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アップサイドダウン 重力の恋人

昨日、せっかく都会まで出たので近隣のシネコンで上映していない作品を鑑賞。
面白い題名、『アップサイドダウン 重力の恋人』あり得ない世界のSFラブコメ
かつては『スパイダーマン』のヒロインとして活躍したキルティング・ダンストが出ている。
相変わらずヒロインだけれど、この人、何だかスパイダーマン以降は作品に恵まれない。
この映画だって、面白いないようだとは思うけれどメジャー作品のイメージじゃない。
本当に趣味で創られた、ソフトなSFラブコメだ。
少し意地悪な言い方をすれば、かつてのディズニーが作った『フラバー』みたいな感じ。



下層である貧民層から上層の富裕層の所へ飛んでいける秘密、それは…。
何だか失われた自然を求めて、科学の力で再生を果たす、
そんな構図が見え隠れするけれど、上層と下層の接点の山頂でデートするシーンは、
それはそれで矛盾を抱えながらも切ないラブシーンだ。
そして、落っこちたヒロインは記憶喪失に。


彼女を取り戻すため悪戦苦闘する主人公が、上層に行くための努力が涙ぐましい。
これって、現実生活をよりよくするためにもがく一般市民のささやかな生活が
比喩として織り込まれているかと思うと、なかなかに笑えない。
本来上と下に別れて住むべきではない人間。
差別格別化されて生きることを何とも思わずに生きていく、そんなことがあってはならない。
子供じみたSFラブコメの向こうに透けて見えるのは、人種差別や貧富の差、
武力弾圧や不当な扱い、言論の自由を奪われ、一部の人間の都合で人生を台無しにされる、
庶民の生活の哀しい現実がそこかしこに散りばめられている。
深読みしすぎたら、映画を楽しめないのはわかっているけれど。


キルティングダンストの出演作品は、いつもこういう背景を背負っているのかも知れない。
本人が出演作品をどれくらい選んでいるのかわからないけれど。
やはりこの作品に出て、何が言いたいんだろうと考えされられた
エリザベスタウン』・『マリー・アントワネット』などなど。
ここで彼女の役はどんな働きを? と考えてしまうような、立ち位置、演出。

残念ながら相手役のことは余り気にはならなかったのが申し訳ないが、
それはそれで、思いっきり美人というわけではない彼女の不思議な魅力が、
相手役を喰ってしまうからかも知れない。
とにかく、佳作の妙とでも言おうか。


二つの世界を繋ぐ唯一の巨大企業「トランスワールド社」、
ヒロインの名前はエデン、主人公の名前はアダム、というのが
否が応でも聖書をイメージさせる。
2人が最終的に結婚し、上世界した世界の重力に囚われない赤ん坊を
授かるという未来が、新しい世界を作る比喩かな、これも。
現状を打破し、世の中をひっくり返して新しい未来を創るという意味の、
Upside Downなのかな。(2016 2/11)

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