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林光の思い出

職場で普段読まないA新聞を読み、びっくり。
そうだったのか、林光、亡くなっていたのかとショック。
音楽の世界にはそれほど詳しくないが、印象に残っているのは、
ドラマの時の音楽だろうか。大河物語『国盗り物語』の音楽の颯爽と、
下克上の雰囲気が躍動感あるメロディーで伝わってきたのと対照的に、
NHKドラマ大河ドラマ花神』のテーマ音楽はのんびりしていた。


http://youtu.be/CgbVhpXdIAM


ああ、そういえばこのドラマも司馬遼太郎原作だった、『国盗り物語』同様。
子供心にも、ドラマの冒頭のナレーションとゆったりした音楽が、
話の内容がわかるにつれ何だか釣り合っているのかいないのか、
キナ臭い時代を生きた人の音楽にしては、明るくてのほほんとしていたのが
今でも印象に残っている。まあ、主役の大村益次郎役の中村梅之助
豆腐ばっかり食べているほわほわした雰囲気を前面に出していたせいだが。


http://youtu.be/y0LuczMCHRU


それはともかく、私の頭の中ではどういう訳か、多くの日本の作曲家は、
大河ドラマのテーマ曲から連想が始まる。
思春期、歴史というものが少しずつわかり始めてきた頃、
家族で見たドラマの印象が余程強かったのだろうか。
父が若かりし頃、毎週買っていた『週刊新潮』に連載されていた
『二つの祖国』のドラマ化『山河燃ゆ』のテーマ曲も林光だったが、
今聞き直しても、一番最初に聞き覚えた『国盗り物語』の方が印象深い。


http://youtu.be/zyxvlyooemI


そうそう、『真田太平記』のテーマ曲はクラシックの演奏会、
格調高いオープニングだった。ひずめの音の効果音の後は
ひたすら弦楽器出ずっぱり、独演会の風情。
歴女なるものが流行している昨今、
六文銭で名高い勇者真田の物語、見たくなるのではなかろうか。
この当時、だんだん大河ドラマを見なくなっていった頃。
一番見ていたのは中高生の頃かな。
今思えば、それは家族の団らんの時間だった。
数少ない家族が夕食後のんびりテレビの前に集う時間。


http://youtu.be/TfuHA6em9ec


普段外国のオペラを聞きかじることがあっても、
日本のオペラを聴くことは余り無い。だから、林光氏の作品、
殆ど字面でしか知らず、じっくり面と向かって聞き込んだことがない。
けれど、名前を聞くと彼が活躍した時代は私の思春期。
それもそのはず、老父と同い年。自分の両親の世代。
だから、精力的に活躍して本職のオペラ以外にも、ドラマのテーマ曲、
映画の音楽担当、(『北斎漫画』『墨東奇譚』『午後の遺言状』など)
そう、私が中学高校大学の頃と重なる。


日本のオペラは仕事上ちらりと見たことはあっても、特に食指も動かず、
30代に入ってからほんの少し合唱曲に興味を持ったこともあったが、
最近は余り名前を聞かないよね、そんな感じでいたのも当たり前。
お年もお年、それに転倒してずっと入院中だったということだから、
熱烈なファンの人は、新聞の訃報欄を見てがっくり肩を落としたに違いない。


老母の記憶力がしっかりしていれば、紙面を見てショックを受けただろうが、
今やそのようなことに、どこまで心を動かされるのだろうか。
私似音楽の手ほどきをしてくれて、ピアノを用意してくれたのは、
母の努力、尽力、音楽への憧れであったはずなのに。


紙面を見て、ちらりと閃光が走ったのは、彼の名前のせい。
「林光」忘れていた家族団らんの子ども時代。ドラマの時間。
オープニングの音楽、今はいない日本音楽界の巨匠達。
彼らの作品もちらりと思い起こして、懐かしくなった今日。
山本直純冨田勲芥川也寸志武満徹間宮芳生三善晃池辺晋一郎、坂田 晃一、
そういう名前は教科書で覚えたのではなくて、ドラマから覚えたのだった。
一昨日から新しく『平清盛』も始まったばかり。
少しく大河ドラマのテーマ曲担当者を思い返して、センチメンタルな火曜日。

私の戦後音楽史―楽士の席から (平凡社ライブラリー)

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CDブック 林光の音楽

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