Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

暗闇の住宅街に

あちらこちらのブログにはクリスマス風景、年末風景がてんこ盛り。
暖かなクリスマスカラーのきらびやかさに程遠い職場では、
季節感を表すものが何も無く、もう少しどうにからならないものかと思えど、
個人的に費用を出して飾り付けするわけにも行かず。
成句を散りばめた写真の美しい仕事がらみの関係からのクリスマスカードも、
飾られるどころか惜しげもなく捨てられて紙ゴミとなる哀しさ。
今の季節しばし、本棚にでも置けばと思う自分は、某同僚から
「断捨離の敵」と思われているに違いないので、
こっそりゴミ箱からカードを拾い読みなんぞしている始末。


そう、書類・郵便物・ダイレクトメールの山、パソコンから印刷した書類、
印刷物のてんこ盛りが後から後から次から次へと溢れ出て、
一体どこにどれだけのものが仕舞われ、回され、寄越されるのか、
皆目見当が付かない。最終版・訂正版・その他様々なものが渡され、
送られ、回覧で周り、提出を迫られ、年々事務能力が落ちてきた人間は、
うんざりしながら、ルーティンワークをこなしているうちに、
処理速度が落ちている分、溜まりに溜まって、「わけわかめ状態」に陥る。


降誕祭は近づけど、訪問するあちらこちらのブログ、HPを眺めるだけが、
休憩時、夜のひととき、早朝覚醒時、心の慰めのように別世界。
美味しいお菓子、美しい自然の景色、家で作った心づくしの品々、
プレゼントの山、新年を迎える準備、手作りのリース、
そういう品物一つもなく、クリスマスツリーすらここ数年仕舞いこんで飾らず、
眺めに行くもの、通りすがりで見物するものになっている我が家。


ふと気付けば、近隣の競い合うように飾り付けをしていた電飾屋敷群が、
ひっそりと静まり返っている、夕闇の帰宅時。
もしかするとこれは節電の為? 単なる不況の為?
町工場として賑わっていた、近所づきあいも良かった広い敷地だったその場所、
社員全員にボーナスを払って、あっという間に工場をたたんで次の春から、
建売住宅地に様変わりして、引越し・転入・家移り、いずれにせよ、
よそ者が一挙に溢れかえった春から夏、秋を過ぎて冬を迎える頃、
驚くほどのイルミネーション街と化した、その場所が静まり返っている。

暗闇の声 (ふしぎ文学館)

暗闇の声 (ふしぎ文学館)

輝ける闇 (新潮文庫)

輝ける闇 (新潮文庫)


子供たちが沢山すんでいる場所だ。新しい建売住宅地。
年配の人々は、もっと交通の便のいい、都会のマンションを好む。
こんな交通の不便な土地で、近隣に公共施設もなく、道も狭く、
買い物にも不便な場所だからこそ、割安の新興住宅地に引っ越す人は、
若い人、幼い子供を抱えた家族が多い。
だから、家族で楽しめるような電飾、イルミネーションが楽しめるのか、
若い世代が多い住宅地は違うなあと思っていたのだが、
やはりこの景気の悪さが反映しているのか。
電力会社からの要請が、町内会を制したのか。


隣組である我々のところに、電飾自粛、節電、震災に対する寄付に代えて、
華やかなことは慎もうの御達しでも出たのかと思うくらい、街が暗い。
道路わきの御地蔵さまにたまに灯されている蝋燭の明かりが嬉しい。
それほどに、この数年頭の中に焼きついた帰宅風景とは異なる、
この季節にしては余りにも真っ暗な住宅街の様子に、さすがにドッキリ。


自分の家が殺風景なのはともかく、世間はそれなりに華やぎ、飾り、
心温まる風情を演出し、より家族の絆を深めたり、
職場での親交を深めたりしているものだと言うのに、
この景色は何ぞ? 何時の間にこういう事になっていたのか。
思えば11月からこちら、淡々と仕事をこなして、週末は出かけ、
近隣に気を掛けたことなぞなかったが、こうなっていたとは。


明日に冬至を控え、灯りを出し惜しみしているわけではなかろうに、
世の中は大事件や自然災害のせいで暗くなっているのか、
私の記憶の中ではオイルショック以来の近隣の暗さ。
というか、田舎の都会、都会の田舎。
これが本来の住宅地の明るさだったのに、今までが明る過ぎただけ。
何かしら気分転換以上の浮かれ騒ぎだったのでは?
それを当たり前の日常と取り違えていただけでは?


更年期の心の浮き沈みが、いや、これがいつもの心の調子、波風を立てず、
当たり前に、もう少し穏やかに、もう少し元気よく晴れやかに、
いや、いつもの自分とはこうだったか、マイナーチェンジの連続のような、
これが自分のいつもの状態だったかと、もう一人の自分に観察させて、
それとなく亡羊と日々を過ごしているうちに、回りの暗さにも気付かず年末、
降誕祭、元々は冬至を聖なる日と崇めた、
もしくは冬至の翌日太陽が復活するのを崇めたこの時期、この季節、
暗くて当たり前の毎日を余りにも明るさにこだわって来た人間社会に毒され、
自分が元々マイナーな、短調が基本の人間だった事を忘れ、
齷齪としていたのかと思ったくらい、周囲は暗さに満ちている。


本来人間が帰るべき、人間としてもっと暗く静かに落ち着くべき、
クリスマスにふさわしい静けさに相応した闇、
そういうものを改めて感じる今日。
片付け模様の日々の暮らしの向こうに、片付けられないもの、
片付けベタの私が整理仕切れないものを山積みにして、
後10日ほどで、けじめなり節目とされる日が近付いている。
降誕祭を目の前にして、暗闇の住宅街にほっとしている自分を見出す。

冬至祭

冬至祭

心友のアンカー―夢と希望に燃える技術集団

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