Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

降り損なうバス

昨日の雪が残っているので、少々不安だったがさすがボタン雪。
粉雪と違って溶けるのも早い。
おまけにお天気の良さに助けられ道路も良好。
午後からは、昨日のあの天気はなんだったのかと思うくらい、
まったく雪の気配も無い。


しかし、昨日の雪道を歩き回った疲れは思いのほか深かったらしく、
帰りのバスの中、あろうことか、降り損なってしまった。
しっかりとワンマンバスの降車ボタンを押した所まで意識はあったのに、
気が付くと、降りなくてはならないバス停を通り過ぎて終着駅に向かっていた。


アチャー。どうしてくれよう。
駅までの定期券ではないし、帰りのバス代はいるし、というか、
帰りのバスの時間が無ければ、歩いて戻らなくてはならない。
タクシー代660円節約のため、再び駅から20分歩く。
大人の足の20分、上りの坂道、結構こたえる。
バス停からだと下りになるので、帰りはずんずん歩けるのだが。


この所、職場では気を張る出来事が続いているので、
倒れてはおられぬぞの気合で仕事。
綻びた部分はみんなで繕わねば、一斉に破れ去ってしまいかねない。
されど、このままでは・・・。不穏な噂が噂を呼ぶので、
そうならないように抑えなければならないのだが、
人の心や物事に、適材適所の風鎮を定めて居住まいを正すのは難しい。
自分自身も内外でばたばたしているだけに、
経験(単なる年の功ではあるが)だけが度胸になって支えてくれている部分で
どうにかこうにか持ちこたえている、といった方が正しい。


年を取るって偉大なことだなと、改めて思う。
こういうことはかつてあった、これに似たこともあった、
こういう事例もああいう物言いも、何もかも全く初めてとではなく、
あちらこちらから持ち寄られた情報や経験を元に、
ある程度の方向性が定まり、
見え隠れしている不安材料をどうにか洗い出し、
万全とは言えないまでもセーフティネットを張り巡らし、
そんな感覚で毎日が毎時間が過ぎていく。


何もかも100%完璧なんてあり得ない。
偶然が偶然を重ねて、絶妙のタイミングで生かされているのだと、
謙虚に構えた方がいいと思えることが山ほどある。
そういうことが短期間に余りにも重なると、
神経が持ちこたえられないというよりも、どこか麻痺したような、
安全弁が働いて何かを遮断してしまったような、
そんな感じにもなってしまうのだけれど。


あちらこちらに雪解けの水溜り、溶け残ったと言うべきか、
降り積もったと言うべきか、予想外の場所にも見られるまだら模様が、
日の当たる場所、当たらない場所、人生を暗示しているようで哀しい。
そんな中、今日も仕事で疲れ切ってとぼとぼ歩く夜の道。
一瞬のうちに寝てしまった私の定期券を見て、
バスの運転手さんは追加のお代(バス停一つ分)を取らなかった。
それだけが、ありがたく申し訳なく。


肩に重い荷物。駅まで来たついでの買い物。
どうにもこうにも、どこを削っていいのかわからない、ルーティンワーク。
増えるのは一瞬なのに、減らすことが出来ない。
どうしたものか、雪のように溶け去ってはくれない。
疲労だけは毎日毎日降り積もる。心にも体にも。
降り損なったバスのように、自分自身に抱え込む何がしか。
そんな如月半ばの夜。

七色の光

七色の光