Festina Lente2

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マスクを付ける少女たち

同僚が「学級閉鎖なの」とぼやいている。
娘さんの小学校が今頃学級閉鎖? この4月に?
インフルエンザではないらしいが、風邪でクラスに7人欠席。
1学年1クラスしかない27人学級での7人は大きい。
お腹を壊す風邪が流行っているとは聞いていたが・・・。
それでお客さんにもマスクをしている人が増えているのか。
電車やバスの中でマスク姿が多いのは、インフルエンザではなく、
この時期飛散する花粉のせいだとばかり思っていたが、
それほどまでにたちの悪い風邪が?


いや、念のために声を掛けてみると風邪ではない。
花粉症でもない、病気ではないけれど、マスクを付けている。
咳から飛沫が飛ばないようにという心遣い、エチケットではない。
マスクを付けることにより、自分を差別化しているのだった。
「話したくない」「気分が乗らない」「何となくだるい」
「面倒くさい」「面白くない」「今日はちょっと後ろ向き」
「できれば話しかけられたくない」ので、しんどいとアピール。
訊いた人の数だけ色んな答えが返ってくるのかもしれない。
でも、病気ではなくて気分の問題だとは思わなかった。


昔、マスクをかけている少女は「少女」という生易しいものではなく、
顔を見られてはまずい事情持ち。スケバン等という言葉の流行の影に、
荒んだ不良のイメージが見え隠れ。
そんな印象をいまだに引きずっている私は、一昔も二昔も前の人間?
いずれにせよ、本当に病気で咳や鼻水、インフルエンザ、
花粉症でお化粧も出来ないと悩む、花も恥じらう乙女ではなかった。
お洒落に縁遠いマスクで顔を隠している理由は、
一癖も二癖もある不良のカッコつけでも病気でもなく、
コミュニケーション拒否のためだったとは。

自分の小さな「箱」から脱出する方法

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顔、表情、にきびを隠しているのでもなく、
ヘルペスが気になるわけでもない。
「自分が浮いている」「居場所が無い」そんな気持ちを代弁させる、
「この場にいたいわけじゃない」「とりあえず来ている」
そんな気持ちをアピールするためにマスクを掛けていたとは。
しんどいのでも疲れているのでもなく、人から心配されたいという、
そんな甘えた気持ちからでもない。(いや、少しは入っているのか)


白いマスク、時には年齢に不相応なかわいい柄のマスク、
そんなマスクは思いのほか強固な壁の役割を担っていたのか。
新年度新学期、四月から何もかも一新、人事異動の春、
それは大人でさえもなかなか受け入れがたい日々、季節、毎日。
子供でも青少年でもその波にもまれて自分自身の地盤が揺らぐ、
その感覚に疲れていると正直に言えずに、素顔で頑張るよりも、
最初からleave me aloneなのか?
本当は気に掛けてもらいたい訳ではなく?


体調が悪い人が増える木の芽時、春先、自分とて例外ではない。
空咳が気になることもあるが、マスクをするほどの酷さでもない。
昔は話題にならなかったのに今は大騒ぎの花粉の季節、
幸い服薬、目薬のお陰か乗り切れている。
若者とて変わりは無いはず。同じように予防・治療すれば。
しかし、マスクを付けないと出かけ辛いのは、自然のせいでもなく、
健康管理のせいでもないとすれば、心の風邪をひいた?


自分の居場所を見つけきれずにマスクで遮蔽した世界に、
象徴的に引きこもる彼女、時には彼らをどうすればいいのか。
何が出来るのか。
それとも、マスク1枚で外に出られるのだから偉いと思うべきなのか。
今頃になってマスクをただの病気のためのマスクだと
ずっと思っていた自分にも唖然。


そんな使い捨てのマスクに象徴されるように、あなた達、
君達の心を守るはずの日々の遮蔽は、脆く儚くあっさりと、
とっかえひっかえせずにはいられないものなのか。
防護壁が津波に乗り越えられたように、
マスクを乗り越えてやって来るものに対して、
自分からは関わらない、戦いを挑まない、初手から降参の
白旗を掲げての装いなのか。


私の知るマスク姿は、病や病を媒介する経路を断つために、
清潔・安全を守るための側面を強調しているはずだったのに、
あからさまに口を覆い顔を半面隠しているのは、
コミュニケーション拒否もしくは不全の表れだったとは。
インフルエンザも流行らなくなってきた春の卯月も末になり、
マスク姿で行き来するその姿に、考えさせられる今日。

見える化コミュニケーション

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