Festina Lente2

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雪のバレンタイン

午後から降り出したボタン雪は、予想外の勢いで積もる積もる。
大阪の交通網をずたずたにして、帰宅は2時間掛かる有様・・・。
そう、本日は期せずして雪のバレンタイン。
まさか天気予報が当たるとは思わなかった。
雪ですと。午後からは雪ですとと笑っていたのだけれど。


雪、大阪で降る雪なんてたいしたことないと思いたかったけれど、
何故かそうは問屋が卸さない。この降りしきる勢いは何ぞ?
粉雪ならぬ湿気の多いボタン雪は、寒さに助けられてどんどん降り積もる。
帰宅時間、退所時間、夕暮れ時に合わせたようにひたすら降り積もる。
先日の大雪の時にあれこれ備えて用意した要領のいい人間は少ない。
滅多に降る雪のためにチェーンなどを常備するという出費を誰が?
こちらはバス停まで歩いていくまでに、何度か足をとられ転びそうになり、
どうにかこうにかバス停にまで辿り付けば、全くのノロノロ運転。
ただでさえ時間通りに来ないラッシュ時のバスが、
何時やって来るのか、全く持って予想がつかない。


気付けば同僚もロングコートを着たまま突っ立って30分余りだと言う。
やれやれ、今日は何時になったら家に帰れることやら。
反対車線から来るバスが、じゃりじゃりとチェーンの音を響かせて走っていく。
反対側からバスが来なければ折り返し駅からUターンして、
こちらに向かってくるバスが来るはずも無し。
何時来るのか待ちわびている間に、全くの暗闇、とっぷりと日が暮れた。
せっせとバス停まで歩いたせいか、体は余り寒くない。
むしろ、靴が濡れてきて足先・つま先から沁みるような気がするのがいけない。

雪の結晶―冬のエフェメラル

雪の結晶―冬のエフェメラル

雪の花 (新潮文庫)

雪の花 (新潮文庫)


シャリシャリとした雪は、カクテルを縁取るスノーを思い出させる。
ホワイトレディを、マルガリータを、なかなか溶けない氷と塩が、
自分の心に小さな火を灯すように、燃えながら滑り落ちていく。
そんな幻想に一時とらわれていると、足が滑りそうになる。
ただでさえ片道一時間余りかかる通勤が、今日は2時間。
雪で覆われた美しい世界というよりも、
雪で混乱させられただけの世界。


聞けば阪神高速も阪和道も止まっているという。
道理でみんな地道に溢れているわけだ。
車通勤でなくてよかったかもしれない。
自分でチェーンを巻いた経験もなければ、冬用のタイヤも履かせていない。
こんな道をおっかなびっくり運転するよりも、ひたすらバスを待っている、
公共交通機関だけが頼りの、この自分の状態。
これが自分の・・・。これが一番安全?


仕事で疲れている、
ただでさえ、色んなことが重なり疲れている月曜日のバレンタイン。
そういえば娘は友達と交換するんだと夜11時半まで悪戦苦闘、
たった一人でチョコレートと格闘していたが、どうなったか。
友チョコで賑わっている小学生、自分の子供時代とはずいぶん違う。
(私がバレンタインなんていう言葉を知ったのは中学3年の頃)


その甘い香りもどこへやら、職場はきな臭く殺伐としていて、
そして、物悲しくわびしい話題に満ちている。
相方にささやかに用意する、疲れ切った上司にも、
緑の小枝を子リスが渡るデザインのチョコを。
怪我人の家人には幸福の青い鳥がやって来るように、
そしてうさぎ年の娘には、かわいいうさぎ模様のチョコを。
たまにはダイエットのかーちゃんは、今日はチョコ抜き。


足の下で溶けていく雪のように、山積している難題が、
平らになって跡形もなく流れていくことを夢見つつ、
夜道を歩く、家路を辿る。
思いもよらぬ大雪に見舞われた大阪のバレンタイン。
如月半ばの夜。
若い恋人たちはあちらこちらで甘い夢を見ているだろうか。

バレンタインは雪あそび (創元推理文庫)

バレンタインは雪あそび (創元推理文庫)