骨震える退院日の夜
僅か2週間で退院で大丈夫かと危ぶんでいたが、
高齢者でも開放骨折や複雑骨折でもないのだから、
感染症の危機を脱した今、ベッドを塞ぐわけには行かない。
よくわかっているが、この状態で一般家屋で生活できるのか、
いささか不安だがどうしようもない。
とりあえず、昼食だけは済ませておいてくれると思っていたら、
オーダーから漏れていたという。
大学病院は退院日は昼食をオーダーしないのだろうか。
以前の退院の時もそうだったような。
退院はいつでも午前中に出来るとでも?
いやいや、苛立ってはいけない。
でも、自分が骨折の経験があるとしても、
踵や足首、大腿骨に金属を入れたことがある訳でもなし。
家人が退院するのは嬉しいが、
家では十分なケアが出来るわけではない。
家は病院ではない。私も娘も付き添っていられるはずもない。
私は仕事、娘は学校。
夜。ゆっくり食事が出来る? 入浴。それは叶わない。
抜糸は一昨日。水曜日まで入浴できない。
さて、家の中は寒い。病院内は28度。家の中は10度以下。
真夏の病室から真冬の家へ。
家人の退院はリスクだらけだ。
両松葉杖が使えるようになったけれど、
杖無しに歩けるわけではない。
全てはこれから次第。全ては、リハビリは、それから先は。
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着替えようとしただけで、ほんの少し耐性を崩しただけで、
ベッドではなく布団の上で姿勢を変えようとしただけで、
軽いショックを起こしたのか、衝撃が走ったのか、
震えが止まらない、痛みと痛みへの恐れと、寒さと、
一旦震えてしまうと止まらない動揺が、痛みを増幅させる。
どうすればいいものか、分からないまま、傍にいる。
傍にいる以外どうしたらいいのかわからないから、
痛みは、ショックは、恐怖感で増幅される。
どうしたらいいか分からないけれど、慌ててもどうにもならない。
それだけは分かる。
横になって時間が経って、痛みの中で、じっとしている。
暫くすると、痛みが薄れるよりも先に、疲れから眠りに落ちる。
それを見ていると、前途多難な一日の終わりを実感する。
全く短いようで長い一日。
ボルタレンもすぐには利かない。
心理的にも物理的にも痛みが増幅されたとしても、
私は傍で見ているだけ。
明日からは、出来るだけ動くようにね。
家にいて、何が出来るか。
考えて。
退院、おめでとうは言わない。
安全か、前進か、改善か。
晴れて退院なれど、全てが何もかも上手くいくとは。
安易に喜んで入られない、私。
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