Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

サイドエフェクト

どうやら明日前での上映らしいので、思い立って近所のシネコンへ。
折しもレディスデー。話題の他の映画は、まだ来週以降でも間に合う。
題名から受ける印象の予想に反して、面白かった。
最初はジュード・ロウの名前だけ見て、まあ、それならばと思った。
彼はつまらない役を引き受けたりはしないだろうと。
なるほど、共演者がいい。
今旬で、『ドラゴンタトゥーの女』で強烈な印象を与えた、彼女。
えーと、ルーニー・マーラ
着々とキャリアを積み上げているキャサリン・ゼタ・ジョーンズ


副作用。なるほど、色んな物事は、原因と結果の連続だが、
一つの原因、一つの物事があらゆる副作用を伴っている、
その余波を受けて揺れ続けていると考えるのは妥当かもしれない。


それにしても、ただの副作用ではなかった。
有り体に言えば、詐病。つまりは詐欺。結局は嘘。
何のために病を装い、誰を詐欺に掛け、どんな嘘をついているのか。
その種明かしに奔走する、孤軍奮闘する主人公。
罠に掛ける側が、楚々としてかそけき患う人、被害者、
周囲を惑わせるはかなげな美女。


結婚していた人間が、相手を愛していない。
実は別の相手が居たという設定は、どんでん返しの一つ。
しかし、それが何を意味しているのか。
過去の行動が現在、未来を作る。
なるほど。
実績。
それはそれで、ある意味負の暗示、なのかもしれない。


裏切ったことのある人間は裏切る。
それを毎日確認していたら、日々の生活は成り立たないなあと、
少しやるせない思いをしながら、映画館を後にする。
もっとも、主人公が危機的な状況から脱し、
家庭を取り戻した、(再婚家庭を再構築できた)部分は、
ほっとさせられるが。


医者の持つ権限、一枚の書類のサイン、症状の診断、裁判所の決定、
あらゆるものが、ヒロインを裁き、拘束するラストは見物。
夫を裏切り、恋人を裏切り、自分自身を偽り、主治医をだまし、
自分の求めているものが得られないことを、全て周囲のせいにして、
現実を受け止められず、非合法な手段を講じて抜け出そうとした、
その悪魔の棘のごとき存在。


日本にはない病院の存在、裁かれ方に感心しながらも、
こんな薬が出回らないことを祈るばかり。
というか、普通、離脱することが難しい薬に頼らざるを得ない、
そこまで耐えられないものに神経をすり減らさざるを得ない、
そういう不幸が当たり前にあるのが現実だと思い知って、
生きていかなければならないのが人生なのだけれど。


何かが急に奪われたり、失われたりするものなのだと。
自分の望んでいたものが、もう少しで手に入りそうだ、
もしくは手に入った瞬間に、失われていく、
そんなことは潮の満ち引きのように当たり前のことなのだと、
いつから私も思うようになったのか。
これが年をとったと言うことなのだろうか。


副作用。蝶の羽ばたきが、何か得体の知れないものを呼び覚ます、
引きつける、呼び寄せる、波紋が波紋を呼んで重複する。
そんな幸と不幸の綯い交ぜになった世界が、当たり前の状態、
神様の編む模様なのだと、理不尽ながらも思えるようになったのは、
いつからのことだろう。
サイドエフェクト。
そんなことを考えながら、映画館を後にする真夜中。(2013 9/9)