された。

待つこと3時間余り、もう大阪から東京に行っちゃってるよ、
どうなっているんだろう、何かあったのか、無かったのか、
最初聞いていた「金属を入れて繋ぐ基本的な簡単な手術」ではなく、
何か問題があったのだろうか？
昨日も痛くて動けないというのに、
看護師は入浴して綺麗にしましょうとやって来た。
剃毛と清拭だけにお願いしたが、動けぬ家人の痛みにも拘らず
指示が出されていた昨日の今日、
腰椎麻酔の手術はどうなっていることか･･･。

結果、手術時間3時間半。聞いていた時間の倍以上かかって終了。
滞りなく終わったということで、レントゲン写真とリハビリ計画表を渡される。
手術はどうやら眠っている間に終わっているようで、
本人は痛みも感じずに済んでしまったよう。
待った長い時間、医師の顔を見れば全く質問することも出来ずに、
ほっとして何もかも頭から飛んでしまった。
看護師と共に病室に一緒に戻る。

後から聞けば結構出血があったよう。男性は女性に比べて、
痛みにも出血にも弱い。理論的には翌日から歩けるはず、
とは言うものの、肉を切り骨を繋ぎ縫い合わせて、
痛みも何もなく体重が掛けられるというものではあるまい。
とりあえず、「無事終わりました」と言われたら、
信じて頼って感謝して、それ以外に何が出来る？
手術当日は、面会時間を過ぎても病室にいられる。
19時を過ぎても6人部屋の中で、何となく心もとない。

朝から晩までの心臓手術などとは違うと言われればそれまでだが、
待つ身にとっては、短時間でも長く感じる。
土曜日曜月曜と、あっという間に過ぎていく。
とにかく無事に終わったことに感謝。
酸素も必要なく、このまま横になっていられるよう。
とにかくゆっくり休んでください。
リハビリが始まるこれからが大変なのだから。

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