Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

苺ケーキの君


今日はひな祭り。
昨年は頑張って私の七段飾りを家族3人で飾りつけたが、
今年はその余裕もあるはずのなく、仕事に追われ、
娘に雛人形のヒの字もない雛祭りになってしまった。
それどころか、雛あられも菱餅も買わず。
飾り物を出さないとなると、食べ物も、花も飾る気も失せ。


生活の節目節目に季節折々の装い気遣い、
それなりに受け継いで欲しい伝統を散りばめたいと、
娘が生まれた当初は、赤ん坊の横に桃の花菜の花を飾り、
雛の散らし寿司、鯛のお澄まし、イチゴミルク、
練乳を捜して掛けて、色合いも整えて・・・。
そうそう、ミスドで買った雛飾りの仕様のドーナツを
玄関に飾って記念写真を撮ったっけ。


当時徳島で子育てをしていた私。育休中の田舎暮らし、
造り酒屋を訪問する機会があった時、その店の奥に
人の頭よりも大きな雛飾りが飾ってあった。
どう見ても大名雛級。
ビッグ雛飾りでも見たことがあったけれど、
あるところにはあるものだ、さすが造り酒屋、
村の旧家、立派な雛飾りと感動した記憶が蘇る。


でも、目の前には何もない。家の中に弥生の気配がない。
職場では女性の集まりを催し、雛寿司を食べた。
娘の小学校の給食は、何か春めいたメニューだったろうか。
きちんと朝昼晩の用意もままならぬ食生活の毎日、
土日家人と一緒に過ごす週末もないと、なし崩し。
心の中では季節を追うものの、実生活には何もない。


取り残された毎日が日常になっている孫娘に、
老父が連れて行ってくれたケーキやで、
娘は苺ケーキばかりを買ってきた。
夜、仕事から戻り、娘が入れてくれた紅茶でケーキ。
親子の立場が逆じゃないか。
家人に笑われることが増えてきた日常。



娘よ、君は雛人形のように愛らしい。
娘よ、君は雛人形のように色が白い。
娘よ、君は家の中に仕舞って置きたい時がある。
娘よ、君は生きている雛人形のよう。
娘よ、苺ケーキの赤と白。


雛人形を飾れなくても、君は私の傍にいる。
年女の君は、まるで今を盛りの雛人形の愛らしさ。
弥生三日の苺ケーキの君よ、娘よ。

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