Festina Lente2

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彼岸花

お彼岸、暑さ寒さも彼岸までというけれど今年はどうだか。
一向に暑さが引かない、そう思っていると、
思い込みのせいなのか、近所がどんどん宅地開発されて
田んぼが減ってしまったせいか、彼岸花を見ない。
あれは旧暦のものだったか? 今頃じゃなく、もっと後?
あぜ道沿いに、救荒作物として植えられたという割に、
毒があるから注意と矛盾した解説を聞いたことがあった、
あの赤い彼岸花、今年は姿を見ないまま9月も末。


日本中の彼岸花は同じ種類。種子で増えることのない、
球根というか、鱗茎で増える。
遺伝的にはみんな同じ彼岸花
山のようなクローンが、日本中のあぜ道を埋め尽くし、
野辺送りの行列のように、禍々しいものの送り火のように、
赤く赤くそびえたつような花をつける。
葉っぱは見当たらない。
にょきにょきといきなり花が咲いて、初めて彼岸花に気づく。


曼珠沙華などという、由緒ありげな名前よりも、
彼岸のころに咲く花、彼岸花
時には黄色や白も見るけれど、赤がメジャーな彼岸花
余りに多くの呼び名を持つものの、縁起がいいとは到底思えない名ばかり。
「葉見ず花見ず」の花が、実家の花壇や裏庭に、にょっきりと。
いつの間に、いったいどこから?


こういう風に咲かれると、漫画の『黒百合の系図』ではないけれど、
不吉で縁起の悪いもののように感じてしまうのは、何故?
きれいだなと思う前に、咲くべき場所で咲いてほしい。
一般家庭の庭の中でなどとんでもない、と思ってしまう。


彼岸花は境界線。
内側に入ってこないように。
何が?
だから、内側に咲かれては困る。
秋の景色らしいといっても、境界線の中で、
その赤い色を誇示してもらっては困る。
そんな思いでいっぱいの9月の終わり。

彼岸花

彼岸花

彼岸花 (角川ホラー文庫)

彼岸花 (角川ホラー文庫)