娘は修学旅行へ

最近の小学校の修学旅行はどこへ行くのだろう。
住んでいる場所で異なるとはいえ、何が目的なのだろう。
京都や奈良が観光地だというが、関西では修学旅行の目的地ではない。
昔のように旅行そのものが贅沢であったり、珍しくない昨今、
宿泊訓練の域を出て集団で観光することに、何の意味を見出すのか。
小学校は男女取り混ぜた班行動らしいが、それはそれで大変かも。
いや、同性だけの班にするよりも、却って規制しやすいのか。

とにもかくにも最近の小学校は宿泊訓練も修学旅行も、
リュックサックを貸してくれるので有り難い。
持ち物にあれこれ凝りすぎて、誰とお揃いにするだの、
競うように買い物に血道を上げられてはたまらない。
幸い、そういうことには余り執着しない娘。
はて、レンタルは無料だったのかどうか、記憶に定かではない。
昨年の宿泊訓練の時も借りたはずなのに。

修学旅行の保護者向け説明会とやらも仕事で行けなかったし、
今まで長期休暇中、低学年の頃から民間のキャンプで
三泊四日程度の野外活動に出かけるように仕向けてきた。
一泊二日ぐらいでどうこうと騒がないせいか、
今一つ緊張感のない我が家。
本当にこれでいいのか、これで送り出してしまっても。

修学旅行。どこかに出かける楽しさよりも、
芸能界だの流行歌だのについていけなかった昔。
人と一緒に過ごすことの方がストレスだった私にとって、
余り人気のない伊勢志摩の美しい景色は楽しいものだったし、
両親と３人で旅行した思い出が微かに残っている幼少時をなぞる、
おぼろげで曖昧な記憶に上書き保存をするような、
そんな体験だったのだけれど、娘の場合どうなのか。

確かに伊勢志摩方面とはいえ、昔のようにお伊勢参りなどしない。
宗教の関係だろうか、今時クレームが来るのか、何なのだろうか。
別に神社仏閣にお参りしたとて、問題はないと思うが・・・。
宗教の自由や倫理だのに引っかかるはずもないが、
靖国神社や護国神社に参るのは単純に右翼だと噂されかねない昨今、
桜見物にも行けやしない。伝統建築も日本の文化も学べない。
散る桜も受験の合否イメージではなく、玉砕や戦死に繋がると、
どんなものでもこじつけてしまっては、歴史を学ぶことさえも出来ないのだが、
お伊勢さんは「神道」絡みで外されてしまったのだろうか。

普段、自分たちでは決して行かない所に行けばいいと思うのだが。
家族旅行でも余り経験しないようなことや見学を優先させて。
信楽焼でろくろを使って湯飲み作り体験。
鳥羽水族園。ホテルに一泊。日本旅館に泊まらないのは
純粋に予算の関係だろうが、和室で６人で寝るそうな。
明日、鈴鹿サーキットの遊園地で遊んで帰宅予定。
何だか遊ぶ予定ばかりなのが最近の修学旅行なのか。
無駄に明るい知識を植え付けられているゆとり世代、
広島にでも行って原爆ドームを見て、という修学旅行はないのか。

え？　私の時代？　それは伊勢志摩観光以外に選択肢があったか？
小学校時代の修学旅行、１日目は伊勢神宮に参拝。
夫婦岩を見て和風旅館に一泊。子供心にも綺麗な場所とは思わなかった。
何だか増築改築のせいか、やたらと迷路のような感じがする旅館。
確か、真珠島に渡って、御木本幸吉と真珠の養殖について学ぶ社会見学。
何故か全員赤福餅を買って帰るというのが定番だったような。

遊ぶというよりは社会見学。それが学校から行く旅行というものだと思っていた。
中学時代も、鬼押し出しに浅間山、日光東照宮という見学コース。
何だか６月だというのにひたすら寒かった記憶が。
高校時代は九州に行きたかったのに多数決で負けて東北。
今更ルーツの地に行ってもなあというのが自分の心境。
蔵王のお釜見学、硫黄の温泉に宿泊。松島を見学して仙台、秋保温泉。
考えると温泉地にばかりに泊まっている。

たった一泊でも、宿泊ともなると大騒ぎした昔のことを思うと、
我が家のように別居結婚で週末になると、徳島や埼玉に移動していた、
こんな育ち方をしていては、醒めて旅行に行くのも仕方はないか。
修学旅行前の興奮も盛り上がりもなく出かけて行ってしまった。
これでいいのか、とにもかくにも、観光というよりは団体で行く大掛かりな遠足。
遊び中心で、何かを見て学ぶわけでもない、先生は楽な放し飼い。
ガイドも付かないので何の説明も聞かない。
学習の一環とは思えない、団体行動の場。
手抜きの指導？　そんな気がして仕方ない小学校の修学旅行。

とにもかくにも娘は出発していった。行ってらっしゃい。
元気に帰っておいでね。楽しんでおいでね。

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