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スター・トレック イントゥ・ダークネス

レイトショー。
スタートレック、into darkness。
題名からどんだけくらい映画なんだと思っていたら、
それほどでもなくてほっとした。
相変わらずのスポックだったが、かつてよりも人間味が増しているというか
何というか、感情がありありで面白かった。
走り出したらとまらない艦長とアンカーマン、常に冷静さを失わない副官。
いいコンビ。こういう映画は見た後スカッとする。(2013 8/31)


今から思えば、スタートレックのシリーズを全て観たことがない。
有名な作品だし、TVでしょっちゅう再放送していたし、
映画化されているからよく知っているような気持ちになっているだけで、
実はよく知らない名作シリーズ。
色んな宇宙人が入り乱れて参加、それぞれのアイデンティティ
個性を出しているけれど、それさえも振り返ってみれば、
人種差別的な偏見をちらつかせて、複雑なメタファー。
宇宙だ何だと言っても、結局は世界の縮図、勢力争い。
とどのつまりは異文化を受け容れられない、
最も身近な存在、隣人を、肉親でさえも自分と異なる個体を
上手く受け容れられないことの、メタファー。


館長という責任ある立場、地位、名誉、周囲からの期待、
規律違反、降格処分、しかしそれさえも温情溢れた措置だという、
恵まれた環境の中でテロに巻き込まれ、様々なものが失われていく現実に直面。
ナルホド、こういう形で、状況・環境から設定されるinto darknessというわけ?
転勤後、なかなか立ち位置が掴めない憂鬱を忘れさせてくれた夏休み休暇も終わり、
鼻白む思いで仕事に出かける私には、小市民的な妬みや嫉みが染みついているらしい。
映画の主人公を冷たくあしらってどうするよ?


優生人種で全てを見下し、冷酷な判断と行動で周囲を圧倒するカーン。
そんな「にべもない」強さを発揮する敵に、少々の憧れを感じて仕舞う。
自分にこんな強さがあれば、どの職場でも仕事でも請け負って片付ける、
そんな強さがあるのではないか、強靱さ、タフさがあるのでは。
時には心が無いのではないかと思えるほどの正確無比な損得勘定で、
動いていいのではないかと、相手の一挙手一投足に、
自分が今まで受けたことのない言動や反応にオロオロしながらも、
オタついてはいかんと言い聞かせて、あれこれ試行錯誤を繰り返す、
転勤後半年に及ぶ今を、一刀両断のもと吹き飛ばしたい衝動、
それを、この映画の敵役の小気味よさに見出す。


もっとも、私はミスター・スポックのファンだから、
友であり上司の窮地を助けるべく獅子奮迅の活躍をし、
最終的にや黄泉路に下った人間を甦らせるという、
大団円的な結末にとても共感できるのではあるけれど…。
それでも、カーンの魅力に、悪の魅力と言うよりも、
自分の論理、自分の生きる道を、ひたすら守ろうとする
余りにも自分勝手な強さに憧れる。
この猪突猛進差があれば、胃が痛む思いも神が白くなる苦労も、
半減するだろうにと、馬鹿げたことを考えてしまうのだ。


結局、父代わりの存在を失い、多くの難儀を経て、初志貫徹、
仲間と共にエンタープライズを率いて若きカークは宇宙探査の旅に出る。
その先を、私達はTVドラマで見て育ったわけだけれど…。
今やオリジナルの面々は皆年を取り、鬼籍に入り、過去の人となった。
同じように、私もその頃と同じような気持ちでSFを純粋に楽しむことはできない。


子どもの頃、仕事の苦労等、思いもしなかった頃の無邪気な思いで
SFや宇宙、物語の名の人間関係を見ることなど出来なくなってしまった自分に、
カーンの持つ強さと憎々しさは、今の自分に合って欲しいタフネスさだと
そう切実に思ってしまうくらい辛い今なのだ。2016.1.28

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